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台北の音楽を感じる 五つのスポット (TAIPEI Quarterly 2019 秋季号 Vol.17)

アンカーポイント

発表日:2019-09-18

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TAIPEI #17 (2019 秋季号)


台北の音楽を感じる 五つのスポット

文= Joe Henley 編集= 下山敬之 写真= 河岸留言,女巫店, The Wall, Revolver, Legacy, Bill Hamway, TS


音楽の中には各都市の独特な文化や特徴が反映されています。そのため、その都市に音楽やアーティストを育む環境的要素がなければ無味乾燥なものしか生まれなくなります。例えばボブディラ(Bob Dylan)の曲を聞けばニューヨークの黄金時代を思い浮かべ、スキッド・ロウ(Skid Row) のアルバムを聞けば彼が自由気ままに過ごしていた若かりし頃が思い浮かびます。台湾も董事長樂團(ドンシュージャンユェトゥアン)の曲を聞くと、彼らが師大路(シーダールー)にあったライブハウス地下社會(ディーシャーシャーホイ)で歌っていた頃の情景が浮かびます。

一昔前、台北のライブハウスにはコピーバンドが溢れていました。しかし、1970年後半になると校園民歌(こんえんかきょく)という台湾人の民族意識をわき起こす音楽ジャンルが流行し、それまでの西洋音楽から一変し台湾独自の音楽が主流となりました。 1987年に戒厳令が解かれたことで、1990年代になると台湾の音楽や芸術分野は新たな幕を開けました。例えばSCUMというライブハウスは出演バンドに最低1曲はオリジナル曲を演奏するよう求めると、他のライブハウスも同様のルールを取り入れ始めました。また、音楽ジャンルもパンクやロック、メタルなど多様なスタイルが雨後の筍のように生まれ、創作の自由度も高くなりました。

それから数十年が経過した現在でも人々の音楽に対する情熱は変わらず、ライブハウスで様々な楽曲が演奏されています。そんな台北のライブハウスは大小様々で、それぞれに個性があり、毎晩素晴らしい音楽を提供してくれます。


西門河岸留言&公館河岸留言(シーメンフーアンリョウイェン&ゴングァンフーアンリョウイェン)
公館にある台湾大学付近で2000年にオープンしたのが河岸留言というライブハウスです。当初は出演バンドのオーディションを行い、実力が認められなければステージに立てませんでした。こうした基準を設けることで若者たちは出演をするために毎日練習を頑張るようになりました。それから月日は流れ、現在ではオルタナティブやインディーズバンドなどの受け皿となっていて、毎週月曜の夜には誰でもステージに立てるオープンジャムナイトが開催されています。
(写真/TS)

2008年には西門町(シーメンディン)にあるレンガ造りの紅樓(ホンロウ)に支店ができました。公館支店よりも規模が大きく収容人数は最大で650人、台湾で主流なロックの雰囲気に合わせて機材の調整や演出が可能なことから国際コンサートホール以上に柔軟な対応ができると言われています。また、紅樓周辺はLGBTQの人たちに友好的な場所で、LGBTQ文化やインディー、特色のあるバーは台北に多様な文化をもたらしています。
(写真/河岸留言)
▲ 河岸留言は完璧な設備を提供し、音楽が好きな人たちを楽しませています。(写真/河岸留言)

西門河岸留言(シーメンフーアンリョウイェン)
台北市万華区西寧南路177号
営業時間はライブ日程によって違います。

公館河岸留言(ゴングァンフーアンリョウイェン)
台北市中正区羅斯福路三段244巷2号
19:00–00:30


女巫店(ニューウーディエン)
前述した地下社會は2013年に営業を終了しましたが、この場所はニューヨークにおけるCBGBと同じくインディーミュージックの聖地とも呼べる場所でした。現在、その役割は女巫店というライブハウスが担っています。ここは1996年にSCUMの後を引き継ぐ形でオープンしました。当初はロックやメタルが中心でしたが、そこからアンプラグドやインディーバンド、フォークバンドなども参入するようになっていきます。数多くのミュージシャンがこの場所で演奏を行ったことから、現在では台湾のインディーミュージックを代表する場所となっています。(写真/女巫店)

また、ここは女性アーティストを積極的に支持しているという特徴があります。2階にある本屋「女書店(ニューシューディエン)」は台北におけるフェミニズム発祥の地とも呼ばれていて、女性の自由を広めようと力を尽くしています。店内の装飾には女性解放を象徴する目的で女性の下着が使用されています。以前は女性アーティストが立てるステージが少なかったことから女性に表現の場を提供し、結果的として陳綺貞(チェンチージェン)、陳珊妮(チェンシャンニー)、安溥(アンプー)といった台湾やアジアで活躍する女性アーティストが誕生しました。
(写真/女巫店)

2011年に入ると女巫店は地下社會と同様に都市開発計画によって閉鎖の危機に陥りましたが、率先してフェミニズムなどの新しい思想や音楽を取り入れていたことで閉鎖を免れました。次の世代も同様にこの場所で女性ミュージシャンの歌を聞くことができます。
▲ 女巫店は女性アーティストが自由に表現できる場を提供していて、台湾の有名な女性アーティストの多くはかつてここで演奏をしていました。(写真/女巫店)

女巫店(ニューウーディエン)
台北市大安区新生南路三段56巷7号
日-水10:00-23:00|木-土10:00-00:00


THE WALL (サ•ウォール)
The Wallは2003年にオープンしたライブハウスで、メタルバンド閃靈樂團(ソニック)のボーカルフレディリン(Freddy Lim)と董事長樂團のボーカル阿吉(アージー)の2人によって発展しました。彼らはThe Wallの運営をすると決めた際、様々なジャンルの音楽が演奏され、あらゆるバンドがオリジナルの曲を発表できる自由な場所を作りたいという理念がありました。 2000年代半ば、The WallはFreddyや阿吉と同じくロックやメタルを愛する若いバンドマンたちの憧れの場所でした。また、Bay Area Thrashers ExodusやCannibal Corpseのような世界を代表するメタルバンドが台北初ライブを行ったり、収容人数600人のライブハウスがNew York Magazineが選ぶ台北の10大観光スポットとして紹介されるほど注目を集めました。当時は入り口の螺旋階段を下りれば、一晩中台北のリアルなロックが楽しめる空間でした。(写真/The Wall)

それから数年が経過し、The Wallの経営権はいくつかの人たちの手を巡ることになります。ただ、台湾のロックは依然として高い人気があり、現在でも海外のバンドの演奏を見ようとライブハウスの外に長い行列ができます。また、若いバンドマンたちも変わらずにステージに立つことを夢見ているので、かつて様々な有名バンドが演奏をしてきたように、今後も途切れることなく様々な音楽が響き続けるでしょう。▲ The Wall は世界各地のロックファンが訪れ、台北のロック魂を体験しています。(写真/The Wall)

THE WALL (サ•ウォール)
台北市文山区羅斯福路四段200号
水20:00-00:00|木-土19:00-03:00|日19:00-00:00|月火定休


REVOLVER (リボルバー)
様々なジャンルの音楽が混ざり合う中心的なライブハウスはどこかと聞かれれば、Revolver以外に考えられません。ここは中正紀念堂(ジョンジャンジーニェンタン)の近くにある2階建ての施設で、1階にはバーがあり、2階にはステージがあります。2010年に2人のイギリス人によって設立されたこの場所は、週7日毎晩ライブが行われています。音楽のジャンルもロックをはじめ、メタル、パンク、ヒップホップ、エレクトロニック、エクスペリメンタルなど幅広く演奏されているのが特徴です。初期の地下社會と同じく、年齢や経験に関わらず自由な表現ができることから、この場所は台北の新しい音楽が発見できる場所とも言えます。(写真/Revolver)

1階部分の内装は特に決まったテーマなどがなく、様々なアート作品を用いることで、音楽のスタイルにも縛りがないことを表しています。そのため、店内のBGMもDavid BowieやJimi HendrixといったロックからCarcass、Napalm Deathのメタルなど様々な音楽が流れています。また、バーの後ろには「No Coldplay」という表示があり、これはこの場所が単純に流行を追いかける場所ではなく、新しいインディーミュージックを推奨する場であることを示しています。(写真/Revolver)

2階のステージは100人ほど収容可能で、ここが満員になるときは新気鋭のアーティストが誕生する瞬間でもあります。世界にはたくさんの小型ライブハウスがありますが、どこも音響設備の問題に悩まされています。しかし、RevolverにはハイクオリティなPAシステムと強固な設備機器があり、それを専門の音響スタッフが毎晩完璧に操作することで、スムーズに演奏が進行していきます。また、ここは数少ない外国人と台湾人が交流できる場所でもあり、ここに集まった各国の音楽好きたちが台北に様々な音楽を持ち込んでいます。
▲ Revolverは週7日ずっとライブを行っていて、観光客も1階のバーを訪れます。(写真/Revolver)

REVOLVER(リボルバー)
台北市中正区羅斯福路一段1-2号
月-木18:30-03:00|金-土18:30-04:00|日18:30-01:00


LEGACY (レガシー)
台北では長い間、中型のライブハウスがなかったことから、ある程度有名な海外アーティストが台北でライブをする際には、年季の入ったコンサートホールや学校の体育館を借りるしかありませんでした。しかし、こうした場所の収容力は千人ほどで、本格的なアジアツアーをするような規模アーティストには適しません。それから2009年になり、台北の華山1914文化創意產業園区にLegacyがオープンしたことで、大小どちらの規模でもライブやコンサートが行えるようになりました。(写真/Legacy)

過去数年にわたり、Legacyは1,200人ほどを収容できるライブハウスとしてニュートラル・ミルク・ホテル(Neutral Milk Hotel)、ジーザス&メリーチェイン(The Jesus and Mary Chain)、ノーウェイヴというジャンルで有名なSwansといった国際的なバンドを迎えてきました。ここはかつて倉庫として利用されていた場所で、大きな敷地と外壁に植物のツタが這う独特の外観を持ったライブハウスです。また、設備面も充実していることからハイレベルなアーティストを台北に惹き付ける場所となっています。(写真/Legacy)

現在の台北はライブが楽しめる最高の時期を迎えているといっても過言ではありません。音楽業界はアーティストたちの心の機微や気持ちの浮き沈みによって新たな音楽が生み出され発展してきましたが、台北は新しいアーティストを育てる家とも呼べる場所があり、それが都市の発展と進化にもつながっています。こうした環境で生まれる音楽をぜひ聞いてみて下さい。
▲ Legacyは1,200人収容が可能で、数多くの海外アーティストがライブを行っています。(写真/Legacy)

LEGACY
台北市中正区八德路一段1号(華山1914文化創意產業園区中5A館)
営業時間はライブ日程によって違います。

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