発表日:2017-12-18
1929
ムスリムの画家
張曼麗さんの芸術と人生観
文 _ 高穂坪 写真 _ 黄建彬
近くから見ると色彩豊かで変化に富み、遠くから見るとまるで循環と往復が繰り返され、絶え間なく生まれては消える円のよう—米国から戻った芸術家‧張曼麗さんの作品は、熟練した技法と独特の美学で宇宙空間にそれぞれ独立し、また時間の流れに伴って共に入れ替わる森羅万象を表現しています。そこから輪廻の秩序という生命の体験、そして調和と受容の人生観を形作っています。天地の法則によって、世界の秩序は定められいますが、張曼麗さんの筆は天と人は一体であり、「道」は自然にのっとるという東洋の哲学思想を体現しています。
▲張曼麗さんは円によって、輪廻の秩序という生命の悟りを表現します。
東洋哲学×西洋技法静かで洗練された作品に
張さんは幼い頃から書や絵が好きでしたが、台湾で正式な美術教育を受けたことはありませんでした。27歳でニューヨークに渡り、ニューヨーク市立大学クィーンズ校で初めて芸術を学びます。その期間、教授の「目で観えたままに描く」という美学思想に影響されて潜在意識のまま自由に表現し、同時に絵画技法の習得にたゆまぬ努力を続け、徐々に自分のスタイルを確立しました。
眷村(戦後中国から渡ってきた外省人の集住地域)で育ち、米国の東西海岸で30年近く暮らしてきた張さん。長い間さまざまなエスニック‧グループの文化に身を置いてきた中で、寛容でオープンな精神が養われました。結婚後は夫に従いイスラム教徒となりましたが、「真の神は無形」というイスラム教の核となる考え方は張さんが長年追求してきた真理と一致するものでした。またコーランの教えにある考え方も、創作理念に大きな影響を与えています。さらにアジアの宗教哲学の含蓄と西洋の技法をひとつにして、静かで洗練された抽象的な創作スタイルの作品を1枚1枚と生み出しているのです。
▲張さんの抽象的な作風は、東方哲学と西洋技法の影響を強く受けています。(写真╱黄建彬)
新旧の顔を持つ台北 あふれる創作の源
2011年に故郷の台湾へ戻ると、張さんは台北を創作の場に選びました。彼女は、台北は現代的な信義計画区もあれば、かつての文化が残された大稲埕などもあり、伝統と現代が共存している街だと考えています。カラフルなネオンの看板はこの土地の都市の美を表しており、街角のカフェは忙しい台北の生活にこっそりひと息つく空間を残してくれています。それぞれじっくり鑑賞する価値があるだけでなく、絶え間なく湧き出る創作の源でもあるのです。
近年、台湾政府は「新南向政策」(東南アジア、南アジア、オーストラリア、ニュージーランドなどの国々との全方位的な関係強化を目指す政策)を推進しています。張さんは、台北は国際的に名の知られた首都であり、その一挙一動が世界が持つ台湾のイメージになると言います。彼女は今後、世界各国のイスラム芸術家を招いてイスラム芸術をテーマとした展覧会を開催することを提案しています。芸術と文化の交流を通じて、人種や宗教文化の間にある誤解やステレオタイプのイメージを除くことができます。また、台湾がさまざまなエスニック‧グループの文化を尊重し、受容していることをアピールできれば「新南向政策」の推進にもつながることでしょう。
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