発表日:2018-03-19
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ミュージシャンの感性で伝統に新風
心機一転・幸せ伝える
ランタンフェス蘇打緑・阿福さん
文 _ 林秀涵 写真 _ 劉徳媛、高讃賢
▲阿福さんは台北ランタンフェスにアーティストを結集させ、ともに幸せな視覚の饗宴を繰り広げました。(写真/劉徳媛)
人気ロックバンド、蘇打緑(ソーダグリーン)が3年間の活動休止を宣言しましたが、バンドリーダーの阿福(アフー)さんは相変わらず夢を追い続けています。さまざまなイベントに取り組んでいるほか、このほど2018年の台北ランタンフェスティバルのアートディレクターを担いました。今年、阿福さんの手掛けるランタンフェスは、これまでのお決まりの流れを一新し、この大地に想いを抱くアーティストたちとともに、人情味、アート、幸せがあふれるイベントとして行われました。
ミュージシャンから台北ランタンフェスのディレクターへ、二つの役割はどうつながりましたか。
いまは音楽をやっていますが、大学では行政学を専攻していました。だから社会問題には高い関心を持っています。ミュージシャンにはたくさんのファンがいて、一定の影響力を持っていますから、これを生かして今の社会を変えたいと思っています。ランタンフェスの企画を通じて、音楽の分野とは違うものをひねり出そうと試みました。世界で活躍する台湾のアーティストをこの大地に結集させる、これが今回いちばんやりたかったことです。
台北ランタンフェスに関わるきっかけと動機は。
兵役でさまざまな分野のパフォーマンスアーティストと知り合ったころから、枠組みを越えたコラボレーションというアイディアを温めていました。台北には素晴らしいモノやコトがたくさんあるけれど、今の子供は家でテレビを見たりスマホをいじったりすることが多いと思います。そこで2016年から2年連続で「URS27華山大草原」という広場に「達斯克巨人楽園(期間限定の屋外遊園地)」を開設しています。「都市美術館」のような、アートと音楽を組み合わせたインタラクティブな施設で、子供たちを外に引っ張り出すのが狙いです。施設内の巨人は巨大ランタンの要領で制作したので、ちょうどこの企画を手掛けた経験をランタンフェスに活かそうと思いました。また、枠組みを越えた若いアーティストが自分の得意分野を生かし伝統行事の美をどう解釈したのかをみなさんに見てもらおうと頑張りました。
台北ランタンフェスをより見応えのあるものにするため、音楽の仕事で培った経験のうち活用したものは。
ミュージシャンにとって大事なのは、何をするにも「ビジュアル」と「ストーリー」を添えることです。この考えをランタンフェスにも導入し、どのランタンも単なる犬とか動物とかいうことでなく、ストーリーを添えるよう取り組みました。見る人がその背後にある精神と物語を感じられるようにし、フェス全体がより見応えあるものになりました。
フェスのディレクターとして最も大きな課題とは。型破りなポイントと特色は。
去年のフェスも非常にうまくいったのでプレッシャーも大きかったです。でも「今年は心機一転!」という信念を持ち、メインランタンの大きさや経費の多さにとらわれませんでした。誰もが表面だけを見て通り過ぎるのではなく、一つひとつのランタンの前で立ち止まり、アーティストが伝えたいことを感じて欲しいと考えました。元宵節(旧暦1月15日の小正月)のランタン観賞は、旧正月の締めくくりとしていちばん大切な人と過ごす人が多いですから、テーマを「幸福GO GO」にしました。大事な人とともにランタンを作るイベントも企画しました。
今回いちばん前に出したかった価値とは。
世界を見てみると、日本には瀬戸内国際芸術祭、米国にはネバダ州のバーニング・マン、ポルトガルにはアゲダグアダ芸術祭があります。翻って台北ではどうやって人々の印象に残る芸術祭を作り上げればいいでしょうか。自分にとって、アートとランタンはイコールで結ばれます。昔のランタン作りは非常に凝っていて、技術や手法も複雑できめ細かなものでした。テレビなど娯楽のない時代、元宵節のこの日だけこんなにきれいな芸術作品を見ることができたのです。だから、ランタンフェスを台北最大の芸術祭にする、これが今回の努力目標でした。幅広く参加を要請した200 人超のアーティストは、年齢25 歳~40 歳が中心で、世界各国で高く評価され実績を上げています。この人たちが加わることで、すばらしいアートの刺激とパワーがスパークしました。
中部の南投育ちですが、台北との縁はいつから、台北の印象は。
父は軍人で普段は台北で仕事をし、母も公務員でよく台北に出張していましたから、小学生のころからよく来ていました。当時、台北のすべてが珍しく、特に建物が全部すごく大きいと思っていました。好奇心が強く、何を見ても触りたくなるんです。手が持つパワーは絶大で、触ることでいろいろな感覚が触発されました。父について路地を歩くとき、その道に沿ってずっと触り続けていました。雑貨店で触ったものを落として壊してしまい、お店のご主人に父が頭を下げたこともありました。
▲巨大なペーパーアートのランタン「祈福生子燈」は、2018台北ランタンフェスの目玉のひとつ。(写真/高讃賢)
長年台北で暮らしていますが、この都市を意識し始めたのはいつ。
もう台北で20年ほどになりますが、ここ3年でようやくゆっくりとこの都市を意識するに至りました。事務所のそばに旧華山駅があるのですが、つい最近、この民家みたいな2階建ての白い建物が駅長室だったことを知りました。この間、五月天(メイデイ)の瑪莎(マサ)ととりとめなく話していて、ここの鉄道が延吉街を通り、兵工廠まで続いていたと聞きました。この手の話や事件に幾度となく衝撃を覚え、台北にはまだまだ知られていない情報を発掘する楽しみがあるんだと思いました。
他の国際都市と比べ、台北という都市の最大の強みは。
台北はパリや東京のように歴史は長くないですが、もっと自由でもっとオープンなところ、それが最大の強みだと思います。自分は台北からたくさんの創作の場をもらっています。今回の台北ランタンフェスのように、こんな大きなイベントを我々若輩者にやらせてくれるなんて、台北市も大胆だなあと思います。若いアーティストも長い間あちこちで培ったものを発揮する機会が与えられ、この点、台北はカッコイイと思います。
台北で一番好きな場所は。心の秘密基地はどこにありますか。
北投も陽明山も好きですが、いちばん慣れ親しんでいるのは木柵です。20年の3分の2はここで過ごしています。台北の大学に進んでから、ずっと木柵にいますが、特に学生時代は、いつもバイクに乗ってあちこち行くなどたくさんの時間を過ごし、とても詳しくなりました。秘密基地は旧華山駅です。落ち込んだときに駅長室から外を眺めると、毎日20数人のアーティストがランタンフェスのため深夜3時~4時まで作業していました。50歳の竹アーティストなど、一旦ここに入ると1週間作業を続け、車で睡眠をとっていました。芸術に対するアーティストたちのこだわりと努力を見るだけで、再び力がみなぎります。
台北の人々にひとこと。
絶体絶命のピンチに陥ったとき、何とか心機一転することで九死に一生を得ることができます。台北の尊いところは心機一転を試みている人が必ずいることです。
ファッションでも食でも音楽でも、新しいものが次々に生まれ、台北とは常に心機一転を繰り返す都市であり、それが国際都市であるための大事な条件です。ここに住む人々が、よく食べ、よく暮らし、自分たちのいるこの場所にしっかり向き合い、いまを生きることができますように。
▲今年の台北ランタンフェスは200人超のアーティストがともに取り組み、見応えのあるアート作品がさらに創意のパワーを添えました。(写真/高讃賢)
阿福
本名は何景揚。ソーダグリーンのギタリストでリーダー。2015年に「華山站貨場」を立ち上げ、台湾で最も素晴らしいアーティストを集結させ、舞台、音楽、デザイン、舞踏、雑技など最高のパフォーマンスを作り上げたいと考えている。
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