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台北にあるシックな子供服店:Ángeles Studio & Shop (TAIPEI Quarterly 2020 夏季号 Vol.20)

アンカーポイント

発表日:2020-06-15

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TAIPEI #20 (2020 夏季号)

台北にあるシックな子供服店:Ángeles Studio & Shop

文/ Rick Charette
編集/ 下山敬之
写真/ Yenyi Lin, 品墨良行, 楊艷萍, Taiwan Scene, MyTaiwanTour


今回紹介するのは10 代の頃の夢を忘れず、社会人になってからも情熱を燃やし続けた一人の女性、劉雨欣( リョウユーシン)さんの物語です。

Ángeles( 安荷童装) ブランドの誕生
劉さんは台湾での評価はもちろん、日本やヨーロッパなど海外でも人気の高い子供服デザイナーです。もともと2歳から12歳の女の子用の衣服を専門としていましたが、数年前から最も多く来店する母親層に向けて婦人服の販売も始めています。旗艦店兼工房のÁngeles は観光地として有名な台北の永康街に位置し、付近には飲食店やカフェ、茶屋、ブティックなどが立ち並んでいます。

劉さんは10代の頃から服作りを手掛けていましたが、兄の住むスペインのバルセロナ滞在中に初めてアートに触れ、強い衝撃を受けました。この時、自分のデザインした服はコストがかかり過ぎていると気が付いたそうです。「私は世界的なデザイナーの力で人気を得たハイエンドブランドは扱っていませんでしたが、アートに触れたことで顧客がなぜZARA のようなシックでいて、安価なブランドを求めるのかわかりました。」0417安荷童裝-029-Edited▲Ángeles のオーナーの劉さんは子供服の製作に携わることで子供の頃からの夢を少しだけ叶えました。

その後、台湾に帰国すると建築学を学び始めましたが、本格的に学ぶには時間がなく、さらに母親になったこともあってデザイナーとしての夢を実現できないと痛感します。それから自宅で子供服のデザインと製作を開始し、売上が軌道に乗った段階で自身の工房と店舗をオープンする決意をしました。「きっかけは元インテリアデザイナーの叔母が、永康商圏の静かな路地にヨーロッパ式のベーカリー「珠宝盒法式点心坊Boîte de Bijou」をオープンしたことでした。近隣に新しいブティックが多く出店していたことを受けて、私にも同じ場所でのオープンを勧めてくれました。」

そして、劉さんは2010 年に叔母のベーカリーの隣にÁngeles をオープンし、現在ではサブデザイナーを含め15名の従業員を抱えています。「店名のÁngeles は、無邪気さと純粋さこそが子供の特徴であり、私たちのデザインに対する考え方にも沿っていることから名付けられました。ただ、もっと言えばスペインにいた頃に、現地の人が私の英語名であるJoyce の発音が難しく、別にÁngeles というニックネームを考えたことにも由来しています。」0417安荷童裝-002-Edited▲Ángeles の入り口はオーナーの劉さんがデザインしたショーウィンドウがあり、多くのお客さんを惹きつけています。

試練と困難
劉さんは、スペインから帰国した際にとても大切なものを持ち帰ったと話します。「私が作る服はヨーロッパのスタイルが色濃く表れているので、『ヨーロッパ風ミニマリストの優雅さが漂うスタイル』とも言えます。」実際、装飾品は控えで、カットやラインをはっきり入れることが重視されています。「私は見栄えの良さにとらわれずに、上質な生地そのものの美しさを表現することを心がけています。色は基本的に1、2色しか使用しません。」その結果、視覚的には控えめなももの、大胆で印象に残るデザインに仕上がっています。0417安荷童裝-012-Edited▲美しくデザインされた店内には劉さんの「ヨーロッパ風ミニマリストの優雅さが漂うスタイル」という信念が体現されています。

このデザインは当初、ヨーロッパや日本を中心とした海外のバイヤーからは評価されたものの、台湾市場で展開するには問題がありました。「台湾の消費者は控えめで保守的なデザインが好きで、目立ち過ぎる服は好みません。新しいファッションに対しては、まず自分の目で見て判断し、流行が本物とわかった後に乗るという傾向があります。」これは劉さんの『大胆でありながら独特で人目を引く」デザインに対して抵抗があることを意味していました。「台湾人は明るい服、色が目立つ服、キャラクターものの服など、どちらかと言えば可愛らしい子供服を好みます。」

しかし、時間の経過とともに劉さんのデザインは評価が高まり、母親層のファンが次第に増えていきました。顧客の中には永康エリアを訪れた際に偶然お店を発見し、陳列された商品に魅了された人たちも少なくありません。特に日本やスペイン、ドイツなどヨーロッパからくる観光客に多い傾向だそうです。0417安荷童裝-049​​​​​​​▲オーナーの劉さんは家族との生活の中でインスピレーションを受け、お子さんを出産してから子供服のデザイナーになりました。

劉さんは当初、ヨーロッパで熱心に行われている環境保護運動の影響もあり、自然なアースカラーに注目していました。しかし、台湾のユーザーは明るい色を好むことに気が付き、現在は明るい色が中心となっています。

デザインのインスピレーションについては「主に偶然の出会いです。日常生活の中の一瞬がアイデアを生み出してくれます。雑誌で見た写真や何気ない人生のワンシーン、旅先や移動中に出会う可愛らしい光景などです。」と答えてくれました。劉さんの作る衣服には、彼女の好きな画家の一人であるゴッホのダイナミックな色彩をベースにしたブラウスとスカートのセットがあります。『星月夜』をモチーフにしたブラウスには、襟元にメダリオンを彷彿させる円が描かれていて、ゴッホの三日月をうまく表現しています。キラキラ輝くシルバーのスカートは満点の星空を演出していますが、ベースカラーは台湾市場向けに明るくするなどの工夫も見られます。0417安荷童裝-011​​​​​​​▲劉さんはお母さん用の衣服もデザインしていて、子供服と同様に多くの人に好まれています。

常に新しいものに触れる
劉さんは「シーズンごとに新しいデザインを20~30種類発表していますが、各デザインには色のバリエーションが2種類あり、各サイズと合わせると12~15種類の型を製作します。」と話します。ファッションショーのようなこのサイクルを経ることで一定数のリピーターが季節ごとに来店しているそうです。また、季節ごとに素材も変えていて、夏なら通気性に優れる亜麻や軽くて薄い綿を使用することで台湾の高温多湿な天候でも快適に過ごせるよう配慮しています。

Ángeles が発表する独特なデザインは、地元の富裕層の目にも留まるらしく「よく有名人の方から子どもたちのステージ衣装や特別な日の服をデザインしてほしいと依頼されます。その際は自らお子さんの性格や好みを考慮して製作しますが、お客様から情報を聞いたりはしません。」と語っています。0417安荷童裝-009​​​​​​​▲着心地の良さを重視するために、季節によって異なる材質の生地を使用しています。

家族で楽しむ一日:アートファンの聖地
来店するお客さんの大半はお子さん連れの方だそうです。永康街周辺は観光客向けになっていて、フルーツジュースや焼き菓子、西洋や中国風のお菓子からかき氷まで、子供たちを満足させる飲食店やお店がたくさん並んでいます。

劉さん自身もお子さんを連れて永康街にある品墨良行という紙製品や雑貨を取り扱うお店をよく訪問するそうです。このお店では出来立てのケーキやクッキーも販売していて、カウンターにいるマスコットのウサギが出迎えてくれます。主にノートやカレンダー、ポストカード、しおりなどデザイナーが製作した紙製品が展示されていますが、定期開催されるワークショップで、同じ作品が製作できます。お子さんにとっては、様々な種類の紙や材木、ドライフラワー、花びらや葉、ロープといったクリエイティブな作品に触れる機会でもあります。93856673_2945674745455385_3991315199821873152_o​​​​​​​▲芸術性と手作りがウリの品墨良行では紙で作られた芸術的な商品が販売されています。( 写真/ 品墨良行 )

観光客は現地のデザイナーが製作したおしゃれで生活感あふれる製品に興味を持つことが多いので、台北を訪れるなら華山1914文化創意産業園区と誠品生活松菸店の2か所をおすすめしたいと劉さんは言います。

華山1914文化創意産業園区は、酒造工場を改装して作ったアートと文化の中心地です。中にはシックなデザイナーブティック、飲食店、カフェが多数並び、週末には大規模な展示会や文化芸術に関するイベント、ワークショップなどが行われます。他にもインディーズデザイナーがアクセサリーや小物を販売するバザーを開催しています。華山_By Yenping Yang​​​​​​​▲華山文化創意産業園区は人気のデザインブランドのお店やレストラン、カフェなどがある他、展示会や芸術関連のイベントなどが多数開催されています。( 写真/ 楊艷萍 )

誠品生活松菸店はタバコ工場を改装した複合施設で、松山文創園区内にあります。誠品書店は数年前にCNN Travel が選ぶ「世界で最もクールなデパート」にノミネートされた店舗で、書店や飲食店、クリエイティブスペースの融合した多機能ショッピングモールです。台湾の有名デザインブランドが多数出店している他、手工芸品のデザイナーがワークショップやDIY工房をオープンしています。AD374154-8A7F-4C9D-BFFE-12A25415BAF3​​​​​​​▲松山文創園区内はタバコ工場を改装した場所で、現在は展示会などを通じて台北のアートや文化を発信する場所となっています。( 写真/MyTaiwanTour )
IMG_5931-Edited▲誠品生活松菸店は過去にCNN Travel が選ぶ「世界で最もクールなデパート」にノミネートされた誠品グループの系列店で、書店やレストラン、手工芸品店などが人気の店舗です。( 写真/Taiwan Scene )
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劉さんは最後に、自身の歩みが地元のデザイナーを触発し、おしゃれな子供服の世界へ進出してほしいと将来の展望を述べます。それによって地元の消費者たちへの認知と宣伝になりますし、劉さんのようなデザイナーが増えることで、台湾は世界のステージでより存在感を発揮できるようになっていきます。

仕事の原動力となる情熱のある事柄はありますか?まだ見つかっていないという人はÁngeles へ足を運んでインスピレーションを受けてみてはいかがでしょうか。


Ángeles 安荷童装
🏠 大安区麗水街33 巷21 号
🕒 11:30 ~ 18:00 ( 月曜)、11:30 ~ 21:00 ( 火曜 - 日曜)

品墨良行
🏠 大安区永康街63 号
🕒 12:00 ~ 17:00 ( 月曜 - 木曜)、12:00 ~ 19:00 ( 土曜、日曜)

誠品生活松菸店
🏠 信義区菸廠路88 号( 松山文創園区の中)
🕒 11:00 ~ 22:00

華山文化1914 創意產業園区
🏠 中正区八德路一段1 号
🔗 www.huashan1914.com/w/huashan1914_en

松山文創園区
🏠 信義区光復南路133 号
🔗 songshanculturalpark.org/cms/en/index.aspx

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