発表日:2020-12-14
4321
TAIPEI #22 (2020 冬季号)
動物を守る:台湾SPCAの活動
文 / Francesca Chang 編集 / 下山敬之 写真 / 鄧毅駿 , 台湾SPCA
2020年現在、台湾全土ではおよそ250万頭のペットが飼われており、台北でもその存在は非常に身近なものです。しかし、飼い主による虐待を防止する法律の歴史はそこまで長くないというのが実情です。野生動物および絶滅危惧種の販売、取引、展示を禁止した「野生動物保育法」が台湾で施行されたのは1989年のこと。そして1989年に動物虐待に対する罰則、飼育や屋外での活動に関する要項について定めた「動物保護法」が制定され、飼い主のためのガイドラインが出来上がりました。
台湾では動物保護法に基づくペットの飼育や動物関連産業に対してのガイドラインを継続的に更新していますが、こうしたガイドラインの普及や法律の執行を担当しているのが、SPCA(動物虐待防止協会)という団体です。
▲TSPCAは虐待を受けた動物に安全に保護できる場所を提供し、後に快適な生活が送れるようサポートしています。(写真 / 鄧毅駿)
台湾初の動物虐待防止協会
姜怡如(ジャンイールー)氏、姜怡帆(ジャンイーファン)氏の姉妹は台湾で生まれ、カナダのバンクーバーで育ちました。カナダにはBCSPCA(BC州動物虐待防止協会)があり、それが二人にとっては当たり前のものでした。しかし、大学卒業後にと帰国した際、台湾にはそういった団体が存在しないことを知り、大きな驚きを覚えたと言います。「ペットを飼うときは地域のSPCAから引き取るのが当たり前という環境で育ってきました」と怡如氏は語っています。
▲幼い頃から動物愛護を行ってきた姜怡如氏にとっての最大の任務は、台湾における動物福祉の改善です。(写真 / 鄧毅駿)
動物を守ろうという気持ちから、二人は会社勤めをしながらも友人やカナダ人のBeki Hunt氏の協力を得て、捨てられた動物や野生化したた動物たちの保護と救済を始めました。「まずはみんなでボランティアから始めました」と話す怡如氏。それから、TNR(「不妊去勢、予防接種し、元いた場所に戻す)活動を行い、個体数の管理を始めました。
▲TSPCAでは必要に応じて動物に対する医療支援の手配も行っています。
しかし、自宅で保護できる動物の数には限界があること、そして根本的な問題は動物保護に関する法令の欠落にあると気づいた彼女たちは、2009年に台北でTSPCA(台湾動物虐待防止協会)を創設しました。翌年には台湾初のSPCA団体として公的に認定されています。
▲TSPCAは台湾各地へ訪問して虐待動物案件の調査が行える唯一の非営利団体です。
TSPCAのミッション
世界各国のSPCAはそれぞれ独自に活動しており、役員、組織の構成、その目標も異なります。台湾のSPCAは、飢えと渇き、不快、痛み、行動、恐怖と苦痛から解放する「5つの自由」を動物福祉の基本理念として活動しています。そんなTSPCAが特に秀でているのは、啓蒙的なアプローチで台湾の虐待防止法を執行していくという創設者たちの強い信念です。
例えば、生涯のほとんどを小さな檻の中で過ごしてきた絶滅危惧種のマレーグマのケースに遭遇した際は、小さな非営利団体ながら独自の調査を開始。その調査によって絶滅危惧種や希少な外来種など22頭が台湾国内にて違法に飼育されていることが判明しました。この件をきっかけにTSPCAは記者会見を開き、この違法行為に対する民衆の注目を集めることに成功しています。彼女たちのこうした活動の結果、2頭を除くすべての絶滅危惧種の動物たちが解放され、台湾の野生動物保護区にてリハビリを受けることとなりました。彼女達は現在も残りの動物達を保護するためにさらなる努力を続けています。
▲TSPCAの設立以来、一番印象に残っている案件は犬用の檻に閉じ込められていたマレーグマの保護とサポートだと姜怡如氏は話します。
TSPCAの調査プロセス
台湾のSPCAは虐待防止法の執行を支えるため、虐待調査と呼ばれるプロセスを用いています。「このプロセスは非政府組織としては異例で、今の所、他では行われていません」と怡如氏は話します。
TSPCAの虐待調査は多くの場合、一般の人たちの通報からスタートします。通常、動物虐待に関する通報は、地域の動物保護当局である台北市動物保護処に行います。しかし、TSPCAはその知名度の高さから、台北及びそれ以外の地域からも真っ先に通報が入ります。こうした背景からTSPCAでは一般市民からの通報や証拠を受け取るためのオンライン報告システムを導入しました。
▲TSPCAが調査する案件の多くは身体的虐待ではなく、餌を与えないなどの「飼育放棄」です。
通報を受けた後は、まずその行為が法律に違反しているかを確認します。TSPCAでは啓蒙を最初のゴールとしているので、動物保護法違反を確認した場合、違反者に対して最善な飼育方法を教え、改善に向けたサポートやアシストを行います。たとえば、なぜ犬には運動が必要かを説明し、散歩用リードを無料で提供します。ガイダンスに従わず状況が改善されない場合は法務当局に連絡をします。
TSPCAからの連絡に基づき、台北の法執行機関が遵守命令を発令し、違反者にて行為を改める機会与えます。それでも命令に従わない場合、1万5千元~7万5千元(日本円で約6万円~30万円)の罰金が科せられ、場合によっては動物も保護されます。
▲TSPCAではペットのサポート以外に、羊や猿などの展示動物に対する福祉にも力を入れています。
この動物の保護が行われた場合、TSPCAは里親が見つかるまでボランティアの人たちやペットホテルと協力して積極的にサポートを行います。TSPCAは預ける施設を持たないので、場所が不足している場合には、2人が自ら動物を引き取ることもあります。「家には犬が6頭と鳥が1羽いますね」と怡如氏は笑います。
TSPCAの調査員は4人しかいませんが、そのメンバーで年間約600件もの調査に対応しています。
▲TSPCAではペットのサポート以外に、羊や猿などの展示動物に対する福祉にも力を入れています。
ロビー活動と啓蒙
こうした調査の他にも、政府に対する動物保護法の是正を求めるロビー活動を行っています。ペット飼育の要件や動物の展示に関する規制がより一層明確になったのも活動成果の一つですし、他にも台湾国内における化粧品の動物実験の禁止も実現しています。同様に、二人は公聴会やセミナー、シンポジウムなどにも参加し、動物関連の問題に関する研究や提言を行っています。
このような啓蒙活動とあわせ、市民のための動物愛護についての教育プログラムの作成も行っています。たとえば台北市動物保護処と協力し、台北市内の学校10校で、教師が動物愛護について教える際に必要な教材とカリキュラムの提供をしましたす。「この活動は大きな成果を生出しています。学生が動物愛護について学べるよう教師の皆さんにノウハウ提供をしていますが、ある学校では100人を超える先生が参加してくださいました!」と語る怡如氏。他にもソーシャルメディアによる啓蒙キャンペーンを展開し、動物の受け入れ先や一般市民を対象としたペットの行動訓練を開催しています。
▲虐待された動物を保護した後はマイクロチップを移植し、飼育や里親探しなどのサポートを行います。
動物愛護への貢献は
台北在住の外国人は、TSPCAおよび動物保護処が救出した動物たちの里親として、市の動物愛護促進に貢献することができます。怡如氏は、「預かり施設がない私たちにとって里親ボランティアの協力はとても重要です」と話します。里親が難しい場合でもTSPCAを通じて瑞芳動物之家におけるボランティア活動への参加ができます。この施設では、毎月25人のボランティアたちが犬の散歩、入浴、爪切りなどのサポートをしています。他にも公共の預り所に一時滞在している動物たちの屋外活動、他の動物や人間に親しむための訓練を手伝うことができます。
外国人旅行者も同様に、台湾滞在期間中にボランティア活動が行なえます。たとえば台湾巴克動物懐善救援協会のような預り所、または台北の動物保護処でもボランティアを募集しています。
▲TSPCAには子どもたちに動物との接し方を教えるという任務があり、そのために各地で教育プログラムの実施や動物愛護の重要性を伝えるイベントを開催しています。
TSPCAの今後
TSPCAは規模こそ小さいですがその意志は 強く、台湾のすべての動物たちの権利を守るために活動を続けています。動物たちのさらなる安全と快適な生活のため、研究やキャンペーン、ロビー活動を行い、動物保護法やその執行の強化、そして「買うのではなく、引き取る」という精神の世界的な普及を目指していきます。
▲時間や労力が提供できる人がボランティアとして、飼育ができる人は里親となって動物をサポートしましょう!
動物を守る:台湾SPCAの活動
文 / Francesca Chang 編集 / 下山敬之 写真 / 鄧毅駿 , 台湾SPCA
2020年現在、台湾全土ではおよそ250万頭のペットが飼われており、台北でもその存在は非常に身近なものです。しかし、飼い主による虐待を防止する法律の歴史はそこまで長くないというのが実情です。野生動物および絶滅危惧種の販売、取引、展示を禁止した「野生動物保育法」が台湾で施行されたのは1989年のこと。そして1989年に動物虐待に対する罰則、飼育や屋外での活動に関する要項について定めた「動物保護法」が制定され、飼い主のためのガイドラインが出来上がりました。
台湾では動物保護法に基づくペットの飼育や動物関連産業に対してのガイドラインを継続的に更新していますが、こうしたガイドラインの普及や法律の執行を担当しているのが、SPCA(動物虐待防止協会)という団体です。
台湾初の動物虐待防止協会
姜怡如(ジャンイールー)氏、姜怡帆(ジャンイーファン)氏の姉妹は台湾で生まれ、カナダのバンクーバーで育ちました。カナダにはBCSPCA(BC州動物虐待防止協会)があり、それが二人にとっては当たり前のものでした。しかし、大学卒業後にと帰国した際、台湾にはそういった団体が存在しないことを知り、大きな驚きを覚えたと言います。「ペットを飼うときは地域のSPCAから引き取るのが当たり前という環境で育ってきました」と怡如氏は語っています。
動物を守ろうという気持ちから、二人は会社勤めをしながらも友人やカナダ人のBeki Hunt氏の協力を得て、捨てられた動物や野生化したた動物たちの保護と救済を始めました。「まずはみんなでボランティアから始めました」と話す怡如氏。それから、TNR(「不妊去勢、予防接種し、元いた場所に戻す)活動を行い、個体数の管理を始めました。
しかし、自宅で保護できる動物の数には限界があること、そして根本的な問題は動物保護に関する法令の欠落にあると気づいた彼女たちは、2009年に台北でTSPCA(台湾動物虐待防止協会)を創設しました。翌年には台湾初のSPCA団体として公的に認定されています。
TSPCAのミッション
世界各国のSPCAはそれぞれ独自に活動しており、役員、組織の構成、その目標も異なります。台湾のSPCAは、飢えと渇き、不快、痛み、行動、恐怖と苦痛から解放する「5つの自由」を動物福祉の基本理念として活動しています。そんなTSPCAが特に秀でているのは、啓蒙的なアプローチで台湾の虐待防止法を執行していくという創設者たちの強い信念です。
例えば、生涯のほとんどを小さな檻の中で過ごしてきた絶滅危惧種のマレーグマのケースに遭遇した際は、小さな非営利団体ながら独自の調査を開始。その調査によって絶滅危惧種や希少な外来種など22頭が台湾国内にて違法に飼育されていることが判明しました。この件をきっかけにTSPCAは記者会見を開き、この違法行為に対する民衆の注目を集めることに成功しています。彼女たちのこうした活動の結果、2頭を除くすべての絶滅危惧種の動物たちが解放され、台湾の野生動物保護区にてリハビリを受けることとなりました。彼女達は現在も残りの動物達を保護するためにさらなる努力を続けています。
TSPCAの調査プロセス
台湾のSPCAは虐待防止法の執行を支えるため、虐待調査と呼ばれるプロセスを用いています。「このプロセスは非政府組織としては異例で、今の所、他では行われていません」と怡如氏は話します。
TSPCAの虐待調査は多くの場合、一般の人たちの通報からスタートします。通常、動物虐待に関する通報は、地域の動物保護当局である台北市動物保護処に行います。しかし、TSPCAはその知名度の高さから、台北及びそれ以外の地域からも真っ先に通報が入ります。こうした背景からTSPCAでは一般市民からの通報や証拠を受け取るためのオンライン報告システムを導入しました。
通報を受けた後は、まずその行為が法律に違反しているかを確認します。TSPCAでは啓蒙を最初のゴールとしているので、動物保護法違反を確認した場合、違反者に対して最善な飼育方法を教え、改善に向けたサポートやアシストを行います。たとえば、なぜ犬には運動が必要かを説明し、散歩用リードを無料で提供します。ガイダンスに従わず状況が改善されない場合は法務当局に連絡をします。
TSPCAからの連絡に基づき、台北の法執行機関が遵守命令を発令し、違反者にて行為を改める機会与えます。それでも命令に従わない場合、1万5千元~7万5千元(日本円で約6万円~30万円)の罰金が科せられ、場合によっては動物も保護されます。
この動物の保護が行われた場合、TSPCAは里親が見つかるまでボランティアの人たちやペットホテルと協力して積極的にサポートを行います。TSPCAは預ける施設を持たないので、場所が不足している場合には、2人が自ら動物を引き取ることもあります。「家には犬が6頭と鳥が1羽いますね」と怡如氏は笑います。
TSPCAの調査員は4人しかいませんが、そのメンバーで年間約600件もの調査に対応しています。
ロビー活動と啓蒙
こうした調査の他にも、政府に対する動物保護法の是正を求めるロビー活動を行っています。ペット飼育の要件や動物の展示に関する規制がより一層明確になったのも活動成果の一つですし、他にも台湾国内における化粧品の動物実験の禁止も実現しています。同様に、二人は公聴会やセミナー、シンポジウムなどにも参加し、動物関連の問題に関する研究や提言を行っています。
このような啓蒙活動とあわせ、市民のための動物愛護についての教育プログラムの作成も行っています。たとえば台北市動物保護処と協力し、台北市内の学校10校で、教師が動物愛護について教える際に必要な教材とカリキュラムの提供をしましたす。「この活動は大きな成果を生出しています。学生が動物愛護について学べるよう教師の皆さんにノウハウ提供をしていますが、ある学校では100人を超える先生が参加してくださいました!」と語る怡如氏。他にもソーシャルメディアによる啓蒙キャンペーンを展開し、動物の受け入れ先や一般市民を対象としたペットの行動訓練を開催しています。
動物愛護への貢献は
台北在住の外国人は、TSPCAおよび動物保護処が救出した動物たちの里親として、市の動物愛護促進に貢献することができます。怡如氏は、「預かり施設がない私たちにとって里親ボランティアの協力はとても重要です」と話します。里親が難しい場合でもTSPCAを通じて瑞芳動物之家におけるボランティア活動への参加ができます。この施設では、毎月25人のボランティアたちが犬の散歩、入浴、爪切りなどのサポートをしています。他にも公共の預り所に一時滞在している動物たちの屋外活動、他の動物や人間に親しむための訓練を手伝うことができます。
外国人旅行者も同様に、台湾滞在期間中にボランティア活動が行なえます。たとえば台湾巴克動物懐善救援協会のような預り所、または台北の動物保護処でもボランティアを募集しています。
TSPCAの今後
TSPCAは規模こそ小さいですがその意志は 強く、台湾のすべての動物たちの権利を守るために活動を続けています。動物たちのさらなる安全と快適な生活のため、研究やキャンペーン、ロビー活動を行い、動物保護法やその執行の強化、そして「買うのではなく、引き取る」という精神の世界的な普及を目指していきます。
関連写真
:::
人気の記事
流行色はグリーン! 台北の古着屋でサスティナブルなおしゃれを楽しむ (TAIPEI Quarterly 2020 冬季号 Vol.22)
台北に根付くフェアトレード 文化と代表的なお店 (TAIPEI Quarterly 2020 冬季号 Vol.22)
クリスマスにピッタリ! 環境に優しいプレゼント (TAIPEI Quarterly 2020 冬季号 Vol.22)
シードペーパーに蒔く「希望の種」 (TAIPEI Quarterly 2020 冬季号 Vol.22)
南機場で生まれた「食のサスティナビリティ」 (TAIPEI Quarterly 2020 冬季号 Vol.22)
健康的で美味しい台北発のヘルシーフード (TAIPEI Quarterly 2020 冬季号 Vol.22)























