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​​​​​​​脈々と受け継がれる技術 100 年続く堆花の伝統 巨匠郭亘富が伝える堆花の精神 (TAIPEI Quarterly 2019 春季号 Vol.15)

アンカーポイント

発表日:2019-03-22

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TAIPEI #15 (2019 春季号)

脈々と受け継がれる技術 100 年続く堆花の伝統 
巨匠郭亘富が伝える堆花の精神 


文 = 王文怡   写真 = 楊艷萍,郭亘富 


建築装飾技術とは建築に 芸術性を加える手法の一つ で、信仰する宗教や各地域 の生活様式などの文化的な 特色を現します。その中に は「堆花(タイカ)」技術 という一種の建築装飾技法 があります。堆花はお寺で 祀られている神様にとって は個性や地位を示す意味を 持ち、信者たちにとっては お寺の勢いを示すことで信 仰心を強める効果がありま す。そして、巨匠にとって はその技術を多くの人に見 せる場という、それぞれ異 なった意味と役割を持って います。 

台湾にある寺院のほとん どは伝統的な建築様式や装 飾技法が用いられていて、 訪れた人に驚きと感動をも たらします。また、どの建 築物もおよそ人が作ったとは思えない大掛かりな芸術 作品で、その全てに巨匠た ちの心意気や特色が現れて います。こうした建築芸術 の分野において台湾でトッ プを誇るのが郭亘富(グォ ガンフー)さんとそのご家 族です。郭さんの曽祖父は 造形業の元祖で、以降四代 に渡ってその事業を継承 し、台湾の寺院の装飾に携 わってきました。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--脈々と受け継がれる技術 100 年続く堆花の伝統  巨匠郭亘富が伝える堆花の精神►四代目の郭さんは台湾文化部が唯一公認する堆花芸術の 第一人者です。

100 年受け継が れる技術の起源 
郭家が受け継いだ技術は 台北文化発展の歴史でも あります。100 年前、 郭さんの祖父にあたる 陳大廷(チェンダーティ ン)さんは台北保安宮で 世紀の堆花技術対決をし ました。その当時、保安 宮の修復は つのグルー プに依頼され、右側半分は陳大廷さんが率いる巨 匠たちが、左側半分は洪坤福(ホンコンフー)監 督が担当しました。「私 たち一家にとってはこの 対決の勝敗よりも、技術を見せるための舞台とす る事が重要でした」と郭 さんは振り返ります。こ うした歴史を鑑みると郭 さんが堆花に関わる事は 100 年も前に宿命づけ られていたようにも思え ます。郭さんは「私にと って家族の作品が台北の史跡になった事は特別な 意味を持っています」と 話してくれました。 

堆花は人生そのものを映し出す鏡 
「堆花は私に言わせると 生活の一部です。私はすで に現役を退きましたが、堆花に関する一切は私の人生 と共にあり、引退した今で も時折愛用の仕事道具を持 ち出してメンテナンスをし ては現役だったころの思い 出に浸ることがあります」 と郭さんは笑って話してくれました。TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--脈々と受け継がれる技術 100 年続く堆花の伝統  巨匠郭亘富が伝える堆花の精神►郭さんが現役時代に使用していた仕事道具。

圓山ホテル、中正記念堂、北福大稲埕といった伝統あ る建築物が生まれ変わって いく様子が郭さんの持つ写 真から見て取ることができ ます。郭さんは「こうした 作品を作り出す時に、直感 的にひらめくと作業はとて も早く終わります。とはい え、何も浮かばないからと 椅子に座ってぼんやりして いても仕事は始まりません。 なので、人生経験で得た感情の中から着想を得る事は とても大切なんです」と言 います。四代に渡って技術 を継承し、また中華民国(台湾)文化部が唯一公認する 堆花芸術の第一人者でもあ る郭さんですが、ここまで に至る道のりは決して楽な ものではなかったと笑って 話してくれました。そこに はお父様による厳しい指導 があったそうです。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--脈々と受け継がれる技術 100 年続く堆花の伝統  巨匠郭亘富が伝える堆花の精神►北福大稲埕の立体的な堆花。

時代と共に堆花技術 に注目を集める 
郭さんの記憶に今でも残 り続けているのは厳しいお 父様の姿で、幼き日に授業 をサボった郭さんは机の下 に縛り付けられ「遊んでば かりでは厳しい肉体労働し か仕事がなくなるぞ」と叱 られたと言います。 

こうした教育によって育 った郭さんは、若干 13歳に して初めて北投忠義行天宮 に関わる仕事を請け負いま した。郭さんの修行時代 は、出来上がった作品をお 父様に見せては出来が悪い とすぐに壊され、作り直しをさせられる日々でした。 しかし、こうした指導が現 在の独特な拘りや気骨を養 う事につながっているそう です。郭さんは現役だった 頃、専用の作図ソフトを使 ってデザインをしていまし たが、その時作成したある 龍の図面を取り出し、「こ の図は一人でパソコンを使 って手描きで書いたので線 の一本一本に至るまですべ てはっきりと覚えていま す。同じ図で何倍にも拡大 したものでも作れますよ」 と私たちを驚かせてくれま した。また、奥様も郭さんの心はいつも仕事の中にあ って、寝ている時でも仕事 の夢を見ているか、夜中ベ ッドにいない時は決まって パソコンの前で製図をして いると教えてくれました。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--​​​​​​​脈々と受け継がれる技術 100 年続く堆花の伝統  巨匠郭亘富が伝える堆花の精神►50 年前に堆花を始めた郭さん。( 写真 _ 郭亙富 )​​​​​​​

家族と共に生み出す 新しいスタイル 
郭さんに台北の中で最 も注目すべき作品は何で すかと尋ねると、手前味噌ですがと前置きをしつ つ自身が手がけた北福大稲埕と答えてくれまし た。その理由はこの建物 が郭家の家族が受け継い てきた技術と理念が一体化した作品だからです。 

北福大稲埕に関して奥様 は「主人はあの建物にとて も気を配り、お気に入りの 作品でもあります。材料は 建物が持つ特色に合わせて 一つ一つを台湾各地から探 し集めました。外壁の赤レ ンガも南部産の厳選した素 材を使用しています。細部 までこだわることで完璧な プロの仕事ができ、且つ個 人の芸術的なこだわりと郭家が培ってきた理念に沿う ものになります」と答えて くれました。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--​​​​​​​脈々と受け継がれる技術 100 年続く堆花の伝統  巨匠郭亘富が伝える堆花の精神►郭さんが新たにした北福大稲埕は90年以上の歴史がある。

堆花技術を次代に継承す ることに関して、郭さん曰 く「とても難しい」そうで す。この仕事は芸術性やセ ンス、創造力があれば出来 ますが、最も重要なのは正直であることや倫理観、尊 重するといった人間性だか らです。何かの縁で本気で 堆花を学びたいという人に 出会ったらその時にまた考 えると郭さんは話します。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--​​​​​​​脈々と受け継がれる技術 100 年続く堆花の伝統  巨匠郭亘富が伝える堆花の精神►時代の変化に合わせ学んばパソコンによる製図。

最後に「私にとって堆 花は本当に切り離すこと ができず、たくさんの使命感をもたらしてくれま す。また、芸術品に触れ る度に現在の成功をもた らしてくれた父とその教 えに感謝の気持ちを抱か せてくれます」と郭さん は話してくれました。 

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