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​​​​​​​昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘 (TAIPEI Quarterly 2019 春季号 Vol.15)

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発表日:2019-03-22

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TAIPEI #15 (2019 春季号)

昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘 

文 = 許凱森 訳者=下山敬之 写真 = 林煒凱 


武昌街城中市場の向かい 側にひっそりと隠れるよう に「東台布靴荘」(ドンタ イビゥシェイツァン)とい う靴屋さんがあります。牛 肉ラーメンの屋台と果物屋 に囲まれ、黄色に赤い文字 で書かれた看板がかろうじ てそのお店の場所を教えて くれます。人一人がやっと 通れるほどの小さい出入口 の先には伝統的な緑色のラ ックの中に入ったカラフル な刺繍入りの布靴や流行に 沿った色合いの靴が並んで いますが、店舗の内装は 1949 年の開店当時の 様子を保ち続けています。 

シューズラックの上には 創立者の夏朱素琴 ( シャア ジュースーチン ) さん、息 子 さ ん と そ の 奥 さ ん、 6人の孫と一緒に撮った家 族写真が飾られています 。

捌き切れない注文 
東台布靴荘は開店から 70年が経過し、現在は息子の 嫁の夏さんが経営を引き継 ぎました。彼女によると、 姑の夏朱素琴さんがは 元々中国江蘇省東台県のお 金持ちの大家族の娘で、子 供のために作った靴の出来 が素晴らしく、台湾に移住 してからもその腕前を披露 して近所の人に靴を作り、 対価として白米や落花生を もらっていました。その 後、技術はあるもの販路が 探せない靴職人のために、 協力して布靴を売り歩きま した。城中市場に停留して 布靴の商売を始めるように なります。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘►開店から 70 年経過し、夏さん は珍しい手作りの靴を販売して います。

柔らかく履き心地の良い 布靴は色柄、生地なども個 人の好みに応じてカスタマ イズできる上に、お値段も 非常にお手頃です。また、 特にすごいのが開業初期フ ァーストレディーの蒋宋美齢さん、連戦さんの夫人である連方瑀さん、金馬の 主演男優賞受賞者の葛香亭 さん、京劇俳優の郭小荘さ ん、芸人の胡茵夢さんらは 全て東台布靴荘の常連客で あるということです。時代 が変わり、靴が機械生産に 変わってからもこのお店は あまりダメージを受けてい ません。時代が変わっても 布靴が好きな人がいるた め、注文がこないという心 配はなく、むしろ注文を捌 ききれていないことのほう が心配だそうです。TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘►履き心地の良い布靴を自分好 みにカスタマイズできます。
 
最盛期には職人が 10名いて、靴の種類に基づいて 作業を分担していました が、現在ではこの技術を 持つ人がおらず、さらに 職人達も次々と引退して いきました。そのため、 残った職人たちの作業量 が激増し、以前は一足約2週間で完成していたも のが、現在は 70歳の職人 が一人残っているだけで、 一足を完成させるのに1 ヶ月以上かかっています。 

平日の昼間であっても城 中市場を行き交う人は絶え ず、東台布靴荘にもお客さ んが訪ねてきます。ご主人 のために居士靴を買いに来 たという張さんは家族全員 が布靴を履き、今年だけで 少なくとも 30足は買ったと 言います。張さんはラック の中にあるベルベットビー ズの靴を指し、「私も娘も この靴の赤、青、黒全ての 色を何足も持っています」 と教えてくれました。今 後、布靴がなくなることを 懸念する張さんは毎回夏さ んに会う度に、職人さんに できるだけ長くこの仕事を 続けて欲しいとその思いを 伝えているそうです。 

観光客にも愛される 多彩な布靴 
店内には百足の布靴が展 示されていますが、その種 類も様々で数多くの様式 があります。靴のつま先部 分に縦方向に一本の線が 入った「双連靴」を始め、 着物の襟合わせのように つま先部分で縫製が交差 する「斜口靴」、靴の両側 にストラップが付ついて る「楽福靴」、かかとの後 ろにストラップが付いて いる「功夫靴」、足の甲の あたりにベルトのついた 「娃娃靴」など様々です。 生地はベルベット、デニ ム、防水布、ろうけつ染め 布、印花布、レースなどが あり、表面のデザインは平面刺繍、立体ビーズ、手作 業の彩色上絵など様々な パターンがあります。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘►細やかな刺繍を施す「双連靴」。

お客さんが店内で試着を 行い、サイズがピッタリであ ればすぐ持ち帰ることがで きます。もしくは好きな色柄 の生地を選ぶか、自分で好き な生地を用意して靴を作る こともできます。透かし彫り でなければ、どんな生地でも 布靴をつくることができ、以 前政治家の奥様がチャイナ ドレスの生地を少し裁断し、 それをもとに靴を作ってド レスとお揃いにしたことが あるそうです。 

台湾のお客さん以外で は、アメリカと日本の観光客が布靴を好んで買うそう で、特に底が平らな刺繍ス リッパは畳の上でも使用が できるので日本人観光客は よく購入するそうです。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘►喜び象徴する赤い刺繍入りの靴は長い間お店の人気 商品です。

夏さんは特別にコットン 素材の靴を見せてくれまし た。コットン製はサイズさえ合えば男女兼用で使用す ることができる上に、とて も分厚くいために保温性に 優れるため、冬に流行って いるスノーブーツに似てい るそうです。彼女はお客さ んの中でも郭小荘さんが特 にコットン製の靴を愛して いて、以前は来店のたびに 7、8 足まとめて購入して いたそうです。夏さんは職 人が引退する前に残った生 地を全て使い切り、できた 靴はすべて自分で買い取り ました。なので、今店内に 残っているのが全てで、売 り切ったあとは再販できな いそうです。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--​​​​​​​昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘►コットン製の靴はスノーブーツと同様に快適で高い 保温性があります。​​​​​​​

新しい観念の導入と 新たなファッション性 
以前の東台布靴はとにか く数を売って、その中から 得た最も多いお客様の意見 を職人に伝えて改良を繰り 返すという経営方針でし た。 3代目の娘さんがお店 の手伝いを始めてからは、 伝統にあぐらをかき、いつ までも布靴が変わらないこ とは望ましくないという理 由から一定期間ごとに迪化街で布を仕入れ、また台湾 以外の輸入された生地や特 殊な生地も持ち帰っている そうです。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--​​​​​​​昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘

►娘さんが新しい布靴の開発に挑みます。


夏さんによると、娘さん の考えはとても斬新だそ うです。例えば、以前は左 右の靴の色柄のつりあい がとれてこそ完璧である と考えられていましたが、 娘さんは生地を裁断する ときに左右の柄が異なる よう職人に要求します。具 体的に言えば左足には白 雪姫、右足には小人であっ たり、左右の靴にゴッホの 異なる自画像を使用する といった方法です。他にも 牡丹と鳳凰や赤ずきんと 狼を左右の靴に描き出す ことで生き生きとした印 象を与えます。現在店内に は伝統的な布靴に近代的 なデザインを組み合わせ たものが見られたり、現代 らしくファンページの開 設、新しい生地や作品をイ ンターネット上に掲載す るなどして伝統的な布靴 に新しい可能性を見出しています。 TAIPEI 春季号 2019 Vol.15--​​​​​​​昔ながらの作り方にこだわった、靴というアート作品 - 東台布靴荘►時代の変化と、変わる靴の常識発展と変化に沿って、 靴の表面はもう対称の模様を唯一な標準としません。

今の若い人はジーパンを 好みますが、そこに刺繍 の入った靴を履くだけで も、伝統と現代のスタイ ルが融合した新しいファ ッションが確立されるで しょう。 

夏さんは手作りの靴が時 代に埋もれていく事も受け 入れています。彼女は店内 に残っている最後の一足が 売れるまでやり続けるだけ と語ってくれました。 

ぜひ機会があれば東台布 靴荘に足を運び、履き心地 の良い布靴を履いてお店を 後にしましょう! 

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