発表日:2022-09-22
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TAIPEI #29 (2022 秋季号)
猫の問題行動を解決するスペシャリスト
文:Jenna Lynn Cody 編集:下山敬之 写真:xFrame Official、PET BUDDY 貼心毛宝、Taiwan Scene
▲コンサルタントの仕事は、猫の機嫌や要望を理解し、飼い主とコミュニケーションをとって、猫が快適に過ごせる環境を整えることです。(写真/xFrame Official)
台湾では古くから「猫には霊感がある」、「猫のしっぽが不運を招く」といった迷信が信じられてきました。しかし、何百年という歴史の中で猫と人間の関係性は大きく変化しています。乾物や薬などを扱うお店では、ネズミ対策として猫を飼うなど、猫を家族として扱う風潮も見られます。こうした社会の変化から、現在では猫と上手にコミュニケーションがとれるよう、猫のトレーナーや動物心理学者の力が必要とされています。
▲蘇渝婷氏は20年以上に渡り、猫の問題行動のコンサルタント及び野良猫の支援をしてきました。
そこで、台湾初の猫の問題行動を専門とするコンサルタント、蘇渝婷(スー・ユーティン)氏にお話を伺いました。彼女はカナダコンパニオンアニマル科学研究所で動物の行動科学を学び、動物行動専門家協会の会員になった後、フィアフリー上級認定スペシャリストに合格。20 年以上の経験を積み、「PET BUDDY 貼心毛宝」を設立しました。
コンサルタントの仕事内容
▲コンサルタントの仕事は、猫の機嫌や要望を理解し、飼い主とコミュニケーションをとって、猫が快適に過ごせる環境を整えることです。
猫が家の周りでおしっこをする、家具をひっかくなど、してほしくない行動をする際の原因を突き止めるのがコンサルタントの仕事です。蘇氏は猫の機嫌やどんな要望を持っているのかを理解できますが、その解決方法は少し変わっています。彼女は家には訪問せず、オンラインで飼い主をサポートするのです。例えば、面談中に猫が頻繁に鳴いたり、噛みついたりするようであれば、それが解決したい問題かを尋ね、カメラを通して猫の様子を観察します。その上で、飼い主が何を解決したいのか、猫は何を求めているのか、解決のために何を変えるべきかを話し合います。
「問題は猫にはないことが多いです」と蘇氏は語ります。「問題は飼い主の予想と違っていることがあるので、私が代わりに理解し問題解決の手助けをします」。
中には猫と飼い主の性格が合わず、そこから誤解を引き起こしていることもあります。猫が凶暴や意地悪なのではなく、飼い主がエサや接し方など生活環境を変えるだけで、改善できるかもしれません。
この道を選んだキッカケ
▲自身も猫の問題行動に悩まされた経験を持つ蘇氏は、飼い主が抱える悩みを十分に理解しています。
蘇氏が猫の問題行動に関するコンサルタントを始めたのは、自身が飼い猫との関係で神経をすり減らしたからだそうです。「私は若い頃に猫を飼っていましたが、人に噛みついたり、早朝に私を起こしたりと色々問題がありました。解決をしたいと思っていましたが、当時はGoogle もなければ、この分野の専門家も台湾ではほとんどいませんでした」。
「関連する書籍も多くはありませんでした」と蘇氏は言います。「獣医学や猫の種類、猫の爪の手入れなどに関する本ばかりで、猫が問題行動を起こしたときの対処法は載っていませんでした。そこで、自分で対処しようと思ったのです」。
大人になってからも彼女は猫の世話を続けましたが、猫がトイレの外でおしっこをする、外出を嫌がるなど問題は尽きませんでした。そこで、動物行動コンサルタント国際協会のセミナーを受講し、対処方法を学びます。その経験を友人に話したところ、台湾では猫の問題行動への関心が高く、コンサルタントの需要があることを知りました。
猫との共生
▲問題行動の解決には猫のしつけだけでなく、飼い主への教育が非常に重要です。
ここ数年、飼い猫を精神科へ連れていく人が増加しています。蘇氏は、子供を作るつもりがない夫婦はペットを飼う傾向にあると言います。「夫婦は猫を自分たちの子供のように愛しているので、猫の精神状況にも気をかけているのです」。
猫を飼う家庭が増えたことで、トラブルが発生するケースも増えています。蘇氏によれば、2匹の飼い猫がケンカをするので、それをしつけるためにトレーナー用のセミナーを受講した人がいたそうです。しかし、結果的に2匹は仲良くなれず、1匹は友人に預けることになりました。
しかし、友人に引き取られた猫に問題があったわけではないと蘇氏は言います。猫がケンカをする原因は、エサや環境、性格などさまざまです。コンサルタントのゴールは、飼い主とともに猫が快適に暮らせる場所を作ることにあります。「飼い主が引き取った猫は私が一緒にしつけました。そして先週、1ヶ月半ぶりに友人に預けた猫と会わせ、今では仲良く暮らしています。飼い主も諦めて別々に飼うつもりだったそうで、仲良く暮らせることにとても感動していました」。
猫が問題行動をする原因はいくつかあり、本能的に攻撃的になったり、臆病な行動をとったりする場合があります。または飼い主が出す音や動きが怖かったり、他の猫が近づくことでストレスを感じるのかもしれません。コンサルタントはその原因を理解し、解決策を講じて、再発防止の方法を模索します。
猫とコミュニケーションをとるには、飼い主が偏見を捨てて猫と向き合うことだと蘇氏は言います。「飼い主は今起きている問題を話してくれますが、それが全てではない場合もあります。なので、私はカメラを通して実際の状況を確認しているのです。一番の問題は猫ではなく、飼い主ということもあるので、飼い主に対して指導をすることもあります」。
▲問題行動の解決には猫のしつけだけでなく、飼い主への教育が非常に重要です。
別なケースでは、30年以上飼っている猫が偏食で困っていました。「飼い主の方は、1種類の食事で十分と考えていたようですが、実はそうではありません。何年も同じエサを与え続ければいいという話ではないのです」と蘇氏は指摘します。
猫と調和のとれた暮らしをするためには、改善すべきポイントがいくつもありますが、その大半はエサに関連することです。エサの種類はもちろん、多様な選択肢を与えることも必要です。また、エサを与える時間、量に注意し、お皿もこまめに洗いましょう。もっとも大切なのは、猫の行動を観察して、好きなものと嫌いなものを見極めることです。
「猫は不機嫌になると神経質になったり、頻繁に毛づくろいをするほか、プラスチックやイヤホンなどの異物を食べたり、家具を噛んだりします。これはとても危険なことで、飲み込んだ毛糸の先に針がついていたら、命に関わることもあります」と蘇氏は警告します。
ペットから野良猫まで
▲野良猫にも愛情や思いやりが必要だと理解する人が増えたことで、台北は野良猫が生活しやすい環境になってきています。 ( 写真/Taiwan Scene )
台北ではここ数年、野良猫の数が減少しています。その理由は、台北市動物保護処が開始した台北市街猫友善照護行動方案と、蘇氏を始めとする活動家が野良猫の去勢手術を行ったためです。
台北の住民は、以前よりも野良猫の問題に積極的に取り組んでいると蘇氏は言います。「私たちは、ボランティアや地元住民の協力のおかげで、50 匹近くの野良猫の去勢に成功しました」。
しかし、野良猫の救助は簡単ではなかったと彼女は振り返ります。「猫が姿を表すまで7時間近く待ちました。中でもオレンジ色の野良猫は頭がよく、私たちの目的を理解していたので、諦めて帰ろうとするまで姿を見せませんでした」。
野良猫を助ける人も増えました。以前は若い猫や子猫を飼いたがる人が多くいましたが、最近では高齢の猫を飼う人も増えています。
「野良猫の多くは、病気にかかっているなど特別な事情を抱えています。そういった猫たちにも助けが必要だと思ったので、非公式の団体を設立しました」。蘇氏によれば、高齢の猫は落ち着いていて穏やかですが、子猫のように愛情に飢えているのだそうです。
台北の猫を救う
▲野良猫の支援は忍耐と決意が必要ですが、猫の生活をよりよくすることは蘇氏にとって非常にかけがえのない経験です。
蘇氏は台北で猫を飼いたい方に向けてのアドバイスを行っています。台北に住んでいて、猫を引き取りたい場合は、オンラインでチェックするか、内湖や瑞芳の保護施設に行く、あるいはNGO法人に問い合わせをしましょう。海外に住んでいる方で、すでに猫を飼っている方は、台北に来る際に猫を一緒に連れてくるべきです。家に置き去りにするのは避けてください。猫を選ぶ際は、性格がわかりやすいので2歳以上がオススメです。「猫の性格をあらかじめ知っておく方がいいです。子猫の場合は引き取ってからでないと分からないので、ややリスクがあります」と蘇氏は述べます。
実際、性格の相性は大変重要です。例えば、家にお客さんがよく来る社交的な人の場合、内気な猫は飼うべきではありません。また、世話をする時間が十分にとれないのであれば、子猫は避けるべきでしょう。
猫の健康を考慮することも重要です。保護施設の生活は、ごくごく基本的なものですし、健康上の問題を抱えている可能性もあります。事前に把握しておくと、後で慌てることもありませんし、すぐに対処ができます。
もし台北に短期間の滞在しかしない、あるいは居住地に帰る、他の場所へ引っ越す際に猫を連れていけないのであれば、猫を引き取るべきではありません。猫にとって家が何度も変わることはとても恐ろしいことです。「猫は20年以上生きるので、長く世話をする必要があります」。

▲野良猫の支援は忍耐と決意が必要ですが、猫の生活をよりよくすることは蘇氏にとって非常にかけがえのない経験です。
保護猫を引き取ることが難しい場合は、保護施設でボランティアをするという選択肢もあります。猫の体を洗う、エサをやる、一緒に遊ぶなどできることをしましょう。蘇氏が若い頃からボランティアをしている台北市流浪猫保護協会では、保護猫の世話をする人手を常に必要としていますし、老若男女を問わず様々な人と触れ合うことができます。
猫の問題行動を解決するスペシャリスト
文:Jenna Lynn Cody 編集:下山敬之 写真:xFrame Official、PET BUDDY 貼心毛宝、Taiwan Scene
台湾では古くから「猫には霊感がある」、「猫のしっぽが不運を招く」といった迷信が信じられてきました。しかし、何百年という歴史の中で猫と人間の関係性は大きく変化しています。乾物や薬などを扱うお店では、ネズミ対策として猫を飼うなど、猫を家族として扱う風潮も見られます。こうした社会の変化から、現在では猫と上手にコミュニケーションがとれるよう、猫のトレーナーや動物心理学者の力が必要とされています。
そこで、台湾初の猫の問題行動を専門とするコンサルタント、蘇渝婷(スー・ユーティン)氏にお話を伺いました。彼女はカナダコンパニオンアニマル科学研究所で動物の行動科学を学び、動物行動専門家協会の会員になった後、フィアフリー上級認定スペシャリストに合格。20 年以上の経験を積み、「PET BUDDY 貼心毛宝」を設立しました。
コンサルタントの仕事内容
猫が家の周りでおしっこをする、家具をひっかくなど、してほしくない行動をする際の原因を突き止めるのがコンサルタントの仕事です。蘇氏は猫の機嫌やどんな要望を持っているのかを理解できますが、その解決方法は少し変わっています。彼女は家には訪問せず、オンラインで飼い主をサポートするのです。例えば、面談中に猫が頻繁に鳴いたり、噛みついたりするようであれば、それが解決したい問題かを尋ね、カメラを通して猫の様子を観察します。その上で、飼い主が何を解決したいのか、猫は何を求めているのか、解決のために何を変えるべきかを話し合います。
「問題は猫にはないことが多いです」と蘇氏は語ります。「問題は飼い主の予想と違っていることがあるので、私が代わりに理解し問題解決の手助けをします」。
中には猫と飼い主の性格が合わず、そこから誤解を引き起こしていることもあります。猫が凶暴や意地悪なのではなく、飼い主がエサや接し方など生活環境を変えるだけで、改善できるかもしれません。
この道を選んだキッカケ
蘇氏が猫の問題行動に関するコンサルタントを始めたのは、自身が飼い猫との関係で神経をすり減らしたからだそうです。「私は若い頃に猫を飼っていましたが、人に噛みついたり、早朝に私を起こしたりと色々問題がありました。解決をしたいと思っていましたが、当時はGoogle もなければ、この分野の専門家も台湾ではほとんどいませんでした」。
「関連する書籍も多くはありませんでした」と蘇氏は言います。「獣医学や猫の種類、猫の爪の手入れなどに関する本ばかりで、猫が問題行動を起こしたときの対処法は載っていませんでした。そこで、自分で対処しようと思ったのです」。
大人になってからも彼女は猫の世話を続けましたが、猫がトイレの外でおしっこをする、外出を嫌がるなど問題は尽きませんでした。そこで、動物行動コンサルタント国際協会のセミナーを受講し、対処方法を学びます。その経験を友人に話したところ、台湾では猫の問題行動への関心が高く、コンサルタントの需要があることを知りました。
猫との共生
ここ数年、飼い猫を精神科へ連れていく人が増加しています。蘇氏は、子供を作るつもりがない夫婦はペットを飼う傾向にあると言います。「夫婦は猫を自分たちの子供のように愛しているので、猫の精神状況にも気をかけているのです」。
猫を飼う家庭が増えたことで、トラブルが発生するケースも増えています。蘇氏によれば、2匹の飼い猫がケンカをするので、それをしつけるためにトレーナー用のセミナーを受講した人がいたそうです。しかし、結果的に2匹は仲良くなれず、1匹は友人に預けることになりました。
しかし、友人に引き取られた猫に問題があったわけではないと蘇氏は言います。猫がケンカをする原因は、エサや環境、性格などさまざまです。コンサルタントのゴールは、飼い主とともに猫が快適に暮らせる場所を作ることにあります。「飼い主が引き取った猫は私が一緒にしつけました。そして先週、1ヶ月半ぶりに友人に預けた猫と会わせ、今では仲良く暮らしています。飼い主も諦めて別々に飼うつもりだったそうで、仲良く暮らせることにとても感動していました」。
猫が問題行動をする原因はいくつかあり、本能的に攻撃的になったり、臆病な行動をとったりする場合があります。または飼い主が出す音や動きが怖かったり、他の猫が近づくことでストレスを感じるのかもしれません。コンサルタントはその原因を理解し、解決策を講じて、再発防止の方法を模索します。
猫とコミュニケーションをとるには、飼い主が偏見を捨てて猫と向き合うことだと蘇氏は言います。「飼い主は今起きている問題を話してくれますが、それが全てではない場合もあります。なので、私はカメラを通して実際の状況を確認しているのです。一番の問題は猫ではなく、飼い主ということもあるので、飼い主に対して指導をすることもあります」。
別なケースでは、30年以上飼っている猫が偏食で困っていました。「飼い主の方は、1種類の食事で十分と考えていたようですが、実はそうではありません。何年も同じエサを与え続ければいいという話ではないのです」と蘇氏は指摘します。
猫と調和のとれた暮らしをするためには、改善すべきポイントがいくつもありますが、その大半はエサに関連することです。エサの種類はもちろん、多様な選択肢を与えることも必要です。また、エサを与える時間、量に注意し、お皿もこまめに洗いましょう。もっとも大切なのは、猫の行動を観察して、好きなものと嫌いなものを見極めることです。
「猫は不機嫌になると神経質になったり、頻繁に毛づくろいをするほか、プラスチックやイヤホンなどの異物を食べたり、家具を噛んだりします。これはとても危険なことで、飲み込んだ毛糸の先に針がついていたら、命に関わることもあります」と蘇氏は警告します。
ペットから野良猫まで
台北ではここ数年、野良猫の数が減少しています。その理由は、台北市動物保護処が開始した台北市街猫友善照護行動方案と、蘇氏を始めとする活動家が野良猫の去勢手術を行ったためです。
台北の住民は、以前よりも野良猫の問題に積極的に取り組んでいると蘇氏は言います。「私たちは、ボランティアや地元住民の協力のおかげで、50 匹近くの野良猫の去勢に成功しました」。
しかし、野良猫の救助は簡単ではなかったと彼女は振り返ります。「猫が姿を表すまで7時間近く待ちました。中でもオレンジ色の野良猫は頭がよく、私たちの目的を理解していたので、諦めて帰ろうとするまで姿を見せませんでした」。
野良猫を助ける人も増えました。以前は若い猫や子猫を飼いたがる人が多くいましたが、最近では高齢の猫を飼う人も増えています。
「野良猫の多くは、病気にかかっているなど特別な事情を抱えています。そういった猫たちにも助けが必要だと思ったので、非公式の団体を設立しました」。蘇氏によれば、高齢の猫は落ち着いていて穏やかですが、子猫のように愛情に飢えているのだそうです。
台北の猫を救う
蘇氏は台北で猫を飼いたい方に向けてのアドバイスを行っています。台北に住んでいて、猫を引き取りたい場合は、オンラインでチェックするか、内湖や瑞芳の保護施設に行く、あるいはNGO法人に問い合わせをしましょう。海外に住んでいる方で、すでに猫を飼っている方は、台北に来る際に猫を一緒に連れてくるべきです。家に置き去りにするのは避けてください。猫を選ぶ際は、性格がわかりやすいので2歳以上がオススメです。「猫の性格をあらかじめ知っておく方がいいです。子猫の場合は引き取ってからでないと分からないので、ややリスクがあります」と蘇氏は述べます。
実際、性格の相性は大変重要です。例えば、家にお客さんがよく来る社交的な人の場合、内気な猫は飼うべきではありません。また、世話をする時間が十分にとれないのであれば、子猫は避けるべきでしょう。
猫の健康を考慮することも重要です。保護施設の生活は、ごくごく基本的なものですし、健康上の問題を抱えている可能性もあります。事前に把握しておくと、後で慌てることもありませんし、すぐに対処ができます。
もし台北に短期間の滞在しかしない、あるいは居住地に帰る、他の場所へ引っ越す際に猫を連れていけないのであれば、猫を引き取るべきではありません。猫にとって家が何度も変わることはとても恐ろしいことです。「猫は20年以上生きるので、長く世話をする必要があります」。
保護猫を引き取ることが難しい場合は、保護施設でボランティアをするという選択肢もあります。猫の体を洗う、エサをやる、一緒に遊ぶなどできることをしましょう。蘇氏が若い頃からボランティアをしている台北市流浪猫保護協会では、保護猫の世話をする人手を常に必要としていますし、老若男女を問わず様々な人と触れ合うことができます。
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