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台北観光サイト

TAIPEI 2016夏季号 Vol.04—パンの新時代がやってきた

アンカーポイント

発表日:2016-07-12

更新日:2016-09-23

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文 _ 劉克襄
写真 _ 火頭工

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1. ふんだんにチーズを使った濃厚なチーズケーキ。

10 年以上前、百年を超える長い歴史を持つ木柵市場の入り口に欧風のパン屋さんが現れてみなを驚かせました。それまでも昔ながらの市場を歩けばパンを売る店はしばしば見かけられ、木の棚にねぎパン、あんパン、メロンパンなどよく見る台湾風パンが並べられていたものです。しかし手作りと長時間発酵という初志を掲げて、ヘルシーな材料を使っていることをアピールする店は、これまで見たことがありませんでした。
一度食べると、私たち一家はすっかり「阿段烘焙」の常連客となりました。家から木柵市場までは少し遠かったのですが、このパン屋さんがあったのでわざわざせっせと市場へ足を運びました。猫空へハイキングに行く時には、ここでお昼ご飯を買ってからバスに乗ったものです。その後、台北の伝統的な市場を案内することが何度かありましたが、私はとりわけここを選びました。この市場が自分で野菜や果物を育てている小規模農家が特別多いからというだけでなく、このパン屋さんがパンの新時代の到来を教えてくれるからです。

人生でパンの哲学を
こね上げる「火頭工」
「阿段烘焙」は5、6 年ほど前に移転しましたが、今でも市場からほど近いところにあります。この町では、パン屋さんの意義がより豊かになりつつあります。このお店が研究開発を続けるのに伴い、お客さんも増えており、欧風雑穀パンの素朴な味がだんだんと受け入れられるようになってています。「阿段烘焙」はいつの間にかこの町になくてはならない存在となりました。食の安全に関する知識を交換する場でもあり、多くの人々が長期にわたって応援してつつ、お店のこだわりの理念に賛同しています。
「火頭工」というあだ名のパン職人さんは、間違いなくこの店のリーダーです。50 歳を過ぎてからパン作りの道へ進んだ彼は、社会のさまざまな困難を経験してきました。だからこそパンをめぐるくらしの哲学をよりたくさんこね上げることができるのです。彼のように理系の高学歴というバックグラウンドを持ち、詩と芸術を愛し、さらにはさまざまな楽器を奏でて心の糧としているパン職人は少ないでしょう。彼がパンの陳列棚の前に立ち、雲南の楽器であるひょうたん笛(フルス)で厳かに奏でる音楽は聴く人を感動させます。これはパンに対する敬意を表すもうひとつの形なのです。焼きあがったパンはまるでこの音楽を聞いているから完璧な仕上がりになっているかのようです。

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2. 「 火頭工」さんは町のパン屋さんのあるべき姿を体現しています。

小さなパン屋から
農業に革命を
近年、台湾のパン職人が世界的なコンテストで賞を獲得し続けています。台北はパン屋さんが次々とできて「パンの街」となりました。私たちの技術が一流の水準に達した今、次の課題はさらに高い次元で文化としてのパンを論じ、台湾のパンが内に秘める価値を高めることでしょう。
「火頭工」さんは台湾の食材を使った製造方法を試し、長年の模索を経て一筋の道を見い出しました。現在、店内のパンは新鮮な台湾産の小麦粉を大量に使用し好評を博しています。もしより多くのパン屋さんがこれにならって努力をすれば農家が雑穀の栽培面積を広げるのを後押しし、台湾の農業に新たな革命を起こすことになります。彼はこの夢の青写真だけではなく、店内にワークスペースを設けてパン作りに興味のある若者を招き、技術を磨く場として提供しています。将来、彼らは各地で開業して共に理念をアピールしていくことでしょう。
一軒の小さなパン屋さんが、新鮮なパンを提供するだけでなく将来を見すえた食材に関する信念も持っていることを本当にうれしく思います。将来、どの町にもこのようなパン屋さんができて、自分のスタイルを創造し、パン作りの美学と信念が花開くことを期待しています。
 

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