発表日:2021-09-13
1993
TAIPEI #25 (2021 秋季号)
台北のリズム
スイング文化が芽吹く街
文: Seb Morgan
編集: 下山敬之
写真: Samil Kuo、Swing Taiwan、Walery
ラグタイムの音楽が流れる中、生き生きとしたダウンビートに合わせて革靴が左右にツイストします。これはチャールストンと呼ばれるダンスの特徴で、その基本を教えてくれたのが林漢威(リン‧ハンウェイ)氏です。
「チャールストン、リンディホップ、バルボア、ウエストコースト‧スイング、どんな踊りであっても、一度スイングを踊り始めると、それぞれのパーソナリティが見えてきます。それが僕の一番好きなことですね」と林氏は語ります。
▲スイングの活気に満ちたステップとジャズの音楽は、ダンサーたちの間で化学反応を起こします。(写真/Swing Taiwan)
まだオープンから日が浅いにも関わらず、既に6,000人を超えるダンサーたちがその門を叩いているスタジオ「Swing Taiwan」。このスタジオは33歳の林氏が設立したものです。プリーツシャツにスラックス、ハンチングをかぶり、スマートな出で立ちの林氏が、台北に活気をもたらしたそのノスタルジックなダンススタイルについて話してくれました。
▲Swing Taiwanを設立した林漢威氏は、スイングを通して得た経験を多くの人に共有したいと考えています。(写真/Samil Kuo)
南部からサヴォイへ:スイングのルーツ
生き生きとしたツイスト、スライド、ターンですぐにそれとわかるスイングと呼ばれるダンスがダンスフロアに登場したのは1920年代のアメリカでした。アフリカ系アメリカ人文化に根差したスタイルは当初南部のアフリカンスタイルから発展。その後1923年のチャールストン、1928年のリンディホップなどのスタイルが大人気となって幅広いファンを獲得していきます。ニューヨークのサヴォイのようなスイング‧ボールルームは、多人種間の交流やダンスを人々に促したこの時代初の場としても注目されました。
▲1920年代にアメリカで生まれたスイングは、もともとアフリカ系アメリカ人の間で好まれたスタイルで、後に大恐慌が起きた際には多くの人にとっての楽しみとなりました。(写真/Walery)
スイングが生まれた時代は、アフリカ系アメリカ人たちが自分自身のために時間を割くことなどできないような、人種間‧経済間差別が激しい時代だったと林氏は語っています。そのためこのようなボールルームは、彼らが一堂に集まって新たな友情を育める社交場として、重要な役を担っていたのです。重労働と社会の強いプレッシャーから解放される金曜日の夜を目指して、彼らは日々を乗り切っていたのでしょう。さらに大恐慌の折には、ジャズの音を楽しみ、リズムに乗って踊ることが、多くの人々にとって大切な楽しみとなりました。
台北でソーシャルダンス文化を育む
林氏は交換留学生としてアメリカに滞在していた時に、スイングのオープンさに惹かれたといいます。「当時私は英語がまだよく話せなかったので、友達ができず、とても孤独でした。しかし、ある日、先生が私とクラスメートたちをギャラリー‧オープニングに連れて行ってくれました。そこではソーシャルダンスのイベントが開かれていたのですが、そこにいた人たちが私をダンスフロアに招き入れてくれて、そこでこの『繋がりあう』という感覚を得ることができました。言葉が話せなくても、みんなと一緒に楽しめる。それがわかった瞬間です」。
こうして林氏はその魅力の虜となり、台北に戻ってからも、ダンスを続ける方法を模索しました。「私が在籍していた国立台湾科技大学には、スイングを通じて英語を教える教授がいたのです。なので、その教授のクラスにすぐに登録しました」と林氏は当時を振り返ります。
その教授のクラスは素晴らしかったそうですが、林氏はただキックやスライドを学ぶだけでは満足できませんでした。「スイングはただのダンスではありません。ソーシャルな空間で、スイングの音楽をかけ、ドリンクを勧める。すると、ダンスのステップを踏み、繋がりあう中で、新たな交流や友人が生まれます。スイングはソーシャルダンスの文化そのものなのです」。
▲スイングは基礎的なステップを学ぶだけで、ダンスパーティーに参加して他の人と一緒に踊ることができます。(写真/Swing Taiwan)
このダイナミックな文化をキャンパスへも持ち込もうと、林氏は2011年に金曜夜のダンス会を自身のラボで始めました。「金曜日の夜にみんなで集まり、ちょっとドリンクを飲んで、スイングミュージックに合わせて踊りました」と林氏は語ります。
彼はこの毎週の集まりの人気が高まっていることに注目。台北のジャズ愛好家の中で、スイングソーシャルダンスパーティがヒットするのではという可能性に目を向けます。そこから、より理想的な場所を見つけるまでに時間はかかりませんでした。2012年から林氏は華山1914文化創意産業園区で金曜日の夜に無料のスイングパーティを開催します。「5月にこの地域で新型コロナウイルスの感染が発生するまで、年間50回、毎回約200人がダンスフロアを埋め尽くしていました。スイングの人気が、ほんの数年の間に台北でいかに高まったかを現しています」と林氏は説明しています。
▲台北市内の多くのスポットがスイングのボールルームとなり、世界中のダンサーに台北の活力を伝えています。(写真/Swing Taiwan)
コロナ鬱も吹き飛ばす
この記事の執筆時点では、台北は半ロックダウン状態となっていますが、Swing Taiwanではオンラインクラスを提供し続けています。林氏によると、大半の生徒たちが、家で一人でも練習できるチャールストンといいスイングの一種を学んでいるそうです。
「インスタグラムのライブ配信で動きを教えたり、海外の先生を招いたりして、皆の興味が薄れないようにしています。ヨーロッパや北米から参加してくれる人たちもいて、以前よりも多様な人々が集まるクラスになりました」。また林氏はSwingFitクラスも始め、もっと動きのあるクラスを求める人たちに、レトロジャズのアレンジを加えたズンバを教えているそうです。
ダンスを超えた魅力
林氏いわく「スイングとはソーシャルであり、交流です。コールアンドレスポンスがすべてなのです。スイングを踊るときには、それぞれのパーソナリティが表現されます。ここではエンジニア、独身の方、普段はあまり外出しないという方が交流を楽しめています」と語り。スイングが彼ら自身も気づかなかった内面の表現に一役買っていると説明しています。
「台北のダンスシーンはとても開放的で、ダンスが上手かどうかで相手を判断するような人はいません。これもコミュニティにおいて大切なことです」と林氏は続けます。Swing Taiwanのクラスに参加したり、ソーシャルダンスイベントに参加するのに、ダンスの経験は必要ありません。生徒のうちおよそ10%は他国出身者のため、クラスはバイリンガルで行われています。台湾のローカルの人々と知り合うのにも最適な方法です。
▲スイングの軽快なステップは日々のプレッシャーから解放されるだけでなく、友情を結ぶこともできます。(写真/Swing Taiwan)
林氏は、生徒たちの中にはスイングを習ったことで人生が変わった人が何人もいると話してくれました。これは全く大げさな話ではありません。「私のクラスで一緒に踊ったカップルのうち20組ほどは、そのままご結婚されています」と彼は微笑みます。もちろん結婚とまではいかなくても、スイングを習うことが人生の転換期になることはあります。「ダンスを習っている間は、この大きなコミュニティに入るようなものです。ここでは人々とつながりあうことができ、自信が生まれてきます。スイングがあれば、新たな一歩を踏み出すことができるのです」と林氏は語っています。
▲台北で友達を作るならスイングのイベントに参加することが最適な方法です。(写真/Swing Taiwan)
自宅でスイングを踊るには
林氏の好きなチャールストンというスイングは、20年代のブロードウェイミュージカルの「Runnin' Wild」で人気を博したエネルギッシュなダンススタイルです。この中のクラシックな動きをいくつか教えてもらいましたので、ここで紹介していきます。
クロスウォーク
パーティトリックとしても人気のあるクロスウォークは、簡単ですが目を引くステップです。足をT字に揃え、少しクロスして、右足を90度外側に向けます。
半拍で足を開きながら、つま先でピボットします。そして右足を左足の後ろに戻してT字に戻します。これを8カウント繰り返します。つまり一拍ごとに足が開いたりクロスしたりを繰り返すことになります。リズムをつかめるようになると、足が音楽に合わせて行ったり来たりするので、まるで後ろに滑っているかのように見えます。

▲繰り返し足を交差させるクロスウォオークはスイングの特徴的な動作です。(写真/Samil Kao)
ビッグ‧キックとスライド
チャールストンで、異なるステップの間に挟む際に使いやすいのがビッグ‧キックです。まずシンプルなチャールストンのステップから始めます。左足を右足の後ろに下げ、そして前に踏み出します。そして右足を前に出し、今度は左足の後ろに戻します。
ビッグ‧キックはこのステップのバリエーションの一種です。右足を前に出すときに、斜めに10時の方向へ蹴ることで、動きが弧を描くようになるのです。ステップの名前もここから来ています。このキックの勢いを使って右足を後ろに大きくさげ、左足を床につけたまま引き寄せます。これがスライドの動きとなります。

▲右足を前方に蹴り出して左足は右足の後ろへ下げる。再び右足を前にだして、左足を後ろに滑らせたらビッグキックとスライドの完成です。(写真/Samil Kao)
SWING TAIWAN
サイト swingtaiwan.com
TAIPEIからのお知らせ
新型コロナウイルス特別警戒期間中は特に感染予防に注意をしてください。外出する際は必ずマスクを着用し、各地の規則に従ってください。
台北のリズム
スイング文化が芽吹く街
文: Seb Morgan
編集: 下山敬之
写真: Samil Kuo、Swing Taiwan、Walery
ラグタイムの音楽が流れる中、生き生きとしたダウンビートに合わせて革靴が左右にツイストします。これはチャールストンと呼ばれるダンスの特徴で、その基本を教えてくれたのが林漢威(リン‧ハンウェイ)氏です。
「チャールストン、リンディホップ、バルボア、ウエストコースト‧スイング、どんな踊りであっても、一度スイングを踊り始めると、それぞれのパーソナリティが見えてきます。それが僕の一番好きなことですね」と林氏は語ります。
まだオープンから日が浅いにも関わらず、既に6,000人を超えるダンサーたちがその門を叩いているスタジオ「Swing Taiwan」。このスタジオは33歳の林氏が設立したものです。プリーツシャツにスラックス、ハンチングをかぶり、スマートな出で立ちの林氏が、台北に活気をもたらしたそのノスタルジックなダンススタイルについて話してくれました。
南部からサヴォイへ:スイングのルーツ
生き生きとしたツイスト、スライド、ターンですぐにそれとわかるスイングと呼ばれるダンスがダンスフロアに登場したのは1920年代のアメリカでした。アフリカ系アメリカ人文化に根差したスタイルは当初南部のアフリカンスタイルから発展。その後1923年のチャールストン、1928年のリンディホップなどのスタイルが大人気となって幅広いファンを獲得していきます。ニューヨークのサヴォイのようなスイング‧ボールルームは、多人種間の交流やダンスを人々に促したこの時代初の場としても注目されました。
スイングが生まれた時代は、アフリカ系アメリカ人たちが自分自身のために時間を割くことなどできないような、人種間‧経済間差別が激しい時代だったと林氏は語っています。そのためこのようなボールルームは、彼らが一堂に集まって新たな友情を育める社交場として、重要な役を担っていたのです。重労働と社会の強いプレッシャーから解放される金曜日の夜を目指して、彼らは日々を乗り切っていたのでしょう。さらに大恐慌の折には、ジャズの音を楽しみ、リズムに乗って踊ることが、多くの人々にとって大切な楽しみとなりました。
台北でソーシャルダンス文化を育む
林氏は交換留学生としてアメリカに滞在していた時に、スイングのオープンさに惹かれたといいます。「当時私は英語がまだよく話せなかったので、友達ができず、とても孤独でした。しかし、ある日、先生が私とクラスメートたちをギャラリー‧オープニングに連れて行ってくれました。そこではソーシャルダンスのイベントが開かれていたのですが、そこにいた人たちが私をダンスフロアに招き入れてくれて、そこでこの『繋がりあう』という感覚を得ることができました。言葉が話せなくても、みんなと一緒に楽しめる。それがわかった瞬間です」。
こうして林氏はその魅力の虜となり、台北に戻ってからも、ダンスを続ける方法を模索しました。「私が在籍していた国立台湾科技大学には、スイングを通じて英語を教える教授がいたのです。なので、その教授のクラスにすぐに登録しました」と林氏は当時を振り返ります。
その教授のクラスは素晴らしかったそうですが、林氏はただキックやスライドを学ぶだけでは満足できませんでした。「スイングはただのダンスではありません。ソーシャルな空間で、スイングの音楽をかけ、ドリンクを勧める。すると、ダンスのステップを踏み、繋がりあう中で、新たな交流や友人が生まれます。スイングはソーシャルダンスの文化そのものなのです」。
このダイナミックな文化をキャンパスへも持ち込もうと、林氏は2011年に金曜夜のダンス会を自身のラボで始めました。「金曜日の夜にみんなで集まり、ちょっとドリンクを飲んで、スイングミュージックに合わせて踊りました」と林氏は語ります。
彼はこの毎週の集まりの人気が高まっていることに注目。台北のジャズ愛好家の中で、スイングソーシャルダンスパーティがヒットするのではという可能性に目を向けます。そこから、より理想的な場所を見つけるまでに時間はかかりませんでした。2012年から林氏は華山1914文化創意産業園区で金曜日の夜に無料のスイングパーティを開催します。「5月にこの地域で新型コロナウイルスの感染が発生するまで、年間50回、毎回約200人がダンスフロアを埋め尽くしていました。スイングの人気が、ほんの数年の間に台北でいかに高まったかを現しています」と林氏は説明しています。
コロナ鬱も吹き飛ばす
この記事の執筆時点では、台北は半ロックダウン状態となっていますが、Swing Taiwanではオンラインクラスを提供し続けています。林氏によると、大半の生徒たちが、家で一人でも練習できるチャールストンといいスイングの一種を学んでいるそうです。
「インスタグラムのライブ配信で動きを教えたり、海外の先生を招いたりして、皆の興味が薄れないようにしています。ヨーロッパや北米から参加してくれる人たちもいて、以前よりも多様な人々が集まるクラスになりました」。また林氏はSwingFitクラスも始め、もっと動きのあるクラスを求める人たちに、レトロジャズのアレンジを加えたズンバを教えているそうです。
ダンスを超えた魅力
林氏いわく「スイングとはソーシャルであり、交流です。コールアンドレスポンスがすべてなのです。スイングを踊るときには、それぞれのパーソナリティが表現されます。ここではエンジニア、独身の方、普段はあまり外出しないという方が交流を楽しめています」と語り。スイングが彼ら自身も気づかなかった内面の表現に一役買っていると説明しています。
「台北のダンスシーンはとても開放的で、ダンスが上手かどうかで相手を判断するような人はいません。これもコミュニティにおいて大切なことです」と林氏は続けます。Swing Taiwanのクラスに参加したり、ソーシャルダンスイベントに参加するのに、ダンスの経験は必要ありません。生徒のうちおよそ10%は他国出身者のため、クラスはバイリンガルで行われています。台湾のローカルの人々と知り合うのにも最適な方法です。
林氏は、生徒たちの中にはスイングを習ったことで人生が変わった人が何人もいると話してくれました。これは全く大げさな話ではありません。「私のクラスで一緒に踊ったカップルのうち20組ほどは、そのままご結婚されています」と彼は微笑みます。もちろん結婚とまではいかなくても、スイングを習うことが人生の転換期になることはあります。「ダンスを習っている間は、この大きなコミュニティに入るようなものです。ここでは人々とつながりあうことができ、自信が生まれてきます。スイングがあれば、新たな一歩を踏み出すことができるのです」と林氏は語っています。
自宅でスイングを踊るには
林氏の好きなチャールストンというスイングは、20年代のブロードウェイミュージカルの「Runnin' Wild」で人気を博したエネルギッシュなダンススタイルです。この中のクラシックな動きをいくつか教えてもらいましたので、ここで紹介していきます。
クロスウォーク
パーティトリックとしても人気のあるクロスウォークは、簡単ですが目を引くステップです。足をT字に揃え、少しクロスして、右足を90度外側に向けます。
半拍で足を開きながら、つま先でピボットします。そして右足を左足の後ろに戻してT字に戻します。これを8カウント繰り返します。つまり一拍ごとに足が開いたりクロスしたりを繰り返すことになります。リズムをつかめるようになると、足が音楽に合わせて行ったり来たりするので、まるで後ろに滑っているかのように見えます。
ビッグ‧キックとスライド
チャールストンで、異なるステップの間に挟む際に使いやすいのがビッグ‧キックです。まずシンプルなチャールストンのステップから始めます。左足を右足の後ろに下げ、そして前に踏み出します。そして右足を前に出し、今度は左足の後ろに戻します。
ビッグ‧キックはこのステップのバリエーションの一種です。右足を前に出すときに、斜めに10時の方向へ蹴ることで、動きが弧を描くようになるのです。ステップの名前もここから来ています。このキックの勢いを使って右足を後ろに大きくさげ、左足を床につけたまま引き寄せます。これがスライドの動きとなります。
SWING TAIWAN
サイト swingtaiwan.com
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