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台北に息づく閩南式建築の精神 (TAIPEI Quarterly 2022 春季号 Vol.27)

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発表日:2022-03-15

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TAIPEI #27 (2022 季号)


台北に息づく閩南式建築の精神

文: AYCC
編集:下山敬之
写真: Taiwan Scene


赤は一般的に熱意や積極性を象徴する色です。台北においては伝統的な閩南式(びんなんしき)建築のシンボルである赤レンガの色であり、現地の人たちにとっては過去の懐かしい記憶を呼び起こす色となっています。こうした伝統の建築物は台北の町並みの変遷を記録し、世代を超えて現在へと残り続けています。

ここでは台北にある3つのレンガ造りの建造物を紹介していきますので、伝統的な閩南式建築文化を学びつつ、近代都市に残るノスタルジックな風景を体験する旅に出かけましょう。

1. tt-L1280833-Edited (Copy)▲閩南式建築を代表する赤色は、台北の伝統的な建築物の美しさを表しています。

閩南式建築の起源
閩南式建築は、中国南東部の福建省を起源とする建築様式で、「福建建築」とも呼ばれます。閩南式建築の特徴1684年に台湾が清朝に併合されると、中国南東部沿岸の人々が新生活を求めて台湾に移住しました。それにより福建文化が徐々に台湾各地に根付き、現地の主流文化となったのです。そして人々の定住がされた後に、建築様式を含む街並みが「閩南化」していきました。

しかし、清朝による植民地化がされた後、台湾は日本、国民政府の統治を相次いで受け、福建式建築物の多くは破壊されたり、取り壊されたりしました。特に首都圏では、都市開発のために大量の土地が政府に収用されました。その結果、現在では閩南式建物がほとんど残っておらず、現存する建物はより貴重で特別なものとなっています。

閩南式建築の特徴
閩南式建築の特徴は、なんといっても日干しレンガ、そして赤レンガです。建物の構造基盤は木造であり、瓦葺きの屋根や木製の扉、窓がついています。

1647257526514▲屋根の上にあるシンプルな赤レンガと緻密に施された装飾は、閩南式建築における独自のスタイルです。

加えて、屋根の先端が上向きにカーブしている点も福建式建築に見られる特徴で、中央は平らであるのに対し、左右の端が少し反り返っているのが一般的です。

閩南式建築は対称性に細心の注意を払って建てられますが、これは中国文化における倫理的、精神的、家族的な優劣の概念を反映しています。部屋も家庭内における地位によって配置が決まっていて、中心軸に近い部屋ほど地位が高いことを表します。通常、建物の中央は礼拝の場と来客を迎える空間が置かれる場所です。そこからの左右に部屋が並びますが、年功序列で「左、右、左、右」という法則に従って部屋が配置されます。

3. tt- 特色磚牆與石窗L1280856-1-Edited (Copy)▲左右対称の建築構造は中国文化における調和を表しています。

したがって、伝統的な台湾の家庭では、中央部屋の左棟が長男、右棟が次男の部屋となります。三男がいれば長男の左側の部屋、四男は次男の右側の部屋という具合です。このように、家族の人数が多ければ多いほど建物も大きくなっていく点も閩南式建築で造られた民家の特徴です。

首都圏の伝統的閩南建築
📍龍安坡黃宅濂讓居(ロンアンポーホァンジャイリエンランジュー)
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▲台北市内の学校の中には、閩南式住宅の濂讓居が完璧な状態で残っています。

台北市内の高校の中には典型的な三合院式の住宅がひっそりと佇んでいます。この建築物は「龍安坡黃宅濂讓居」と呼ばれ、1897年に建てられたものです。約300年前に台北に移住した黄家という豪族の私邸でしたが、1999年に政府によって接収されました。その後、龍門中学校のキャンパスと統合され、現在では台北市の史跡として指定されています。

濂讓居の壁は中国から運ばれた花崗岩で作られていて、馬蹄形の屋根にベゴニア模様の石窓、月形の窓など、いずれも福建省の伝統的な建築様式を踏襲しています。閩南建築には様々な屋根の形がありますが、濂讓居に用いられているのは馬蹄形で、後述する燕尾形と似ていますが、庶民の住居として使われることが多かったために、それほど豪華さはありません。

黄家は元々台北の小作人でしたが、後にこの界隈で代々続く最も大きな地主となりました。現在でも墓参りの時期になると毎年、黄家の人たちは先祖を祀るために濂讓居に戻ってきます。この民家が一般公開されたことで、古めかしくも懐かしい台北の風景を鑑賞することができるようになりました。

📍北門
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▲北門は台北を代表する古蹟の1つで、典型的な赤レンガの建築物です。

台北駅のすぐ近くには1884年に建てられた門があり、現在は北門の名で知られています。清朝時代には承恩門と呼ばれていたこの門は、台北市の北の玄関口として機能していました。北門は台北市街地に残る数少ない清朝時代の建造物で、かつて五つあった城門の中で唯一、閩南建築の原型を完全にとどめています。

構造は伝統的な2階建ての門楼で、外壁は赤レンガ、台座の石は台北市大直の山地から採取した安山岩が積まれています。北門の屋根は閩南式建築の代表的な屋根形式である「歇山式」です。これは中央から四方向に勾配がある形状を指します。台北市の都市計画により、現在の城門の周りには広場があります。これにより、この歴史的建造物の鑑賞や写真撮影が容易になりました。

📍林安泰古厝(リンアンタイグーツォンジュー)
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▲林安泰古厝に見られるツバメの尾のような屋根は、高貴な家柄を表す閩南式建築の特徴です。

林安泰古厝は清朝時代であった1783年に建てられたもので、現在の台北では最も保存状態の良い福建様式の住宅です。元々は大安区にありましたが、都市計画の一環で中山区の浜江公園に移設されました。

高貴な家庭であった林家は、穀物、絹、茶の販売を専門に海峡横断海運業を営んでいました。一族の邸宅を見ると、所有していた富の大きさが分かります。林安泰古厝の建築の特徴としては、豪華な「燕尾形」の屋根があります。「燕尾形」は屋根の端が軒先まで反り上がっている形状を指し、多くの場合、豪華な装飾が施されます。

また、扉や壁に施された細やかな彫刻も注目すべきポイントです。例えば、軒下には花、鳳凰、古琴、夔龍(きりゅう)などの吉祥を表す模様が描かれています。緻密な装飾が施されたこの壮大な作品は、台北でも非常に人気のある観光スポットの一つとなっており、世界に向けて閩南建築の美しさを発信するスポットでもあります。

 

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