発表日:2021-07-01
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TAIPEI #24 (2021 夏季号)
台北のリトル‧フィリピン「中山区」を歩く
文:Catherine Shih
編集:下山敬之
写真:Yenyi Lin、Taiwan Scene、Wow Litson Manok
「台北のマニラ」へようこそ
中山北路三段と徳恵街の交差点の方角へ向かって歩くと、徐々に雰囲気がフィリピンの街中のように変化していきます。聖多福天主堂、金萬萬名店城、双城公園、EECエリート‧エクスプレスのスポットに四方を囲まれた小さな区画とその周辺エリアは、台北の「リトル‧フィリピン」と呼ばれる場所です。台北に住むフィリピン人たちからは「中山区」と呼ばれています。ここには勤勉な移民労働者が集まっていて、フィリピンの主要言語であるタガログ語が盛んに聞こえてきます。
7年ほど台湾で生活しているフィリピン‧ミンダナオ出身のギルダ‧バヌガン(Gilda Banugan)さんも移民労働者の一人。毎週日曜日になるとリトル‧フィリピンを訪れるという彼女は、「毎週ここに集まって友達と会い、社会のことについて色々話しています」と語ります。しかし、なぜこのエリアが「リトル‧フィリピン」と名付けられるようになったのでしょうか?今回はこのエリアのランドマークや成り立ちを紹介していきます。
▲台北のリトル・フィリピンは東南アジアの商品を扱うお店が多く、エキゾチックな雰囲気が漂うエリアです。
聖クリストファー教会
1957年にアメリカ人建築家によって建てられたこの教会は、リトル‧フィリピンの象徴的存在です。もともとは周辺に居住していたアメリカ軍事顧問のカトリック‧コミュニティとして建てられた教会でした。ただ、英語でのミサがあったことから、他の地域に居住していたアメリカ人も数多く集まりました。それからベトナム戦争が終結し、台湾と米国の国交状態が変化すると、アメリカ人コミュニティは年々縮小していきます。そして、1990年代に移民法施行により、台北では東南アジアの労働者受け入れを開始。それによって、この教会はフィリピン人のクリスチャン‧コミュニティの中心地へと変わっていきました。
▲聖クリストファー教会は東南アジアからの移民労働者に対して様々なサービスを提供しています。(写真/Taiwan Scene)
現在ではタガログ語、英語、そしてベトナム語で礼拝が行われています。また、ギルダさんによると「現在はパンデミックのため、教会では無料マスクの配布や衛生に関する講義、カウンセリングも行っています。みんな故郷に帰れなくて、辛い思いをしているので助かっています」。パンデミックに伴う海外旅行制限により、多くの移民労働者は、経済的理由もあって、契約期間の残りを台湾で過ごさざるを得ない状況となっています。「故郷で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっているので、私たちも気が気でありません。かといって、故郷に帰って家族に会うこともできない。そんな中で、この聖クリストファー教会は私たちにとって、大切な支えとなってくれています」と、東南アジアの移民労働者が、ここに集まる理由を語ってくれました。
金萬萬名店城
聖クリストファー教会から目と鼻の先にある金萬萬名店城。中には、携帯ショップ、屋台、ヘアサロン、洋服店、電化製品の修理店がずらりと並んでいます。1階と2階の間にある壁には、各お店の名前が貼られたボードが来客を出迎えます。どのお店も軒先の狭い廊下にまで商品を並べ、行き交う人々はタガログ語を話しながら次々にお店へ入っていきます。「スマートフォンやアプリがなかった頃は、フィリピンへ物を送るときに必ずここに来ていました。最近はなんでもオンラインでできるようになったので、本当に便利になりました」。ギルダさんに何の目的でここにくるのかを尋ねると、「髪を切る時か、フィリピンの味が恋しくなった時にここに来ますね」と答えてくれました。
▲日曜日の金萬萬名店城では、フィリピンの名産が数多く販売されています。
取材の際、ギルダさんは私たちを小さな屋台へ連れて行ってくれました。この屋台では、揚げバナナや魚の燻製、ライス、ウベの月餅からハロハロ(フィリピン式かき氷)までフィリピンの食べ物が揃っています。また、周りのショップの友人に対して、ギルダさんは「Kuya」(タガログ語で「兄」という意味)と呼びかけるなど、友好的な関係性が垣間見えました。また、どのお店もリーズナブルな価格で、一生懸命稼いだお金を有効に活用できる場所になっているようです。
▲日曜日の金萬萬名店城では、フィリピンの名産が数多く販売されています。
周辺エリア―スーパーマーケット、レストラン、公園
聖クリストファー教会と金萬萬に隣接するのが、有名なフィリピン‧スーパーマーケットエリートエクスプレス(EliteExpress)です。店内にはフィリピンのスナック、インスタント麺、化粧品などの商品が所狭しと並んでいます。できるだけ節約できるよう、製品の大半はコストコのようにまとめ買いサイズで販売されています。レジの横のカウンターでは、荷物や小包の配送やその他の手続きなども可能です。
EECからすぐの場所には、フィリピンレストランWow Litson Manok(葛瑞絲香草烤雞)もあります。「フィリピン料理は塩と酸味が効いたものが多いです。それにバーベキューや揚げ物も人気ですね。ここだと一番人気はグリルチキンですよ」。イートインの際にお得なのが、食事を頼むとライスのお代わりが自由になること。懸命に働く移住労働者の人々には嬉しいサービスでしょう。
▲Wow Litson Manokで提供しているグリルチキンは、フィリピンを思い出させる故郷の味です。(写真/Wow Litson Manok)
取材の最後にギルダさんが連れて行ってくれたのは、地域の人々に人気のスポット、双城公園でした。「友達と外でおしゃべりしたり、ただのんびりしたりするのに最適な場所ですよ」。台湾に住む東南アジアの移住労働者の多くは、安全の確保のために、オープンスペースで使用料のかからない公園を集会場所として利用しているそうです。「ここに食べ物を持ってきて、芝生の上やベンチでピクニックをしたりします。ここは太陽が気持ちいいですからね!」
▲開放的で緑があふれる双城公園は、リトル・フィリピンへ買い物に来た人たちにやすらぎを与える休憩スポットです。
「私たちは、家族や友人の多くをフィリピンに残してきていますが、この台北の片隅の小さなエリアでは、そんな故郷との繋がりを感じることができます。本当に第二の故郷のような場所です」とギルダさんは微笑みます。多様性と受容性の高い台湾は、世界中の人々が「故郷」と呼べる街になるべく成長を続けています。
台北のリトル‧フィリピン「中山区」を歩く
文:Catherine Shih
編集:下山敬之
写真:Yenyi Lin、Taiwan Scene、Wow Litson Manok
「台北のマニラ」へようこそ
中山北路三段と徳恵街の交差点の方角へ向かって歩くと、徐々に雰囲気がフィリピンの街中のように変化していきます。聖多福天主堂、金萬萬名店城、双城公園、EECエリート‧エクスプレスのスポットに四方を囲まれた小さな区画とその周辺エリアは、台北の「リトル‧フィリピン」と呼ばれる場所です。台北に住むフィリピン人たちからは「中山区」と呼ばれています。ここには勤勉な移民労働者が集まっていて、フィリピンの主要言語であるタガログ語が盛んに聞こえてきます。
7年ほど台湾で生活しているフィリピン‧ミンダナオ出身のギルダ‧バヌガン(Gilda Banugan)さんも移民労働者の一人。毎週日曜日になるとリトル‧フィリピンを訪れるという彼女は、「毎週ここに集まって友達と会い、社会のことについて色々話しています」と語ります。しかし、なぜこのエリアが「リトル‧フィリピン」と名付けられるようになったのでしょうか?今回はこのエリアのランドマークや成り立ちを紹介していきます。
聖クリストファー教会
1957年にアメリカ人建築家によって建てられたこの教会は、リトル‧フィリピンの象徴的存在です。もともとは周辺に居住していたアメリカ軍事顧問のカトリック‧コミュニティとして建てられた教会でした。ただ、英語でのミサがあったことから、他の地域に居住していたアメリカ人も数多く集まりました。それからベトナム戦争が終結し、台湾と米国の国交状態が変化すると、アメリカ人コミュニティは年々縮小していきます。そして、1990年代に移民法施行により、台北では東南アジアの労働者受け入れを開始。それによって、この教会はフィリピン人のクリスチャン‧コミュニティの中心地へと変わっていきました。
現在ではタガログ語、英語、そしてベトナム語で礼拝が行われています。また、ギルダさんによると「現在はパンデミックのため、教会では無料マスクの配布や衛生に関する講義、カウンセリングも行っています。みんな故郷に帰れなくて、辛い思いをしているので助かっています」。パンデミックに伴う海外旅行制限により、多くの移民労働者は、経済的理由もあって、契約期間の残りを台湾で過ごさざるを得ない状況となっています。「故郷で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっているので、私たちも気が気でありません。かといって、故郷に帰って家族に会うこともできない。そんな中で、この聖クリストファー教会は私たちにとって、大切な支えとなってくれています」と、東南アジアの移民労働者が、ここに集まる理由を語ってくれました。
金萬萬名店城
聖クリストファー教会から目と鼻の先にある金萬萬名店城。中には、携帯ショップ、屋台、ヘアサロン、洋服店、電化製品の修理店がずらりと並んでいます。1階と2階の間にある壁には、各お店の名前が貼られたボードが来客を出迎えます。どのお店も軒先の狭い廊下にまで商品を並べ、行き交う人々はタガログ語を話しながら次々にお店へ入っていきます。「スマートフォンやアプリがなかった頃は、フィリピンへ物を送るときに必ずここに来ていました。最近はなんでもオンラインでできるようになったので、本当に便利になりました」。ギルダさんに何の目的でここにくるのかを尋ねると、「髪を切る時か、フィリピンの味が恋しくなった時にここに来ますね」と答えてくれました。
取材の際、ギルダさんは私たちを小さな屋台へ連れて行ってくれました。この屋台では、揚げバナナや魚の燻製、ライス、ウベの月餅からハロハロ(フィリピン式かき氷)までフィリピンの食べ物が揃っています。また、周りのショップの友人に対して、ギルダさんは「Kuya」(タガログ語で「兄」という意味)と呼びかけるなど、友好的な関係性が垣間見えました。また、どのお店もリーズナブルな価格で、一生懸命稼いだお金を有効に活用できる場所になっているようです。
周辺エリア―スーパーマーケット、レストラン、公園
聖クリストファー教会と金萬萬に隣接するのが、有名なフィリピン‧スーパーマーケットエリートエクスプレス(EliteExpress)です。店内にはフィリピンのスナック、インスタント麺、化粧品などの商品が所狭しと並んでいます。できるだけ節約できるよう、製品の大半はコストコのようにまとめ買いサイズで販売されています。レジの横のカウンターでは、荷物や小包の配送やその他の手続きなども可能です。
EECからすぐの場所には、フィリピンレストランWow Litson Manok(葛瑞絲香草烤雞)もあります。「フィリピン料理は塩と酸味が効いたものが多いです。それにバーベキューや揚げ物も人気ですね。ここだと一番人気はグリルチキンですよ」。イートインの際にお得なのが、食事を頼むとライスのお代わりが自由になること。懸命に働く移住労働者の人々には嬉しいサービスでしょう。
取材の最後にギルダさんが連れて行ってくれたのは、地域の人々に人気のスポット、双城公園でした。「友達と外でおしゃべりしたり、ただのんびりしたりするのに最適な場所ですよ」。台湾に住む東南アジアの移住労働者の多くは、安全の確保のために、オープンスペースで使用料のかからない公園を集会場所として利用しているそうです。「ここに食べ物を持ってきて、芝生の上やベンチでピクニックをしたりします。ここは太陽が気持ちいいですからね!」
「私たちは、家族や友人の多くをフィリピンに残してきていますが、この台北の片隅の小さなエリアでは、そんな故郷との繋がりを感じることができます。本当に第二の故郷のような場所です」とギルダさんは微笑みます。多様性と受容性の高い台湾は、世界中の人々が「故郷」と呼べる街になるべく成長を続けています。
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