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受け継ぐ赤いひょうたん5代に渡る瑞成の物語 (TAIPEI Quarterly 2019 冬季号 Vol.18)

アンカーポイント

発表日:2019-12-12

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TAIPEI #18 (2019 冬季号)

受け継ぐ赤いひょうたん5代に渡る瑞成の物語

文=陳宛妤 編集=下山敬之 写真=Marianne Krohn,王漢順、MyTaiwanTour


士林夜市(シーリンイェシー)の一角、大東路(ダードンルー)にあるお店は、ほとんどが日中の時間帯は開いていません。そんな中で、「嫁妝」と書かれた看板を掲げる「瑞成手工棉被店(ルェイチェンショウゴンミエンベイディエン)」にはすでにお客さんが訪れています。路地にひっそりとたたずむこのお店は130年続く老舗の布団屋さんです。

話題沸騰 手作り布団
このお店の5代目店主となる張寶仁(ジャンバオレン)さんは、小学生の頃から布団屋と工場を手伝っており、キャリアも40年になることから布団業界のオブザーバーと言えます。創業史を紐解くと、瑞成は130年前に桃園市大園郷(タオユェンダーユェンシャン)で始まったとされています。昔は腕のいい職人からしか布団を買わなかったため、自ら生産した布団には商標として赤いひょうたんの刺繍を入れて区別していました。その後、大園の実家が火事に遭ったため、3代目の李火琳(リーフオリン)さんは台北で生活することを決めました。3代目の商売は正直でユーモアもあったことから、士林や陽明山の年配の人が布団のことを話す時は、必ずひょうたんの商標が目印の李火琳さんを思い浮かべたほどです。▲張寶仁夫妻が経営する老舗の布団屋さんは、口コミによって好調な業績を維持しています。  

張寶仁さんが言うには、布団を手作りしていた時代は、布団の綿が湿気に弱いことから、使用する綿の量を決めたら全てその日のうちに仕上げ、空気に触れて結露するのを防いでいたそうです。布団職人は一つの仕事に数時間を要する上に、綿を打つ道具を常に背負っていたので、とても骨の折れる作業でした。また、一般的に冬用の布団は夏と秋に生産が集中することから綿の繊維が大量に舞い、それが呼吸器に大きな負荷をかけます。つまり、手作りの布団は一枚一枚が職人達の血と汗の結晶なのです。こうした努力によって生み出された綿100%の布団は、硬くなったり丸くなりにくく、いつでも気持ちの良い状態で使うことができます。

「農業中心の時代、人々の生活は質素でしたが、その中でも布団は質に入れられるほど価値のあるものでした。それから工業中心の時代になると経済が飛躍し、大人や子供問わず布団の需要が拡大し販売量も急速に増加しました。」と張寶仁さんは話します。また、当時のご両親と共同経営していた輝かしい日々について、1970年代は台湾経済が徐々に好調になった時代で、加えて結婚する際には必ず新しい布団を買うという伝統的な慣習もあったことから瑞成は正統な手作り布団専門店の代名詞となり、1977年は売上がピークに達したと話してくれました。

当時は産業が栄えた時代で、毎日10人の職人が手作りで30枚近い布団を作り出していたとお母様から聞かされたそうです。1枚6kの布団の価格は800元に達し、これは当時の一般人の給与の半月分に相当しました。▲瑞成は手作り布団だけでなく、流行りの羽毛布団や羊毛布団も売っています。(写真/MyTaiwanTour)

ネットの普及 老舗の再起
伝統産業の繁栄は長くは続きませんでしたが、20数年前に張寶仁さんが経営を引き継いだ際に変革を求められます。瑞成は1987年に従来の自社製造・自社販売というスタイルを打ち 崩し、学生のニーズに合わせて安価な化学繊維の布団を売り始めました。そして同時に流行りの羽毛布団やウール布団等の製品も導入し、夜市での低価格帯での販売、たたき売りといった戦略も取り入れることで、次第に売上が復調し始めました。

「現在、手作り布団の売上は全体のわずか1⁄10で、後から販売を始めた寝具とインテリア雑貨の方が主力商品になりつつあります。」と張寶仁さんは話します。続けて「2002年に台湾がWTOに加盟した後に大打撃を受け、その後もスマートフォンが普及したことで買い物が便利になりましたが、インターネット上で価格を比較されるようになり、実店舗での販売は落ち込みました。」と教えてくれました。しかし、このような苦境に立たされながらも百年続く老舗を存続させるために、こうしたトレンドを活用し、インターネット上にもう一つのマーケティングのパイプを作りました。▲赤いひょうたんの刺繍は、5代続く瑞成のトレードマークです。

「もともとはホームページとFacebookページしかありませんでしたが、知名度を上げるために自主的にインターネット上でユーザーの質問に答えました。」現在、消費者は粗悪品を買わされることを嫌がります。そのため、先にインターネットでメーカーの口コミを見て、電話で問い合わせをします。こうした努力もあり、現状の販売量の50%はインターネット経由でのオーダーとなっています。

手作り布団は昔のハイグレードで高価なものから、簡単に手に入れられる必需品になりました。今日では様々な科学原料が世の中に溢れていますが、百年続く老舗の瑞成は常に天然でピュアな本質を大切にしながら台北の厳しい冬を過ごすための手助けをしています。

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