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メジャーを目指して:台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy (TAIPEI Quarterly 2019 秋季号 Vol.17)

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発表日:2019-08-26

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TAIPEI #17 (2019 秋季号)

メジャーを目指して:
台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy



文=Adam Hopkins
編集=下山敬之
写真=Debby Wang, Boyz In The Hood

 


毎年多くの外国人が台北へ移り住んでいますが、その理由はそれぞれ異なります。ただ、動機は違っても移住してきた人たちは皆、台北での生活に馴染み、新しい生活を始めていかなければなりません。スペインから来た35歳のクリシュナ•パラシオ(Krishna Palacio)さんは、ブレイクダンス(Break Dance)への熱い思いが文化の違いを乗り越えさせてくれたと話します。
TAIPEI 秋季号 2019 Vol.17--メジャーを目指して:台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy▲台北に住んで3年になるスペイン出身のB-boyクリシュナさんは、台湾のブレイクダンスを熟知しています。

台北のストリートダンス界へ参加
クリシュナさんは台北のストリートダンスは非常に活発で、他のサブカルチャーも日々活気を帯びてきていると感じています。そんな彼はもともとマドリード出身で、3年ほど前から台北に住んでいます。ダンスは16歳から始め、ステップに重点を置いたフットワーク中心のスタイルを得意としています。

「移住したばかりの頃は台北のストリートダンスがどういうものかわかりませんでしたが、ブレイクダンスの世界はそれほど大きくないので、実際に参加するようになっても困るようなことは一つもありませんでした。また、この数年間ブレイクダンスは非常に人気を集めているので、コミュニティに参加すればすぐにたくさんの知り合いができます」とクリシュナさんは話します。

日常生活と同じくブレイクダンスの世界でも出会いが重要です。クリシュナさんもまたフィリピン人のB-boy仲間を通じてたくさんのダンサーと知り合い、それがきっかけで台北のブレイクダンス界に足を踏み入れました。移住後は台北のダンサーたちに迎えられて一緒に練習をするようになり、そこでできた友人を介してイベントにも参加するようになりました。こうした経緯で台北でのダンサー生活が幕を開けました。
TAIPEI 秋季号 2019 Vol.17--メジャーを目指して:台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy
ダンスに夢中な男の台
クリシュナさんは、少なくとも週2回は練習を行い、週末には台北で開催されるダンスバトル、サイファーやジャムなどに参加します。もともとダンスバトルが好きでしたが、台北に来てから他のダンサーと即興で踊ることが好きになり、ダンサーたちが円を作って自由に踊るサイファー(cypher)に参加するようになりました。ダンサーとの交流を通じ、様々なことを学ぶことが台北でダンスをする楽しみの一つだそうで、「一番面白いのは他の人と談笑したり、他のダンサーたちが何をするかを見ることです」と彼は話します。

台北のブレイクダンスはテクニカルな技を練習する人が多く、若いダンサーは特に体操競技のような難易度の高いダイナミックな技に挑戦する傾向があるそうです。クリシュナさんにとってはこうした技の練習よりも、人とのコミュニケーションの方が問題だそうです。ただ、流暢に中国語で会話ができなくてもダンスがコミュニケーションツールになっているそうで、「ありきたりな言葉ですが、ボディランゲージこそが最高の言語です」と彼は笑って話します。TAIPEI 秋季号 2019 Vol.17--メジャーを目指して:台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy▲クリシュナさんはフットワークのスペシャリストです。

サブからメジャーカルチャーへ
クリシュナさんは「台北で友人たちと一緒に練習することで、私のダンサーとしての人生に豊かさを感じています」と話します。ブレイクダンスはスペイン、日本、台湾など場所を問わず、その地域や国の文化背景に影響を受けています。彼はそうした様々なダンス環境を体験することでたくさんのことが学べるそうです。また、台北のブレイクダンスはヨーロッパに比べると非常にメジャーと教えてくれました。ブレイクダンス自体はまだサブカルチャーの域を出ませんが、台北の各高校にはダンス部があり、様々なスタイルが練習されているほど若者に高い人気があります。それに対してスペインやクリシュナさんが以前住んでいたロンドンでは参加している人が少なく、メジャーとは言えないそうです。TAIPEI 秋季号 2019 Vol.17--メジャーを目指して:台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy
「台北のB-boyの多くはプロのダンサーとして生計を立てています。台北にはたくさんのダンススクールがあり、彼らは非常に熱心にダンスの指導をしています」と彼は言います。驚くべきことですが、確かに台北のアーティスティックな活動は人気が高いことから、ダンサーたちが熱心に授業をしたり、プロの道を歩むのもうなずけます。

また、クリシュナさんは情熱を持った人たちにダンスの技を教えることが好きで、現在はお金を取らずに無料でダンスの指導をしています。彼にとっては非常にやりがいがあり、お金以上に様々なものを得ているそうです。現在の仕事はボードゲームの開発ですが、こちらもブレイクダンスとは異なる表現をするので楽しみながら取り組んでいて、「これもまた一つの創造です」と笑いながら話していました。また、プロではないダンサーたちも様々な職業や異なるヒップホップの趣味を持った人がいます。例えば彼の友人のプログラマーはスペインのダンスサークルに所属しています。他にも弁護士や歯科医など様々な人たちがブレイクダンスをしているそうです。TAIPEI 秋季号 2019 Vol.17--メジャーを目指して:台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy
台北はブレイクダンスやストリートダンスに非常に適していて、公園や公共の広場などに行くと踊っている人をよく見かけます。クリシュナさんも「台北はどこでも踊ることができるので、場所に困ることはありません」と話しています。彼がよく練習をしている場所は西門町(シーメンディン)にある台北シネマパークで、そこには壁一面に描かれたウォールアートや路上の落書き、スケートボードで遊ぶ人などブレイクダンスに適した雰囲気があります。また、あまり一般的ではなく知る人ぞ知るという場所で、傍目にはわからない様々なサブカルチャーが隠れています。ブレイクダンスにも似たエッジの効いた場所ですが、基本的に誰でも参加できます。TAIPEI 秋季号 2019 Vol.17--メジャーを目指して:台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy▲クリシュナさんは台北のブレイクダンスが非常にメジャーと思って、自由に街中にダンスすることもできます。

ブレイクダンスの普及目指すダンサーたち
台北のブレイクダンス界で有名な人はと尋ねるとクリシュナさんは「Boyz In The Hood」の名を挙げました。志を同じくするダンサーたちが集まって作られたダンスグループで、彼らはよく台北でジャムイベントを主催したり、授業を行うなどして台北のブレイクダンス界を盛り上げています。他にもBojinというダンサーは、ダンス教室の経営をしながらブレイクダンスとヒップホップ文化を多くの台湾人やネパールなどの発展途上国にまで広めようと努力しています。クリシュナさんはこうした台湾の友人たちを支えながら、ブレイクダンスがメジャーカルチャーとなり多くの人を魅了する日を楽しみにしています。

台北においてブレイクダンスは高い人気を誇りますが、関連イベントなどの宣伝はあまりされていません。なぜならイベントを探すのに最も有効なツールはFacebookだからで、クリシュナさんも「Facebook上で検索すればすぐに見つかります」と話します。また、今年開催されるイベントの中でも特に注目すべきは、10月11日から12日にかけて公館水岸広場で開催されるBoyz In The Hoodの10周年記念イベントです。1対1のダンスバトルやチーム戦などの演目が用意されていて、クリシュナさんも参加します。
TAIPEI 秋季号 2019 Vol.17--メジャーを目指して:台北のヒップホップダンスを支えるスペイン人B-boy▲Boys In The Hoodなど数多くのプロダンサーがストリートダンス関連のイベントを主催しています。(写真/Boyz In The Hood)

台北のストリートダンスの未来
台北はエネルギッシュで活力に満ちた都市ですが、クリシュナさんは健康的で長命なダンサー人生を送りたいと考えているそうで、「ダンスを始めて18年になりますが、踊れなくなるまで踊りたいです」と話します。こうした長期的な展望を叶えるためにも今後10年、もしくはもっと長い期間に渡り、自身が台北ブレイクダンス界の柱になろうと考えています。現在のブレイクダンスが台北の若者たちに支持されているように、今後の10年はより大きな発展をしていくとクリシュナさんは確信しています。

台湾におけるブレイクダンスは他の地域に比べてすでに大規模ですが、人口比率的にもブレイクダンスに理解を示す人や積極的に参加する人の数が多いことから、今後ますます発展することは疑う余地もありません。「台湾はあちこちにダンサーがいて、多くの人がダンスという専門性の高い仕事で生計を立てています。また、台湾人のブレイクダンスに対する認知度も非常に高いです」とクリシュナさんは言います。ヨーロッパやアメリカに比べると台北は小さく、参加したいという気持ちさえあればすぐにその輪に加わることができるので、どんどん規模が拡大していきます。

メジャーとサブカルチャーの間を走り、小さいようでいて巨大な規模を持つ台湾のブレイクダンス界はその勢いを増し続けています。その勢いはいつの日か台北と世界、さらにはダンスと文化を繋ぐ架け橋になるかもしれません。一部では2024年にパリで開催されるオリンピックの正式種目としてブレイクダンスが選ばれると噂されています。ある日、台北のダンサーがオリンピックの舞台で熱いダンスを披露し、私たちを楽しませてくれることでしょう。

Boyz In The Hood
https://www.facebook.com/bzhdtw/

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