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小道の良さを知る:Flaneurを通して見る台北 (TAIPEI Quarterly 2019 秋季号 Vol.17)

アンカーポイント

発表日:2019-09-18

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TAIPEI #17 (2019 秋季号)

小道の良さを知る Flaneurを通して見る台北


文=Adam Hopkins 編集=下山敬之 写真=Tomáš Benedikovic, Flaneur, Taiwan Scene


一本の小道を知ると町全体がわかります。このことを誰よりも理解している人は、雑誌Flaneur(フランノイル)の編集長ファビアン・サウール(Fabian Saul)さんです。2013年にベルリンで創刊されたインディペンデント紙のFlaneurは、一本の小道が持つ複数の面や複雑性、断片などの魅力を伝えるアート雑誌です。この雑誌は協調性があり衝動的なものだと型破りな雑誌、サウールさんは話します。Flaneurは様々な分野のアーティストと協力し、小道という小さな世界を普遍的に語っています。今回、本誌はサウールさんが研究をしている台北の宝蔵巌国際芸術村(バオザンイェングオジーイーシューツン)と発売間近のFlaneur最新号についてお話を伺いました。
▲8冊目となるFlaneurのテーマは台北で、海外の読者に向けて台北の特徴が紹介されています。(写真/Flaneur)

T:どういった経緯でFlaneurを創刊されたのですか?
F:Flaneurの創刊は6年前に行われた共同プロジェクトがきっかけで、最初はベルリンにある一本の小道に関する記事を執筆しました。その小道は私たちも馴染みのない町の一角にあり、まるで別の町のように感じました。私たちは執筆のためにそこを探索すると、地元の人たちが幼少期に通った道があり、そこを歩くことは彼らの記憶を辿ることを意味していました。そこから他の分野のアーティストたちを誘うことを決め、彼らの異なる観点を取り入れました。過去にはライプツィヒ、モントリオール、ローマ、アテネ、モスクワ、サンパウロ、そして台北の小道を巡っています。
▲雑誌Flaneurの編集長を務めるFabianSaulさん。(写真/Tomáš Benedikovic)

T:Flaneurのコンセプトを教えてください。
F:私たちは歴史性や社会性、芸術的な美しさが積み重なった場所に興味があり、机上で考え事をするよりも実際にその場へ行き、発見することが好きです。数か月かけて各地を回り、協力してくれるアーティストと関係を築き、その道の「個々の良さ」と「包括的な良さ」を提起していきます。こうした活動は地域社会やその地域の語り手と強いつながりを持つことがあります。

Flaneurは読者に素晴らしいスポットや景色を紹介する旅行雑誌ではありません。町を歩き、小道の隠れた良さやストーリーなど目には見えない面を発見し、読者に紹介しています。

T:8冊目の「Issue 8」ではなぜ台北をテーマに選んだのですか?
F:台北はもともと興味のある場所の一つでした。テーマを選ぶ際には縁を大事にしていますが、今回は宝蔵巌国際芸術村からお誘いを頂きました。

T:読者の方たちにどのように台北を紹介しますか?
F:海外の読者の大半は、台北がどのような場所か予想できないと思います。台北がアジアで最も進歩している都市の一つであっても、ある場所では地図にさえ載らないからです。なので、台湾の素晴らしい協力者たちとともにこのプロジェクトを通じて台北の持つ魅力を紹介できればと考えています。

T:台北に対する印象はどうでしたか?実際に来て印象は変わりましたか?
F:台北のイメージといえば台北101でしたが、それだけでは台北の都市構造を正しく理解しているとは言えません。台北の中でも特に歴史が長いことで知られる万華(ワンホウ)区で時間を過ごすと、時代を感じさせるものがたくさんあり、その独自の発展期を遡ることができます。万華区の北部には日本統治時代の都市計画の名残である碁盤目状の通り、南部にはより系統的に発展した小さな路地と寺廟が残っていて、台湾内部と東南アジアからこの地に流入してきた文化の多様性を感じさせます。

T:台北に住むアーティストとして経験したことを教えてください。
F:宝蔵巌国際芸術村は台北での活動の起点となり、この都市とのつながりを作ってくれました。また、この場所は台北の様々な面を見ることができ、多くのインスピレーションを受けました。中でもこの場所を残すというアーティストの役割は知っておく必要があります。この場所は高級化が進み廃墟になりかけたことで芸術村が作られましたが、今では芸術村があることで、都市の開拓から免れています。他にもこの場所は台北における水インフラの基盤で、私たちが台北の川沿いを知るきっかけになりました。
▲宝蔵巌国際芸術村は眷村文化や特殊な景観が残っていて、多くの観光客が訪れています。

T:台北の芸術分野における環境はベルリンや他の主要都市とどう違いますか?
F:台北は芸術分野における相関性が非常に強いです。私たちは台北に来てから異なる分野、社会性、年齢のグループを包括するネットワークを作り始めました。こうした密度が濃く、多様な分野が混在するネットワークは、ベルリンのような大規模で、多様な文化背景が混ざった場所では形成が困難です。台北はこうした心地よい雰囲気もあって早く馴染むことができました。

T:旧市街の万華区を研究の対象に選ばれましたが、この地域についてどう思われますか?
F:万華区はこの街と水を結びつけていて、新店溪(シンディエンシー)という川も万華区の西側から流れて山々を縁取ります。そして海へ流れ込む前に淡水河に繋がり、過去には重要な貿易拠点の一つとなりました。今の万華区は台北の端っこという印象ですが、康定路(カンディンルー)や萬大路(ワンダールー)を歩くと万華区にある道の多くの方面が台北への入り口になっていることがわかります。この地域は目に見えない様々なものを提供していて、徐々に都市化が進んでいます。万華区を語ることは台北から消えようとしている場所について語ることと同義です。こうした話は過去から続いていますが、現在や未来で確実に現実化していきます。
▲万華区にある康定路はFabianさんが研究の対象として選んだ道の一つです。

T:初めて台北旅行をする人におすすめの場所を3つ教えてください。また、台北の芸術に触れるにはどうするのがおすすめですか?
F:台北の中心部と対象的な大佳河濱(ダージャーフービン)公園に夕方に行くことがおすすめです。ここに来ることで広い視野で物事を捉えることができます。また、MRT龍山寺駅や艋舺エリアの小規模な夜市や南機場夜市(ナンジーチャンイェシー)はこの地域の文化や経済構造を知る上で欠かせないスポットです。
▲南機場夜市は万華区にある地元の夜市です。

また、台北の芸術は一つの団体が作るのではなく、都市に住む人たちが共同で作り上げています。そのことをより深く理解するには台北のアーケードを歩いてみることです。天気が悪くなければ台北は非常に歩きやすく、散策をすることでたくさんの魅力的な場所や芸術的なものを見つけることができます。

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