台北観光サイト

ベジ料理で楽しむ異国の味わい
最先端の菜食レストラン続々

文  楊芷菡

写真  李鍾泉、林煒凱、élément原蔬

▲ピータンと豆腐入りの水餃子にラー油を添えた「紅油皮蛋豆腐餃」は、中華と西洋の食材を融合した驚きの一品です。（写真／林煒凱）
 

2018年8月にこの世を去ったフランス料理界の巨匠、ジョエル・ロブション（Joël Robuchon）氏は2014年のインタビューで「ベジタリアン料理が今後10年のトレンドになる」と語りました。ロブション氏が予言したトレンドの勢いはすさまじく、台北ではここ数年、1～2カ月に1店のペースで新たなベジタリアンレストランがオープンしています。ベジタリアンレストランは食材本来の味わいや料理にまつわるストーリーを伝えるだけでなく、料理そのものが十分においしく、きめ細かいか、店のデザインが独特かなど、消費者が重視するあらゆる点で個性を確立する必要があります。

世界の最先端の食が集まる台北は、従来の料理をベースに全く新たな料理を生み出しています。宗教上の理由や動物の命を尊ぶ気持ちからベジタリアンになった人向けのレストランは以前からありましたが、今では台湾の新鮮な食材をうまく利用し、異国の味わいを加えた斬新なベジタリアン料理を提供するシェフが現れ、台北はベジタリアンにとって訪れる価値のあるグルメの都となりました。

▲（写真／林煒凱）
 

ベジ料理は国境を越えて
栄養たっぷり

ベジタリアンレストランはトレンドに合わせ、多国籍料理を前面に打ち出しています。中華、韓国、アメリカ、メキシコ、フランス、イタリアなど各国の料理特有の味つけや調理法を生かしたバラエティー豊かなメニューが特長です。味わいや食感で変化を出そうとメイン料理、副菜、食材の組み合わせに次々と創意工夫が加えられ、ベジタリアンレストランと言えばバイキング形式の店しかなかった以前の状況から一変しました。

肉を食べないと体に必要なタンパク質が摂れなくなるのではと思われがちですが、穀類、キノコ類、豆製品、野菜、果物には植物性タンパク質が含まれ、動物性タンパク質より消化、吸収に優れています。話題の「スーパーフード」であるアボカド、ヒヨコ豆、キヌア、ズッキーニ、ケール、ルッコラなどはビタミンとミネラルが豊富で、ヴィーガン料理に多く使用されています。

台北でも多国籍ベジタリアン料理がブームです。中華料理と西洋料理のそれぞれの良さを生かし、盛り付けなど細部にもこだわったメニューを提供しようとする店も多く、肉好きでもベジタリアン料理にはまってしまう人が増えています。

中韓ミックス
ほんのり甘辛のうれしい驚き

韓流ブームが続く中、最先端のベジタリアン料理がコンセプトの「小小樹食」では、韓国料理に欠かせないコチュジャンを生かしています。キヌアご飯とアボカドなど旬の野菜に、自家製コチュジャンを混ぜ合わせて食べる「小樹酪梨蔬菜」はまるでビビンバのような驚きの味わいです。ピータンと豆腐などを包んだ水餃子にラー油を加えた「紅油皮蛋豆腐餃」は中華、西洋の食材を融合したオリジナル料理で、新鮮な食材とたれが見事なハーモニーを織り成し、独特な中華の味わいを演出しています。

新鮮で栄養豊富な穀類、豆類、野菜、果物に独自のアイデアが加わった創作料理は、ベジタリアン料理の醍醐味と言えるでしょう。

アメリカ・メキシコ風ベジ
ヘルシーかつボリューム満点

アメリカ料理と言えばボリュームたっぷりの肉の揚げ物、ジューシーなハンバーガーというイメージを抱く人が多いと思いますが、台湾のアメリカ風ベジタリアン料理のレストランでは肉の代わりにどのような食材を使っているのでしょうか。アメリカのストリートアート、ガレージ風デザインの「URBN culture」で食べられるサンドイッチ「撕肉菇煎烤三明治」は、エリンギにバーベキューソースを合わせレタスと一緒にチャバタに挟んで香ばしく焼き上げてあり、満足感たっぷりの一品です。キノコ類には食物繊維、多糖、ビタミンB、豊富なミネラルが含まれ、ベジタリアンレストランでは肉の代用品としてよく使われています。

食感が絶妙なキムチのマヨネーズ和えハンバーガー「全植手工泡菜美乃滋漢堡」は、卵黄でなく豆乳で作ったマヨネーズを使用し、大豆を発酵させたテンペ、オーツ麦なども入っているため、豊かな味わいを楽しむことができます。シーザーサラダ「凱薩沙拉」はドレッシングにアンチョビでなくヒヨコ豆を使います。ミルクセーキは牛乳の代わりに豆乳とカシューナッツミルクを使用しています。ドリンクの「地瓜派」は蜂蜜の代わりにアガベシロップを使用し、サツマイモ、ナツメヤシ、シナモンの濃厚な香りが味わえます。

食材をうまく組み合わせれば、ベジタリアン料理もボリュームたっぷり。メキシコ料理の「墨西哥大碗公」はキヌア入りご飯にアボカド、生野菜、炒め野菜、チリコンカーンソース、サルサソースを加えた一品で、チーズとヨーグルトの代わりに、高タンパク質の栄養酵母を加えた豆腐炒めをトッピングすることも可能です。異国料理の特色を生かしたベジタリアンレストランでは、バラエティー豊かな味わいを楽しむことができます。

▲ポルチーニのリゾット「黒藜麦牛肝菌菇燉飯」は、精米の代わりに黒キヌアを使用しているため美味かつヘルシーです。（写真／élément原蔬）
 

目と舌で楽しむフレンチベジ

ベジタリアンレストランを開くには、ベジタリアンでない人にもおいしいと思わせるだけでなく、見た目にもこだわったメニューを提供する必要があります。「élément原蔬」のポルチーニ茸リゾット「黒藜麦牛肝菌菇燉飯」はイタリア米の代わりに黒キヌアを使用しています。キヌアは豊富なタンパク質を含み、歯ごたえがありますし、精米を使っていないため体にも優しい一品です。

メキシコ風チーズスパイシーペンネ「墨西哥起司辣味水管麺」は食欲をそそる辛さで、トマト1個分の食物繊維を摂ることができます。さらにイチジクとブルーチーズ、黒トリュフ・黒オリーブ・モッツァレラチーズのチップが加わることで、ローマ風ピザのようなカリッとした食感と食材そのもののしょっぱさ、甘さ、香りを一度に楽しむことができます。

ヘルシーで栄養豊富な食材をベースに新たな工夫を施した数々の料理。ソースも自家製でオリジナリティーに富み、ベジタリアン料理はもはや、かつてのような単調で味気のないものではありません。斬新なベジタリアン料理は味も素晴らしく、くせになること間違いありません。

小小樹食
12:00～21:00
大安区大安路一段116巷17号
02-2778-2277

URBN culture
12:00～22:30
（土曜11:00～23:00）
大安区基隆路二段252号
02-2378-8322

élément 原蔬
12:00～21:30（土曜11:00～22:00）
大安区仁愛路四段408巷21号
02-2703-1099


 

[レシピ]

蒜辣杏鮑菇
（URBN culture紹介）


 

材料
エリンギ
200g
ニンニク（みじん切り）
大さじ1
スパイスソルト
小さじ半分
パプリカの粉
小さじ半分

作り方
1.乱切りにしたエリンギをフライパンに入れ、水気が抜けるまで油で炒めた後、いったん取り出す。
2.フライパンに油を少し敷き、ニンニクを炒め、スパイスソルトを加える。
3.パプリカの粉を加えて炒め、香りを出す。3分の1カップの水を入れ、水分が半分になるまでエリンギを炒める。

調理のコツ
スペインのタパス風の一品。そのまま食べるか、パンのトッピングにもおすすめ。