台北観光サイト

TAIPEI　#15 (2019 春季号)

街角の茶屋巡り 春の香りに誘われて

文 = 林秀涵 訳者=下山敬之 写真 = 劉德媛、梁忠賢 , Alishier Sharip


台北は 100 年に及ぶ歴史あるお茶のお店があるだけでなく、国際 交流を通じて各国の特色ある茶館(日本の茶屋)がどの地域にもあり、 一度路地を歩けば優雅なお茶の香りに出会うことができます。

お茶と共に味わうま ったりとした時間
中華圏の歴史を紐解く と、お茶に関する最古の記 録は神農の時代にまでさか のぼります。4500 年 という時間を経てお茶は最 も普遍的な飲料の一つにな りました。

台湾は華人地域において 小さい島ですが、お茶の栽 培と製造に適した場所で地 形、気候、緯度、海抜また は土壌においても、すべて の面で茶樹の育成に向いて います。100 年の歴史 を持つ林華泰茶行に勤める 廖明宗(リャオミンゾン) 工場長は台湾の製茶技術は 一流と話します。「台湾の お茶が一流と呼ばれる理由 はお茶農家の品質基準が高 いこと、そして職人の製茶 技術が熟達し、さらに高性 能の設備を導入しているか らこそ高い品質を保ち続け ているのです」。►台湾の茶葉が高い品質を持っていす。 ( 写真 _Alisher Sharip)

台湾の大部分の地域は恵 まれた軟水がありますが、 廖さんは「天の時、地の利、人の和、これらすべて を兼ね備えた台湾はお茶づ くりに最適な場所です」と 話します。

この四季がはっきりして いる肥沃な土地において、 季節ごとに異なる茶葉を生 産しています。その中でも 廖さんが強くオススメする のが春茶です。長い冬眠期 を経た後に芽生えた春茶 は、長期間に渡り休息をし たために茶葉の口当たりが 一番柔らかく、新鮮さ、喉 越し、後味と香りすべてに おいてほかの季節のお茶よ りも優れているそうです。►台湾のお茶は種類が豊富で、好みに応じてた くさんの選択肢があります。(写真_劉德媛)

市場に並ぶ春茶は優秀な ものが数多くありますが、 どのようにお茶を選べばい いかは悩みどころです。34年の製茶経験を持つ廖さ んは、茶葉の色と香り、試 飲ができればその口当りで 優劣を判別することができ ると言います。「茶葉の形 が整っていて、濃い緑であ るほど新鮮になります。反 対に細切れになった茶葉や 黄色がかかった茶葉、香りの少ない茶葉は良品とは言 えません」と廖さんは話し ます。►茶葉の色、形から品質の優劣を判別すること ができます。( 写真_劉德媛)

美味しいお茶を入れるに は、お茶の量、温度、時間 は大事な三大要素です。 ウーロン茶を例にすると、 まずはティーカップを温め ることから始まります。 次に茶葉を入れますが 150ccの水に対して 5gの茶葉が適切な量で す。急須で約 3分間煮出し た後にお茶を茶海という急 須とは別の器に移した後に ティーカップに注ぎます (※一度茶海を経由するこ とで茶の味の濃淡を均一に することができます)。ま た、カップに注ぐお茶の量 は 分目にすることで美味 しいお茶が楽しめます。注 ぐ量を抑えることでこぼす 心配やヤケドの防止になり ます。ただ、お茶の種類や 好みに応じて味の濃淡は調 整することもできます。

本格的なお茶の作法は細 かなステップがいくつかあ りますが、細部まで重視すぎる必要はありません。お 茶とは自由であり、高価な 茶葉を選ぶことよりも自分 の好きなお茶を飲むことこ そが最良の作法です。►注ぐ量をカップの 7 分目にするとこぼす心配 ややけどの心配がありません。( 写真 _梁忠賢)

中華と西洋文化が 奏でるハーモニー
伝統的なお茶屋さんであ る林華泰茶行を離れ、百貨 店が林立する中山区に足を 運ぶとアフターヌーン ティーを提供するお店が軒 を連ねます。その中でも 「smith&hsu」 と い う 茶 屋は他のお店と違い、先に お茶の香りを確かめる事が できます。通常はメニュー に書かれた文字から選択を しますが、このお店では31種類のお茶を香りで選んで 注文できるのです。

お茶の種類は台湾本土の 伝統的なお茶を始め、西洋 式の紅茶、世界各地のブレ ンドティー、フルーツティ ー、ハーブティーなどがあ ります。各国のお茶の香り を楽しむことで、のんびり と世界各国を旅するような 優雅で上品なひとときを生活の中に取り入れることが できます。►日本茶道は全ての作法に意味があります。( 写真 _梁忠賢)

このお店では、台湾産の 鉄観音と西洋のチーズケー キや台湾緑茶とブルガリア のバラといった東方と西方 のお茶の文化が混ざり合い 奏でるハーモニーを楽しむ 事ができます。

smith&hsu の マ ー ケ ティング企画を担当する 張玉慧 ( チャンユーホイ ) さんは「焼き時間が長い ものやミルクの味が濃い スイーツは深く発酵した ウーロン茶や紅茶、また は甘酸っぱいフルーツテ ィーなどが合います。お 茶は食物の油脂を分解す る作用があるので口当た りもあっさりとします。 反対に軽く発酵したウー ロン茶や緑茶の場合は果 物系のスイーツにマッチします」と教えてくれま した。►美味しそうなイギリス式のアフターヌーンティーに心を奪われ ました。( 写真 _梁忠賢)

昔から争われたお茶が先 か牛乳が先かという問題について smith&hsu では実 験を行い検証しました。その結果、口当たりや味に与 える影響はほんのわずかで あることがわかったため、 どちらを先に入れるかは茶 器の材質や耐熱性によって 変える方がいいです。陶器 を使う場合は先に熱いお茶 を入れて、その後に冷たい 牛乳を加えるのがベストで、磁器の場合はどちらが 先でも問題はありません。

イギリス式のアフターヌ ーンティーにも正式な作法 がありますが、張さんはア フターヌーンティーの目的 は人との交流であり、嫌な 事や楽しいこと、悩みの相 談など様々な感情を共有す る素晴らしい時間なので、 作法にはこだわらずラフな スタイルで自分の好きな味 を楽しむ事が大切であると 教えてくれました。

日本茶道に見る利他 と修身の心
中国式のお茶も西洋式の アフターヌーンティーも、 全て自分の好みに応じて調 整ができます。それに対し て、日本茶道はとても厳し いです。すべての作法を忠 実に行わなければいけませ ん。日本の裏千家茶道の祝 暁梅(宗梅)(ジューシャ オメイ)准教授は日本の茶 道が台湾に伝わったばかり の頃、多くの人が日本茶道 のお茶を 1口飲むまでに20分も待たなければいけな い理由が理解できなかった と話します。

祝さんは続けて日本の茶 道の作法はすべて「利他」 という精神が反映されてい ると話します。お茶を入れる亭主(ホスト)は相手の 好きな温度と濃度に応じて 調整を行い、お客さんにリ ラックスしてもらうよう常 に気を配らなければいけま せん。お茶を飲むという単 純な行為に誠心誠意、心を 尽くすことこそが侘び寂び という精神になります。►日本茶道は全ての作法に意味があります。( 写真 _梁忠賢)

日本は台湾の飲食文化に 深い影響を与えました。台 北の至る所に日本式の飲食 店が立ち並び、その中でも 特に抹茶類の飲料は多くの 人に愛されています。興味 をもった人は関連の授業に 参加することで本場の日本 茶道を学ぶことができま す。例えば、北投の文物館 は 2007 年から茶道研 究の第一人者である裏千家 を招いて日本茶道が好きな 人に向けて関連の文化コー スを開催しています。日本 式の建築で着物を着た先生 から茶道の知識を教わるこ とができるので日本にいる ような感じを受けます。多 くの外国人観光客もわざわ ざ北投を訪れるようになり、日本茶道の文化も台北 観光の特色の一つとなりま した。►個人の修身と静心が日本茶道の真髄です。( 写真 _梁忠賢)

日本茶道以外に、お茶請 けとなる和菓子も多くの人 に愛されています。台湾で も春になると桜が咲くので 桜の形を模した和菓子など は大変好まれます。祝さん が特にオススメするのは春 季に新しく摘みとった日本 煎茶です。もともと渋みが 少なく甘さの方が強いのが この時期のお茶の特徴です が、お湯の温度を70 〜80 度 にキープする必要があり、 温度が高すぎると、煎茶は 苦くなって飲みにくくなる そうです。

中国式、西洋式または日 本式のお茶にはそれぞれが 持つ特徴があります。繊細なお茶の香りと味わいと共 にうららかな春を楽しんで はいかがでしょうか。