発表日:2019-06-12
1961
TAIPEI #16 (2019 夏季号)
ひたすら煮込む 80年代のファーストフード店のスタイル
ひとつの事を極める―好年年豬腳
文= 諶淑婷
編集= 下山敬之
写真= 台北市観光伝播局
好きこそものの上手なれ
「好年年豬腳」(ハオニェンニェンジュージャオ)の慌ただしい店内で、80歳になる李灑生(リーサーション)さんがスタッフと協力して豚足とスープの包装をしています。出前用と宅配用の出荷があり、この作業を何十年にも渡って続けてきました。数日後には出荷された豚足とスープがお客さんの元に届き、解凍、加熱されて食卓を囲む人に満足を届けています。
1939年に生まれた李灑生さんは、7歳のときに第二次世界大戦が終わり、小学校の教育を受けられるようになりました。その後も中学卒業後に銀行へ勤務するなど輝いていた時代だそうです。それから5年後には父親のアルミ鍋工場の管理をする道に進み、そこでアルミ鍋の温度調節器を製造しました。そして、料理時鍋の温度の重要性をより深く理解するために再度勉強を始めました。ひたすらレシピを読み漁り、これまで触れたことがなかったの調理道具と調理料について知ると、招かれるように台所の中へと足を踏み入れました。
気がつくと李灑生さんの料理の腕前は奥さんを追い越し、家庭内のシェフになりました。
▲物事を極めるために努力を続けているのは李灑生さんの職人精神です。
こんな経緯がありながらも、ファーストフード店を開くことになったのは全くの偶然でした。1976年、李灑生さんの工場の商売はすでに軌道に乗っていて、当時台湾の経済も急速に成長していました。そして副業を始める機会が訪れると、小学校の同級生と共同運営で鶏ももご飯や排骨飯といったファーストフードの販売を始めました。この投資は大きな成功を収め、1年後にはお店を2階まで拡張するに至ります。しかし、10年が経過し友人が事業から手を引いたのをきっかけに、改めて「好年年快餐店(ハオニェンニェンクァイツァンディェン)」をオープンさせます。
1996年、58歳になった李灑生さんは遂に自らお店の店主になることを決めます。それから10年後、お店は万華西園路の自宅に引っ越し、自身が最も誇る豚足料理と養生スープを目玉商品としました。
最初はただの投資でしたが、最終的には自らも参加する形で発展し、管理や計画から料理の開発まで全てを自身で行うようになりました。また、豚足をメイン料理にする前にリサーチとして台北で全ての豚足を販売するレストランを回りました。そして、豚足が他には代えられない台湾のソウルフードでありながら、調理には手間も多く、その割に必ずおいしくなるとは限らないということに気づきました。
▲養生燉品豚足湯はほのかな甘さがある一品です。
あるお客さんは「好年年」には80年代のファーストフード店の懐かしさがあり、それは店主李さんが「何かを始めたら、極めるまでやる」昔ながらの気質を持っているからであると話します。他にも李さんの料理に対する慎重な態度が心地良い食事環境に反映されています。台北万華区は老舗のお店が多い場所ですが、それでも100台湾元ぐらいの安っぽいテーブルクロスを使うお店はありません。しかし、「好年年」ではそれを使っていますが、トイレを含めて一切文句がないと店内の清潔さは高評価を得ています。これらは李さんにとっては当たり前で、特別気にかけることではないそうです。80歳となり、いつか終わりが来ることを意識しながらも、終着駅に到着するまでは寝ても覚めてもよりおいしい料理を追求し続けるそうです。
また、李灑生さんはお店の現状には満足していないものの、好きという感情があるため、それが物事の進歩に繋がっていると教えて下さいました。美味しい料理を食べる事も好きですが、決してそのためではなく、物事を極めるために努力を続けているそうです。
▲全ての料理が李灑生さん自慢料理です。
豚足と瓦罐湯(ワーグァンタン)を煮込む
李さんが初めて買ったのは300ページくらいのレシピでしたが、すでに何度も読まれて表紙やページが落ちています。この本は広東料理、北京料理、福建料理、江蘇・浙江料理と四川料理を含んだ簡易レシピですが、これこそが料理の原点であり料理に関する知識の基礎となっています。
お店の看板料理である豚足は、試行錯誤を重ねたオリジナルレシピで、ポイントは運動量の多い前足を選ぶことです。また、豚足をソースに漬けて煮込み、さらにソースに一晩浸し、再びとろ火でじっくり焼きます。こうすることで豚足には味が染み込み、食感、脂身の少なさ、赤身の柔らかさを併せ持った一品になります。しかし、秘伝のソースは20種余りの漢薬や料理酒、紹興酒、サトウキビの根、自家製キャラメルなどの10数種類の材料を加えるといった複雑なものです。ご家族でさえソースを作る時は計量カップや計量台ばかりを使って慎重に調整をしています。
瓦罐湯というスープは材料を全て李灑生さん自ら調整していて、そのために毎日10杯以上のスープを飲んで割合を決めています。このスープには二つの秘訣があり、一つ陶器の釜を使って2種類の肉を煮込むことで、鶏肉と排骨を使うと味に深みもでます。もう一つは、一般的には木炭を使って強火で2、3時間煮込むのに対し、李さんは過去に温度調節器を作った経験を生かして、ガスの火力コントローラを改良し、長時間一定温度で煮込めるようにしました。これによってお肉が非常に柔らかく美味しく仕上がります。
李灑生さんが作る料理は全て「自ら食べる」という考えから始まっています。そのため、家族のために豚足を煮込み、体を養生するために漢方のスープを研究しました。つまり、自らが満足、安心、好きになってからお客さんに提供しています。こうした精神こそが厨房で働き始めて数十年になる李灑生さんの最大の自慢です。
▲豚足は手間ひまと時間をかけることで美味しく仕上がります。瓦罐で作る料理は煮込むことで、美味しくて柔らかく仕上がります。
好年年豬腳(ハオニェンニェンジュージャオ)
台北市万華区西園路一段314之1号
06:30—20:30|日曜定休
ひたすら煮込む 80年代のファーストフード店のスタイル
ひとつの事を極める―好年年豬腳
文= 諶淑婷
編集= 下山敬之
写真= 台北市観光伝播局
好きこそものの上手なれ
「好年年豬腳」(ハオニェンニェンジュージャオ)の慌ただしい店内で、80歳になる李灑生(リーサーション)さんがスタッフと協力して豚足とスープの包装をしています。出前用と宅配用の出荷があり、この作業を何十年にも渡って続けてきました。数日後には出荷された豚足とスープがお客さんの元に届き、解凍、加熱されて食卓を囲む人に満足を届けています。
1939年に生まれた李灑生さんは、7歳のときに第二次世界大戦が終わり、小学校の教育を受けられるようになりました。その後も中学卒業後に銀行へ勤務するなど輝いていた時代だそうです。それから5年後には父親のアルミ鍋工場の管理をする道に進み、そこでアルミ鍋の温度調節器を製造しました。そして、料理時鍋の温度の重要性をより深く理解するために再度勉強を始めました。ひたすらレシピを読み漁り、これまで触れたことがなかったの調理道具と調理料について知ると、招かれるように台所の中へと足を踏み入れました。
気がつくと李灑生さんの料理の腕前は奥さんを追い越し、家庭内のシェフになりました。
こんな経緯がありながらも、ファーストフード店を開くことになったのは全くの偶然でした。1976年、李灑生さんの工場の商売はすでに軌道に乗っていて、当時台湾の経済も急速に成長していました。そして副業を始める機会が訪れると、小学校の同級生と共同運営で鶏ももご飯や排骨飯といったファーストフードの販売を始めました。この投資は大きな成功を収め、1年後にはお店を2階まで拡張するに至ります。しかし、10年が経過し友人が事業から手を引いたのをきっかけに、改めて「好年年快餐店(ハオニェンニェンクァイツァンディェン)」をオープンさせます。
1996年、58歳になった李灑生さんは遂に自らお店の店主になることを決めます。それから10年後、お店は万華西園路の自宅に引っ越し、自身が最も誇る豚足料理と養生スープを目玉商品としました。
最初はただの投資でしたが、最終的には自らも参加する形で発展し、管理や計画から料理の開発まで全てを自身で行うようになりました。また、豚足をメイン料理にする前にリサーチとして台北で全ての豚足を販売するレストランを回りました。そして、豚足が他には代えられない台湾のソウルフードでありながら、調理には手間も多く、その割に必ずおいしくなるとは限らないということに気づきました。
あるお客さんは「好年年」には80年代のファーストフード店の懐かしさがあり、それは店主李さんが「何かを始めたら、極めるまでやる」昔ながらの気質を持っているからであると話します。他にも李さんの料理に対する慎重な態度が心地良い食事環境に反映されています。台北万華区は老舗のお店が多い場所ですが、それでも100台湾元ぐらいの安っぽいテーブルクロスを使うお店はありません。しかし、「好年年」ではそれを使っていますが、トイレを含めて一切文句がないと店内の清潔さは高評価を得ています。これらは李さんにとっては当たり前で、特別気にかけることではないそうです。80歳となり、いつか終わりが来ることを意識しながらも、終着駅に到着するまでは寝ても覚めてもよりおいしい料理を追求し続けるそうです。
また、李灑生さんはお店の現状には満足していないものの、好きという感情があるため、それが物事の進歩に繋がっていると教えて下さいました。美味しい料理を食べる事も好きですが、決してそのためではなく、物事を極めるために努力を続けているそうです。
豚足と瓦罐湯(ワーグァンタン)を煮込む
李さんが初めて買ったのは300ページくらいのレシピでしたが、すでに何度も読まれて表紙やページが落ちています。この本は広東料理、北京料理、福建料理、江蘇・浙江料理と四川料理を含んだ簡易レシピですが、これこそが料理の原点であり料理に関する知識の基礎となっています。
お店の看板料理である豚足は、試行錯誤を重ねたオリジナルレシピで、ポイントは運動量の多い前足を選ぶことです。また、豚足をソースに漬けて煮込み、さらにソースに一晩浸し、再びとろ火でじっくり焼きます。こうすることで豚足には味が染み込み、食感、脂身の少なさ、赤身の柔らかさを併せ持った一品になります。しかし、秘伝のソースは20種余りの漢薬や料理酒、紹興酒、サトウキビの根、自家製キャラメルなどの10数種類の材料を加えるといった複雑なものです。ご家族でさえソースを作る時は計量カップや計量台ばかりを使って慎重に調整をしています。
瓦罐湯というスープは材料を全て李灑生さん自ら調整していて、そのために毎日10杯以上のスープを飲んで割合を決めています。このスープには二つの秘訣があり、一つ陶器の釜を使って2種類の肉を煮込むことで、鶏肉と排骨を使うと味に深みもでます。もう一つは、一般的には木炭を使って強火で2、3時間煮込むのに対し、李さんは過去に温度調節器を作った経験を生かして、ガスの火力コントローラを改良し、長時間一定温度で煮込めるようにしました。これによってお肉が非常に柔らかく美味しく仕上がります。
李灑生さんが作る料理は全て「自ら食べる」という考えから始まっています。そのため、家族のために豚足を煮込み、体を養生するために漢方のスープを研究しました。つまり、自らが満足、安心、好きになってからお客さんに提供しています。こうした精神こそが厨房で働き始めて数十年になる李灑生さんの最大の自慢です。
好年年豬腳(ハオニェンニェンジュージャオ)
台北市万華区西園路一段314之1号
06:30—20:30|日曜定休
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