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​​​​​​​台北独自の味:オリジナル乾燥熟成肉 (TAIPEI Quarterly 2021 冬季号 Vol.26)

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発表日:2021-12-10

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TAIPEI #26 (2021 冬季号)


台北独自の味
オリジナル乾燥熟成肉


文: Elisa Cohen
編集: 下山敬之
写真: Samil Kuo


保存食とその保管方法は、人間が生存するために生み出した技術の一つです。長い歴史の中で、人々は新鮮な野菜、魚、肉類を塩漬けにして乾燥させ、保存期間を延ばしました。韓国のキムチ、スウェーデンのシュールストレミング、スペインのハモン‧イベリコなどがその典型的な例です。このような保存食の風習も、場所が変わればその土地の社会文化と交わり、地域独自の特徴を備えた食品へと発展します。

台北では旧正月によく食べられる台北式ベーコン、香港式ソーセージ、中国の金華ハムが伝統的な冬の味覚であり、一般の中で親しまれてきました。最近ではさらに多様な食文化が取り入れられ、ヨーロッパ式の乾燥熟成肉を楽しむ機会も増えています。

「My手作」は台北にあるヨーロッパ式の乾燥熟成肉専門店で、地元産の豚肉を使って乾燥熟成肉を手作っています。今季の《TAIPEI》では、台湾の豚肉から様々な風味の乾燥熟成肉製品をどのように作り出しているのか、そして台湾の乾燥熟成肉のクリエイティブな楽しみ方についてお話を伺いました。

1639367459076▲台湾現地の食材を使って作られた熟成肉は台北グルメに新たなバリエーションをもたらしました。

乾燥熟成のプロセス

「肉の熟成に関して世界中で共通して言えることは、塩漬けをして水分を除き、長く保存できるようにすることです」とMy手作の創設者である葉星笛(イェ‧シンディ)氏は言います。塩漬けの熟成は通常3つの手法に分かれているそうで、1つ目は空気だけで乾燥させる方法です。有名なスペインのハモン‧イベリコや、イタリアのプロシュート、中国の金華ハムはこの方法で作られています。2つ目は低温で燻製をする方法で、これは摂氏50~55度の低温で10時間以上かけて肉を燻製します。3つ目は肉をマリネにして、その後高温で処理するというものです。一般的な朝食のハムやベーコンなどがこれにあたります。

熟成プロセスはすべて、生肉の状態からスタートします。まず3〜7日かけて肉の表面を空気乾燥させ、スパイスがしみ込みやすい状態を作ります。マリネ液の材料はどういった熟成肉にするかによっても異なり、塩やスパイス、時には砂糖や酒類を使用します。漬けてから〜週間が経過したらスパイスを落とし、さらに週間肉を乾燥させて水分をしっかり取り除きます。水分が残っていると肉の品質が落ちてしまうためです。肉が乾いたら布で包み、紐で吊るして最後の乾燥熟成プロセスに入ります。

_DSC1524-Edited (Copy)▲マリネした肉は温度と湿度を管理し、じっくりと乾燥熟成をさせる必要があります。

「乾燥熟成には基本的なフォーミュラがあります。肉1キロの熟成には大抵1カ月ほどかかります」と葉氏は話します。作業スペースが限られているため、葉氏たちは地元の畜産農家から調達した肉を3キロずつに切り分けることで、熟成期間を3〜4カ月に抑えているそうです。「肉はある一定の段階まで熟成が進めば食べられますが、ワインと同じように熟成すればするほど味も香りも豊かになります」と葉氏は教えてくれました。

台北における肉熟成の課題
台湾産の豚肉にヨーロッパの風味を取り入れるには、時間もかかる上に、何よりもしっかりとした作業計画が必要です。まず大きな問題として環境の違いを克服しなくてはいけません。高温多湿な台北はヨーロッパの気候にはほど遠く、肉は一度湿気に触れると簡単にカビが生えてしまうことから、台北の自然環境の中で肉を熟成させることは不可能です。そのため、熟成場所の温度と湿度は機械によるコントロールが必要となり、製造コストも高くなります。

My手作の共同創設者でありバーテンダーとしての経歴も持つ劉冠麟(リョウ‧グァンリン)氏は、適切な豚肉を選ぶ以外にも、塩とスパイスの加減を正確に測ることが大切だと語ります。肉は一度熟成し始めると味を確かめられるのがカ月後となるので、加減を間違えるとそれまでの時間と努力はすべて無駄になってしまうのです。劉氏は「熟成を調理過程のようなものと考える方は多いですが、実際にはラボでの実験に近いです。味付けも正確に行わなければいけませんし、作業行程も可能な限り標準化して、同じ結果が出せるようにしなければいけません」と付け加えます。

_DSC1544-Edited (Copy)▲熟成するにつれて独特な風味が引き出されていきます。

質の高い材料を調達することもまた課題の一つです。葉氏によれば、乾燥熟成肉は高温調理されておらず、塩とスパイスだけで味付けされています。つまり、製品の良し悪しの8割は肉そのものの品質にかかっているのです。スペインやイタリアでは、生ハム製造者は豚の飼育からハム製造まで全てを自分たちで管理し、安定した品質を保っています。

台湾でも豚の牧畜は行われていますが、従来の育成方法では成長を早めるために栄養添加物を与えることもあります。しかし、添加物は乾燥熟成肉の味わいに大きく影響するので、こうした豚は使用できません。唯一の対処法は人工添加物を与えられていない豚肉を調達することですが、使用できる肉はより高額となり量も少ないことが問題です。

幸い、ここ数年台湾の消費者意識の向上によって、以前よりも安全な豚肉を求める人たちが増えました。そのおかげで良質な牧畜方法を実践する農家が増え、熟成肉製造者にとっては高品質な肉を求めやすくなりました。

_DSC1561-Edited (Copy)▲My手作では様々な部位の熟成肉を作ることで、より豊かな味わいを生み出しています。

台湾独自の味
乾燥熟成肉の豊かな味わいは豚そのものの風味から生まれるため、台湾の豚から作られる製品には地域独自の特性が表れます。

「同じスパイス、レシピ、手法を使っても、豚の種類や産地が違うだけで味は変わります」と葉氏は語ります。豚の脂は熟成肉の風味の核となるため、豚の脂肪分の割合が味と食感に大きく影響します。たとえば、手作がよく使用する花蓮の蓮貞豚は脂身が多く、雲林の究好豚は肉自体に独特の風味があります。これらは熟成時に大きな違いを生むので非常に重要です。My手作では台湾産の梅山豚からも熟成肉製品を製造しており、この島独自の味を生み出すことに成功しています。

台湾産の豚について葉氏は、「人工添加物が加えられていない台湾産の豚肉は、ほのかな甘みと脂肪による風味がついているので本当に美味しいですよ」と話します。My手作ではヨーロッパのスパイスをブレンドし、台湾の人たちの好みに合わせた味を作り出しました。これを地元産の高品質な豚肉に使用し、乾燥熟成や燻製をすることで20種類以上の製品を生み出しています。

_DSC1625-Edited (Copy)▲劉氏(左)と葉氏(右)は、台湾の豚肉にヨーロッパ式の製法を組み合わせることで、より多くの楽しみ方を生み出したいと考えています。

地元の豚肉とヨーロッパのレシピという組み合わせがMy手作の大きな特徴です。もともとはヨーロッパ独自の製法だったものが台湾の食材の発展とともに進化しました。台湾産の熟成肉は、海外の人たちにとっては懐かしさの中に新鮮さがあり、現地の人たちにとっては台湾の豚肉の多様な楽しみ方や品質の高さを知るきっかけとなっています。

_DSC1589-Edited (Copy)▲My手作では国産豚肉とヨーロッパの製法を組み合わせることで、台湾独自の風味を持つソーセージを生み出しました。

My手作は2017年の設立以来、多くの困難を乗り越えながら台湾産の乾燥熟成肉を作り続けてきました。そんな彼らの今後の目標は、台湾独自の風味を作り出す土壌の確立と、地元の食材を使いながら製品のバリエーションを広げていくことです。

熟成肉の楽しみ方
_DSC1600-Edited (Copy)▲スライスしたヨーロッパ式の熟成肉は、様々なお酒に合う最高のおつまみになります。

オススメの組み合わせ:
🍷フルーツ
ヨーロッパでは生ハムとメロンの組み合わせが定番ですが、台湾のメロンやカンタロープは甘みが強いため、肉の味を損ないます。代わりに台湾の有名なフルーツであるレンブ(ワックスアップル)を合わせてみましょう。レンブのみずみずしさとスッキリした甘さは熟成肉にピッタリです。

🍎ワイン
一般的に赤肉には赤ワインを合わせるのがセオリーですが、元バーテンダーの劉氏によれば台湾産の豚から作られた乾燥熟成肉は白ワインやシャンパン、スッキリした軽い飲み口のワインと合うそうです。熟成肉の味がより白ワインの風味を引き出し、ワインだけを飲むよりもすっきりとした味が際立ちます。
⭐️お酒は適量を

 

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