発表日:2018-03-16
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伝統と革新が生んだ
心打つ老舗の味わい
文 _ 張文馨 写真 _ 黄建彬
▲70年以上の歴史を持つ「合興糕糰店」は伝統を受け継いだ娘夫婦の革新によって老舗ブランドとして生き残る道を見出しました。(写真/黄建彬)
美食とは、お腹を満たすためだけのものではなく、ある地域の生活と文化を映し出すものでもあります。百年の歴史ある老舗から創作料理の店までさまざまな美食が集まる台北には、街のあちこちに「食」に対する懐の深さが表れています。台北市は近年、ユニークな各産業の再生を促進してきました。食を扱う事業者に対してはブランドの再構築、ストーリーマーケティングの導入、支払い方法の利便化などをサポートし、質の向上やブランドの価値を高めるのを支援するだけでなく、台北市の観光収入の増加にも繋がっています。この変革が持つ力はあなどれません。
▲「合興壹玖肆柒」の新商品は昔ながらの味わいを守っています。(写真/黄建彬)
合興壹玖肆柒
すみずみまで責任
1947年創業の「上海合興糕糰店」。70年以上にわたり南門市場の中華菓子店を代表する存在でしたが、食習慣の変化による影響を免れることはできず、客が日を追うごとに減っていました。若い世代は昔ながらのお菓子の美味しさをほとんど知りません。
二代目店主である任台興さんは老舗にも変革が必要だと分かっていましたが、なすすべがありませんでした。そんな時、イギリスでデザインの勉強を終えた娘の任佳倫さんとその夫、鄭匡佑さんが帰国し、若い世代のアイデアを提案します。そこで、昔ながらの味を大切にしつつ活路を見出そうと、南門市場の老舗とは異なる全く新しいスタイルの「合興壹玖肆柒」を大稲埕に出すことを決心しました。小さな空間ですが、老舗の物語を伝える舞台となっています。店頭に並ぶ菓子のほとんどは南門市場の店と同じもので、常連客も新しい空間で慣れ親しんだ味を見つけることができます。
伝統から革新へ、異なる世代の考え方は相容れない部分が必ずあり、歩み寄りが必要です。任佳倫さんと鄭匡佑さんは創業当初、「ブランド」という新しい考え方を導入するよう年配者を説得しなければならなかった、と振り返ります。さらに新しい商品や店舗にも家族の味わいを留めなければならず、取捨選択とバランスを取る中で多くの問題に直面したそうです。幸い家族の支持が得られ、新商品の開発にあたっては父親が作り方を指導してくれたため、店本来の風味を守ることができたと言います。
「作りたてを食べるお客様の顔が見たい」店主が何気なく口にした願いが「合興壹玖肆柒」の店作りに素晴らしいアイデアをもたらしました。中華式ケーキは蒸したてが一番美味しく、冷えたり再加熱したりすると食感が変わってしまいます。客に最高の味を楽しんでもらうため、開店後はこんろの火をずっとつけたままにして商品を蒸しているので、店内で香り高く柔らかなケーキがすぐ味わえます。職人の手で1つ1つ作るケーキは手間も時間もかかりますが、この繊細な食感は手作りならではこその美味しさです。
若い夫婦が背負った老舗を受け継ぐという使命には「変わる」ものと「変わらない」ものがあります。「材料はどれもシンプルで天然のものです。これらは祖父から受け継いだ製法で、私たちは一口一口に責任があるのです」老舗の変革は時代の流れであり、空間のデザインや商品パッケージが人目を引くかもしれません。しかし2人は老舗がこれからも代々続いていくためには「商品」こそ基本であり、容易に妥協しない姿勢こそが大事だとよく知っています。
▲「老済安青草店」は新たな取り組みで伝統的な薬草茶と青草文化を後世に伝えます。(写真/黄建彬)
老済安青草店
心と体を癒す薬草茶
「老済安青草店」は万華の青草巷(青草通り)にある薬草店です。3代続く店の経営は安定していましたが、店主の王栄貴さんは青草文化が段々と衰退していくのを強く感じていました。消費者は青草の質を見極める方法も知らず、理解は限られています。そこで、台北市産業発展局が老舗再生計画を始動させた時、王さんは店を生まれ変わらせようと思い立ちました。
王柏諺さんは小さい時から父親とともに青草に親しみ、自然と薬草の知識を身につけました。外の仕事を辞めて父の仕事を継いだ後、専門家チームのサポートの下で父と力を合わせ、倉庫を青草文化を伝える場とした全く新しい店作りに取りかかりました。
青草販売は斜陽産業だと言われることについて王柏諺さんは、それは人々が青草をよく知らないためだと感慨深げに言います。新しく生まれ変わった「老済安青草店」は1杯ずつ手で入れた薬草茶を提供、カウンター席で消費者との距離を縮めています。店内では薬草茶作りも体験できます。ヨモギの香りを嗅ぐことから始まり、視覚、味覚、触覚を使って青草の効果を理解すれば内から外へ身体が癒されていくのを感じます。勤め人のやる気を起こす「神清気爽茶」や身体をいたわる「地錦板藍茶」など、いずれも消費者が薬草をより生活に取り入れやすいようにしたお茶です。このほかにも、テイクアウト用のボトル入りやティーバッグなども販売しています。
革新と伝統を兼ね備えてこそ、青草文化は生き残ることができます。「老済安青草店」は販売スペースやパッケージを改良し、より多様な客層を確実に引きつけるようになりました。また地域と協力してPR活動にも取り組み、文化を紹介するツアーなどを通じより多くの人々が青草に親しみ、先祖から伝わる知恵と伝統の薬草茶が後世へ受け継がれていくことを願っています。
▲老済安青草店は入れ立ての薬草茶スタンドとして生まれ変わり、薬草茶づくりも楽しめます。(写真/黄建彬)
▲「老済安青草店」は全く新しい店作りで若い客層を引きつけ、青草文化を広めています。(写真/黄建彬)
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