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巨匠の足跡 台北の現代建築を辿る (TAIPEI Quarterly 2021 秋季号 Vol.25)

アンカーポイント

発表日:2021-09-11

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TAIPEI #25 (2021 秋季号)

巨匠の足跡 台北の現代建築を辿る

文: AYCC
編集: 下山敬之
写真: 辜振甫先生紀念図書館、ホワイトストーン‧ギャラリー台北、Taiwan Scene


高層ビルが建ち並ぶ台北を歩くと、思わずその精緻な美しさに目を奪われることはありませんか?時には忙しい生活から一歩離れて芸術的なインスピレーションを得るのも、リフレッシュの方法のひとつです。

台北においての「芸術」は、手の届かない高尚なものではなく身近な存在です。この大都会には世界的に名を馳せる建築家たちの手で生み出された現代建築やインテリアスペースがあふれ、屋内外どちらでも素晴らしい魅力が味わえます。今季の《TAIPEI》では台北の中でも特に傑作と言われる世界的建築家たちによる3つの建造物を紹介していきます。この秋は、彼らの足取りをたどり、美しい建築物に隠された物語やその哲学に触れてみてはいかがでしょうか。

IMG_3614d-Edited▲近代的な建築が豊富にある台北では、図書館の館内も非常にデザイン性に富んだ作りをしています。

辜振甫 (グージェンフー) 先生紀念図書館
伊東豊雄氏設計 (TOYO ITO)

「建築とは、環境に寄り添ったものでなくてはならない」
                                                                                          — 伊東豊雄


プリツカー賞受賞者である伊東豊雄氏は日本でも有数の建築家であり、現実と仮想空間の両方を表現する概念アーキテクチャの担い手でもあります。伊東氏は自身のアイディアまたはコンセプトで外観を表現しつつ、自然界からのインスピレーションも多く取り入れているのが特徴です。環境や地域社会に深く根差した建築物をデザインしています。
01.近代的な建築が豊富にある台北では、図書館の館内も非常にデザイン性に富んだ作りをしています。

そんな伊東氏の台北における傑作のひとつが、国立台湾大学の社会科学院‧辜振甫先生紀念図書館です。台湾のパブリック‧アートの建築物として初めて認められたこの「森のような図書館」は、もこの蓮のコンセプトを継承し、中央から3種類のパターンで織りなすように並んでいます。蓮の葉のようなレイアウトの隙間からは自然光が優しく降りそそぎ、学生たちはリラックスした空間で読書が可能です。伊東氏はこのようなデザインこそが建築と人間性との繋がりを高め、そしてそれが生命力の向上にも寄与すると考えています。8階建ての学部棟とガラス張りの図書館棟で構成されています。

IMG_8721d▲蓮の葉からインスピレーションを受けた伊東豊雄氏は、蓮の葉の隙間から差し込む光をデザインに取り入れました。

図書館棟は植物を基調としたデザインで、天井部分は蓮の花が開く様子を思わせます。屋内の柱もこの蓮のコンセプトを継承し、中央から3種類のパターンで織りなすように並んでいます。蓮の葉のようなレイアウトの隙間からは自然光が優しく降りそそぎ、学生たちはリラックスした空間で読書が可能です。伊東氏はこのようなデザインこそが建築と人間性との繋がりを高め、そしてそれが生命力の向上にも寄与すると考えています。

A61F2490d-Edited▲辜振甫先生紀念図書館は、快適な読書環境を作り出すために、自然光が入り込むよう工夫されています。

辜振甫先生紀念図書館
住所           大安区羅斯福路四段1号
開館時間    8:20 ~ 22:00 (月曜-金曜)
                   9:00 ~ 22:00 (土曜)
                   9:00 ~ 17:00 (日曜)
夏季、冬季休暇中
開館時間   8:20 ~ 21:00 (月曜-金曜)
                  9:00 ~ 17:00 (土曜) | (日曜定休)



ホワイトストーン‧ギャラリー台北
隈研吾氏設計 (KENGO KUMA)


「人々とその周囲との間に根源的な繋がりを生み出す、それこそが建築である」
                                                                                                                              — 隈研吾


様々な建築デザインの様式を生み出し続ける日本の著名建築家‧隈研吾氏の作品の多くは「負ける建築」として知られています。目を見張るような現代の商業建築物の数々には、社会の持つ「勝利の追求」というコンセプトが多いです。これは競争力を高めるものの、環境にはかなりの負荷がかかるというデメリットがあります。対する隈氏のデザインは控えめであり、極めてシンプルな素材を使用することで、逆に建築の「粋」を際立たせています。他にも木材、泥の煉瓦、竹、ガラスといった天然素材を使い、自然光と地形をうまく活用したデザインで、緻密ながら耐衝撃性の高い建築物を生み出しています。このことからも、母なる地球に最大の敬意を払っていると言えるでしょう。

10-Edited▲ホワイトストーン‧ギャラリー台北は、「負ける建築」の特徴でもある極端にシンプルなデザインを体現した作品の1つです。(写真/ホワイトストーン‧ギャラリー台北)

内湖区に建てられたホワイトストーン・ギャラリー台北は、そんな隈氏の信条をはっきりと反映しています。初のギャラリーとなる同所は、来場者が素晴らしいアート体験を楽しめる空間を目指しました。また、最もシンプルな木材を核としたデザインを打ち出したこのギャラリーは、倉庫から受付エリア、そして展示場まで、インテリアとエクステリアを繋ぎ合わせるように様々な角度で木材が組み上げられています。来場者がスムーズに移動しながらギャラリーの深みを感じ取られる素晴らしいデザインです。隈氏の造り上げたダイナミックなこの設計は、ホワイトストーンギャラリーに唯一無二の彩りをもたらしています。

06-Edited▲隈研吾氏は自然の建材を積み重ねるように使用することで、ホワイトストーン‧ギャラリー台北の独特な流線型のデザインを生み出しました。(写真/ホワイトストーン‧ギャラリー台北)

ホワイトストーン‧ギャラリー台北
住所          內湖区基湖路1号
営業時間  11:00 ~ 19:00 (月曜定休)



王大閎 (ワンダーホン) 建築劇場
王大閎氏設計 (WANG DA-HONG)


「家は設計を経てはじめて建築物になる」
                                                                — 王大閎


中国生まれの台湾人建築家‧王大閎氏は、「建築詩人」とも呼ばれる、台湾の現代建築を牽引する人物です。ケンブリッジ大学、そしてハーバード大学で1930~1940年にかけて建築を学んだ王氏は、在学中に建築デザインのモダンコンセプトに出会います。そこに彼自身が習熟していた中国古来の建築様式が合わさり、後に東西の世界をブレンドした彼自身の建築哲学が生み出されました。

王氏がデザインした数々の建物の中でも、彼が独身時代に住んで

いた自宅は特別です。1953年建国南路(ジエングォナンルー)に建てられたこの1階建ての民家は、中国風の特徴と西洋のスタイルをブレンドした台湾初の建築物として、高い評価を受けています。壁を挟んで背中合わせに分けられたキッチンと浴室を中心に、他はすべてオープンスペースという広々とした屋内。横長の構築、床から天井まで届く窓など、目を引く現代建築要素を取り入れながらも、丸い窓や赤レンガなど中国様式のインテリアデザインが組み合わされています。

中式元素(紅磚與圓形窗)-Edited▲円形の窓や赤レンガは、王大閎がよく用いる中華式建築の重要な要素です。(写真 /Taiwan Scene)

建物内には視線を遮るものがほとんどなく、ダイニングルームとリビングルームから庭園へと続く動線もスムーズ。現在人気のスタイルを当時からすでに取り入れていました。

この住居は1970年に都市再開発の流れで一度解体されていますが、2017年に王大閎建築劇場として蘇りました。台北市立美術館の隣に再建されたこの住居は、今の時代にも通じる斬新さを備えていることから、世代を超えて称えられています。

西式元素(落地窗)-Edited▲天井まで届く大きな窓によって屋外の光が自然と室内に差し込んできます。(写真 /Taiwan Scene)

王大閎建築劇場
住所           中山区中山北路三段181号
営業時間    9:30 ~ 17:30 (月曜定休)
                   9:30 ~ 20:00 (土曜)



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