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夏の暑さを和らげる薬膳療法 (TAIPEI Quarterly 2022 夏季號 Vol.28)

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発表日:2022-06-14

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TAIPEI #28 (2022 夏季号)


夏の暑さを和らげる薬膳療法

文: Elisa Cohen
編集: 下山敬之
写真: Plu Kaow、Samil Kuo、Taiwan Scene、dashu83、fanjianhua


うだるように暑い台湾の夏は、ついつい冷たい飲み物をがぶ飲みしてしまったり、クーラーの効いた部屋に閉じこもってしまいがちです。しかし、漢方を使った食事療法を実践すると、体内の水分や熱を取り除き、内側から心地よい涼感を作り出してくれます。

1 (Copy)▲体内の熱を発散するハーブティーを飲むことは台湾の伝統的な暑さ解消の方法です。(写真/Taiwan Scene)

《TAIPEI》では、歴史ある大稲埕の中医学体験施設「德利泰(ダーリータイ)」を訪れ、創業者の陳清鈕(チェン‧チンニョウ)氏から、お茶や料理に使える漢方や伝統生薬をご紹介いただきました。また、日常的な健康維持‧管理に役立つ漢方の選び方のコツも合わせて紹介していきます。陳氏は漢方の用途やその背景にある伝統、食文化についてより多くの人に知ってもらうために、体験型の講座も複数開催しています。

日常的な漢方を知る
4 (Copy)▲德利泰の創業者である陳清鈕氏は、どの漢方が日常生活のどういった場で応用できるのか教えてくれました。

ナツメ、クコ、ハトムギ、ハスの実などは、台湾全土の漢方専門店で簡単に手に入ります。台湾の人たちは漢方のお店と聞くと、目もくらむような匂いが充満する、古くて陰気な店舗を連想しますが、德利泰はこの印象を大きく覆しました。「興味を持ってもらうために、私たちは漢方を型破りな方法で使っています」と陳氏。

德利泰では、明るく開放的な空間に様々な生薬を展示し、店内には水耕栽培のウォールガーデンを設置するなど、これまでとは全く異なるイメージで漢方について学ぶことができます。

6 (Copy)▲德利泰では多様な漢方の起源と応用についての知識を学ぶことができます。

陳氏によれば、漢方は種類が非常に多いそうです。薬草はもちろん、動物や石、琥珀から抽出したものも薬になります。また、シナモン、胡椒、唐辛子、八角、ナツメグなど、多くの身近な香辛料も薬とみなすことができるそうです。

「香辛料もまた漢方薬の一部でもあり、代謝や消化を助けるものが多いです」と陳氏は説明します。台湾では、スパイスを綿布に包んで肉料理や汁料理に入れて煮込み、その香りや効能を引き出すのが一般的です。一方、インドでは同様のスパイスを潰したり炒めたりして、さまざまな種類のカレーとしています。

2 (Copy)▲天然の素材から抽出した漢方は日常的な不快感を緩和してくれます。

実は、台湾の家庭料理には古くから健康増進効果のある食材が使われてきました。例えば、八角は煮込み料理に、アンゼリカはスープに入れて調理することで風味が増すだけでなく、体力増強にも効果を発揮します。德利泰ではこうした昔ながらの習慣をもとに、日常に浸透した漢方を再認識してもらい、薬草や香辛料に親しんでほしいと考えています。

暑さ対策レシピ
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▲德利泰では現代人のニーズに合わせ、様々な組み合わせのお茶を提供しています。

「暑い日には冷たい飲み物を飲みたくなりますが、これは体に湿気を溜めやすくしてしまいます。代わりに花椒を摂ることで湿気を排出し、暑さを和らげることができます」と陳氏は説明します。

中国南西部の山岳地帯に自生する花椒(ホァジャオ)は、激辛で知られる四川料理の主役であり、その強烈で刺激的な香りと、舌に残るピリッとした清涼感が特徴です。花椒には発汗作用があるため、食べると体内の湿気や淀みを排出してくれます。また、肉を焼いたり、野菜を炒めたりするときに胡椒を振りかけると、味が引き締まるだけでなく、発汗を促して体の熱を冷ますことができます。

桑の葉も夏に食べるべき食材です。これを乾燥させて練ったものは、抹茶のようにすがすがしく香るお茶となり、乾燥や暑さを和らげ、むくみを解消してくれます。陳氏によれば、桑茶だけでなく桑の木も栄養価が高いのだそうです。甘酸っぱい桑の実は、食物繊維や鉄分を豊富に含むため、血液に栄養をもたらし、新陳代謝を高める効果が期待されます。

さらに、ドクダミには抗炎症作用があるため、体内の熱を下げ、痛みを緩和させる作用があるのです。ドクダミはお茶にして飲むのが最も一般的で、ミントを加えると清涼感がさらに増し、暑さを和らげながらリフレッシュすることができます。加えて、独特の薬草の香りが油っこさを消してくれるので、お茶にして飲むだけでなく、スープに入れたり、刻んで卵と一緒に炒めたりすることもあります。

3 (Copy)▲どくだみ、桑の葉で淹れたお茶は夏の暑さを和らげることができます。(写真/Plu Kaow)

また、陳氏は健康維持の秘訣について、「タピオカティーを飲む量を減らして、代わりにハーブティーを飲むといいですよ」と話します。台湾にはドリンクスタンドが多く、ノドが渇くとついつい買ってしまいがちですが、もっと健康的な選択肢があることを忘れないようにしましょう。

漢方薬を選ぶ際のヒント
漢方薬を購入する際に気を付けるべきことは何かという問いに対して、陳氏は一般の人々が信じている迷信をいくつか挙げてくれました。「素材は大きい方が良い、白い方が良い、というように見た目で選ぶお客さんが多いのですが、漢方はそういう選び方をしてはいけません」。トウキのような根茎性の薬草の場合、自生している植物の形は不揃いです。特に大きなものは、脱水して加工することもありますが、その過程で大量の栄養素が失われてしまいます。また、天然のハーブを真っ白にすることはほぼ不可能です。不自然な白色や赤色の製品はほぼ全て、人工的に漂白や染色が施されたものです。例えば、天然の花椒は濃い茶褐色をしています。不自然に鮮やかな色をしている場合は、人工的に染色されているかもしれません。

​​また、德利泰では薬草の日常的な利用を普及させるため、外観が似たものを集めたコーナーを設置し、お客さんがじっくりと比較して、違いを見分けられるようにしています。陳氏は「人々がもっと漢方薬を親しみ、先祖代々受け継がれてきた知識と伝統を継承してほしいです」と将来的な希望とビジョンを語ってくれました。

対話式の漢方体験
漢方薬の応用を推進する德利泰では、台北市商業處の指導のもと、一般の人々に漢方の知識を広めつつ、さらに外国人旅行者に現地の食事療法文化を体験できるイベントを開催しています。ここでは、外国人が漢方の基本を理解できる楽しくて参加しやすい3つのアクティビティをご紹介します。

薬籤文化
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台湾のお寺によく置かれている竹製おみくじと、対応する数字が書かれた札は、自分の病気に合った治療法を見つけるために使われています。

陳氏によると、医療が発達していなかった古代、不調に悩む人々は寺院で神々に祈って薬籤を受け取り、治療薬を処方してもらっていたそうです。おみくじに書かれた治療薬のほとんどは、当時の人々がよくかかっていた病気の治療に使われていたものです。例えば農耕社会には、農作業に関連する体調不良が蔓延していたため、薬籤にはそれに応じた処方箋が書かれていました。德利泰が提供する薬籤は、1日のうちに座っている時間が長かったり、パソコンや携帯電話を長時間見つめる生活、不規則な食生活など、現代人の悩みに対処するために作られています。

処方
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予約制で行っている処方体験は伝統的な薬杯を使って、レシピの割合通りにさまざまな薬草を量り、紙に包む行程を体験できます。德利泰では、昔ながらな処方‧調剤が体験できるよう、当時の器具を使い続けています。

食事療法体験セミナー
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不定期開催のこのセミナーでは日常的な健康維持のためのアドバイスや、漢方素材を使った健康料理、お茶の作り方を紹介するなど、一般の人々にも漢方の日常的な活用法を伝えるための活動を行っています。


德利泰
住所            大同区甘谷街26号
営業時間     10:00~18:00(日曜定休)


 

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