発表日:2017-03-27
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売る本は一ジャンルだけ
愛好家が集う場に
文 _ 陳婉箐 写真 _ 施純泰
独立系書店の経営が難しい中、1種類の本のみを販売してうまくやっていける店があるのでしょうか?実は台北市にはそんな個性的な小型書店が数軒あります。独自にセレクトした本を並べた書店に、同じ趣味を持つ人たちが集まっています。こうした書店は、お金をたくさん稼ぐのが目的ではなく、純粋に大好きな書籍を紹介したいという思いがあります。本を読むだけでなく店主と話すこともでき、人との親密なコミュニケーションを楽しめるのはこうした小型書店の最も貴重な点でしょう。
鹿途中旅遊書店 世界との架け橋に
個人旅行が大好きなEvaさんは多くの旅行関連書籍を持っていて、友達が海外旅行に行くときによく「貸して」と頼まれることがありました。これがきっかけで彼女は旅行関連書籍の販売店をオープンしようと考えました。店名の頭の「鹿途中」は英語の「DeaR DeeR(親愛なる鹿さん)」に由来し、店長は中学時代のクラスメートである「鹿鹿」さんです。(「鹿途中」の中国語読みは「道半ば」を意味する「路途中」と同じ)
▲ 世界中の都市から集めたマグカップには、店主の旅行の思い出が詰まっています。(写真/施純泰)
信義区の静かな路地裏にあるこじんまりとした「鹿途中旅遊書店」は、お客さんが読書を通じて世界を知ることができるよう後押ししてくれます。旅行関連書籍の販売のほか、中古本のレンタル、交換サービスも行っていて、日本のガイドブックが一番人気だそうです。店内は店主の旅行の思い出溢れるアイテムが飾り付けられています。Evaさんが旅先で撮った写真や鹿鹿さんがデザインした絵葉書、世界中から集めたスターバックスのマグカップや磁石など、どれにも物語が詰まっています。

▲ 鹿途中旅遊書店は各地の旅行ガイドブックを販売しているほか、観光客に無料で台北の旅行情報も提供しています。(写真/施純泰)
旅行情報を他の人にシェアするのが好きなEvaさんと鹿鹿さんは、ときどき店に旅行作家や旅ブロガーを招いて特別なコースを紹介してもらうセミナーを開催していて、小さな店内がよくにぎわっています。また、店の近くで働くサラリーパーソンがたびたびここに資料を探しにきたり、近隣住民もたくさんやってきます。女性常連客の劉さんは「初の個人旅行に行こうと思ったときに、目的地をなかなか決められなかったんですが、ここで本を借りてからアイスランドに決めました」と話します。Evaさんと鹿鹿さんは店をオープンしてから同じ趣味の友達ができて、昨年末には一緒に日本へ年越し旅行に行くなど多くのメリットを享受しています。
新年を迎え次の旅先に迷っていませんか?「鹿途中」に行けばインスピレーションが湧くかもしれません。
JFK絵本屋 英語で語るストーリー
Jerryさんは大病を患ったことをきっかけに人生観が変わり、2014年に安定した仕事を辞め、奥さんのFebieさんへのプレゼントとしてJFK絵本屋をオープンしました。店名の「JFK」はJerryさん、Febieさん、子供のKayaさんの3人の名前の頭文字から取りました。より多くの子供たちの幸せな成長に寄り添いたいとの願いが込められています。
▲ 子供が読書で英語力を向上させられるよう、親子で参加する絵本読み聞かせイベントを定期的に開催しています。(写真/施純泰)
幼稚園で英語を教えていたことのあるFebieさんは「主人と日本の仙台へ旅行に行ったとき、絵本がメインの本屋さんを発見しました」と話します。その店では店主が物語を読み聞かせていて、Febieさんも同じような店を開きたいと思ったのですが、まさか本当に実現するとは思わなかったそうです。「JFK絵本屋」の内装はデザインが専門のJerryさんが腕を振るい、カラーは黄色を基調として、裏庭の天窓で自然な光を取り入れているほか、教室には元気いっぱいの子どもたちが上ったり下りたりできるように階段の付いたブリッジ状の通り道を設けてあり、室内全体に明るさと元気が満ちています。
JFK絵本屋に並べられているのは英語の絵本が中心ですが、ほかにも中国語や日本語の児童書も多少あります。ここでは3~6歳の子供を主な対象とし、親子で物語を楽しむイベントを定期的に開催しています。不動産業界で働く男性の李さんは週末に3歳の双子の娘さんを連れてレッスンにやってきます。「私は外国で育ったので、娘たちに早い段階から外国語を学ばせたいんです。ここはレッスン道具が豊富で、レッスン方法も面白いので、娘たちはもう半年以上通っています」とのことです。
JFK絵本屋は迪化街にあるレトロな建物をリノベーションした「衆芸埕」から、Jerryさんが幼少期を過ごした双連地区の旧住宅街に店を移しました。Febieさんは今も初心を忘れることなく丁寧に絵本を選び、子供たちが人生最初の本を開くのを熱心にサポートしています。
サスペンス・ミステリー専門店「偵探書屋」
「アガサは帽子をかぶってる人が来たら吠えるんだよ」。中国で記者を務めた経験のある譚端さんは、3年前に台北市大同区の台北円環(旧名・建成円環)近くに台湾初となるミステリー小説などの専門店「偵探書屋」をオープンしました。店で飼っている犬の名前も「ミステリーの女王」のアガサ・クリスティーにちなんで付けました。犬のアガサがどうして帽子が嫌いなのかは難解な謎だそうで、推理小説さながらのミステリーです。
▲ 店主が集めた中古のお宝コレクションは、店内にサスペンスのような雰囲気を添えています。(写真/施純泰)
「利益や功績を求め過ぎてはいけない」とのロマンチックな思いを抱く譚端さんは、大衆小説を広めたいと願っています。「一見役に立たないと思われるものが、実は社会の大きな役に立っています。推理小説では色んな人がキャラクターとして登場するので、読者は共感性を養うことができます。また、色んな本をバランス良く読めば、豊かな心を育めます」と語ります。
譚端さんが集めたアンティーク家具とミステリー関連のアイテムで丁寧にレイアウトした店には、ミステリーファンだけでなく、懐かしさを求めてやってくる人もいます。よく台湾へ観光に来る香港人女性の王さんは「香港にはミステリー専門書店がなく、台湾の読書友達の勧めでここに聖地巡礼に来ました。来た甲斐がありましたよ」と話します。
偵探書屋は単なる書店でなく、譚端さんがラジオをやったり、ドキュメンタリーの撮影準備をするための拠点でもあり、歴史の研究に没頭している仲間たちの姿もよく見られます。店は会員制で、会員は店内の書籍4,000冊を借りることができます。大半は欧米の小説ですが、一番人気は日本の東野圭吾の作品だそうです。ほかにも精選した小売コーナーでは携帯に便利なポケットサイズの本がとても人気とのことです。
この春おすすめの一冊

Evaさんと鹿鹿さんの一番のお薦めは『走過世界的盡頭』です。これは医師兼作家の沈佑銓氏が自費出版したもので、36時間の空の旅を経て着いた南米(ペルー、アルゼンチン、チリ)での体験と心境の変化を描いています。鹿途中旅遊書店は同店初のゲスト講師として沈氏を招いたセミナーを開いたことがあります。
鹿途中旅遊書店
嘉興街28 号
(02)2720-7532
小さいころからニューヨークで育った台湾系アメリカ人の児童書作家、グレース・リン(林珮思)氏の作品は中華風の雰囲気に溢れています。『Dim Sum for Everyone!』はチャイナタウンのレストランで食事をする家族の様子をシンプルなタッチで描いていて、Febieさんは「子供たちはこの作品から定番の点心の英語が学べ、新年の食事の場で役に立ちます」とおすすめです。
JFK絵本屋
承徳路2段187巷3号
(02)2557-3309
日本で活躍した台湾にルーツを持つ大作家、陳舜臣氏が1962年に発表した推理小説『怒りの菩薩』は、第二次大戦終結後まもなくの台湾を舞台としおり、その感動的なストーリーは当時の社会の空気を映し出しています。2016年に台湾でも中国語版が出版され、譚端さんと同志が映画、テレビドラマ用の脚本にアレンジしようとしています。
偵探書屋
南京西路262 巷11 号
(02)2559-7776
愛好家が集う場に
文 _ 陳婉箐 写真 _ 施純泰
独立系書店の経営が難しい中、1種類の本のみを販売してうまくやっていける店があるのでしょうか?実は台北市にはそんな個性的な小型書店が数軒あります。独自にセレクトした本を並べた書店に、同じ趣味を持つ人たちが集まっています。こうした書店は、お金をたくさん稼ぐのが目的ではなく、純粋に大好きな書籍を紹介したいという思いがあります。本を読むだけでなく店主と話すこともでき、人との親密なコミュニケーションを楽しめるのはこうした小型書店の最も貴重な点でしょう。
鹿途中旅遊書店 世界との架け橋に
個人旅行が大好きなEvaさんは多くの旅行関連書籍を持っていて、友達が海外旅行に行くときによく「貸して」と頼まれることがありました。これがきっかけで彼女は旅行関連書籍の販売店をオープンしようと考えました。店名の頭の「鹿途中」は英語の「DeaR DeeR(親愛なる鹿さん)」に由来し、店長は中学時代のクラスメートである「鹿鹿」さんです。(「鹿途中」の中国語読みは「道半ば」を意味する「路途中」と同じ)
▲ 世界中の都市から集めたマグカップには、店主の旅行の思い出が詰まっています。(写真/施純泰)
信義区の静かな路地裏にあるこじんまりとした「鹿途中旅遊書店」は、お客さんが読書を通じて世界を知ることができるよう後押ししてくれます。旅行関連書籍の販売のほか、中古本のレンタル、交換サービスも行っていて、日本のガイドブックが一番人気だそうです。店内は店主の旅行の思い出溢れるアイテムが飾り付けられています。Evaさんが旅先で撮った写真や鹿鹿さんがデザインした絵葉書、世界中から集めたスターバックスのマグカップや磁石など、どれにも物語が詰まっています。
▲ 鹿途中旅遊書店は各地の旅行ガイドブックを販売しているほか、観光客に無料で台北の旅行情報も提供しています。(写真/施純泰)
旅行情報を他の人にシェアするのが好きなEvaさんと鹿鹿さんは、ときどき店に旅行作家や旅ブロガーを招いて特別なコースを紹介してもらうセミナーを開催していて、小さな店内がよくにぎわっています。また、店の近くで働くサラリーパーソンがたびたびここに資料を探しにきたり、近隣住民もたくさんやってきます。女性常連客の劉さんは「初の個人旅行に行こうと思ったときに、目的地をなかなか決められなかったんですが、ここで本を借りてからアイスランドに決めました」と話します。Evaさんと鹿鹿さんは店をオープンしてから同じ趣味の友達ができて、昨年末には一緒に日本へ年越し旅行に行くなど多くのメリットを享受しています。
新年を迎え次の旅先に迷っていませんか?「鹿途中」に行けばインスピレーションが湧くかもしれません。
JFK絵本屋 英語で語るストーリー
Jerryさんは大病を患ったことをきっかけに人生観が変わり、2014年に安定した仕事を辞め、奥さんのFebieさんへのプレゼントとしてJFK絵本屋をオープンしました。店名の「JFK」はJerryさん、Febieさん、子供のKayaさんの3人の名前の頭文字から取りました。より多くの子供たちの幸せな成長に寄り添いたいとの願いが込められています。
▲ 子供が読書で英語力を向上させられるよう、親子で参加する絵本読み聞かせイベントを定期的に開催しています。(写真/施純泰)
幼稚園で英語を教えていたことのあるFebieさんは「主人と日本の仙台へ旅行に行ったとき、絵本がメインの本屋さんを発見しました」と話します。その店では店主が物語を読み聞かせていて、Febieさんも同じような店を開きたいと思ったのですが、まさか本当に実現するとは思わなかったそうです。「JFK絵本屋」の内装はデザインが専門のJerryさんが腕を振るい、カラーは黄色を基調として、裏庭の天窓で自然な光を取り入れているほか、教室には元気いっぱいの子どもたちが上ったり下りたりできるように階段の付いたブリッジ状の通り道を設けてあり、室内全体に明るさと元気が満ちています。
JFK絵本屋に並べられているのは英語の絵本が中心ですが、ほかにも中国語や日本語の児童書も多少あります。ここでは3~6歳の子供を主な対象とし、親子で物語を楽しむイベントを定期的に開催しています。不動産業界で働く男性の李さんは週末に3歳の双子の娘さんを連れてレッスンにやってきます。「私は外国で育ったので、娘たちに早い段階から外国語を学ばせたいんです。ここはレッスン道具が豊富で、レッスン方法も面白いので、娘たちはもう半年以上通っています」とのことです。
JFK絵本屋は迪化街にあるレトロな建物をリノベーションした「衆芸埕」から、Jerryさんが幼少期を過ごした双連地区の旧住宅街に店を移しました。Febieさんは今も初心を忘れることなく丁寧に絵本を選び、子供たちが人生最初の本を開くのを熱心にサポートしています。
サスペンス・ミステリー専門店「偵探書屋」
「アガサは帽子をかぶってる人が来たら吠えるんだよ」。中国で記者を務めた経験のある譚端さんは、3年前に台北市大同区の台北円環(旧名・建成円環)近くに台湾初となるミステリー小説などの専門店「偵探書屋」をオープンしました。店で飼っている犬の名前も「ミステリーの女王」のアガサ・クリスティーにちなんで付けました。犬のアガサがどうして帽子が嫌いなのかは難解な謎だそうで、推理小説さながらのミステリーです。
▲ 店主が集めた中古のお宝コレクションは、店内にサスペンスのような雰囲気を添えています。(写真/施純泰)
「利益や功績を求め過ぎてはいけない」とのロマンチックな思いを抱く譚端さんは、大衆小説を広めたいと願っています。「一見役に立たないと思われるものが、実は社会の大きな役に立っています。推理小説では色んな人がキャラクターとして登場するので、読者は共感性を養うことができます。また、色んな本をバランス良く読めば、豊かな心を育めます」と語ります。
譚端さんが集めたアンティーク家具とミステリー関連のアイテムで丁寧にレイアウトした店には、ミステリーファンだけでなく、懐かしさを求めてやってくる人もいます。よく台湾へ観光に来る香港人女性の王さんは「香港にはミステリー専門書店がなく、台湾の読書友達の勧めでここに聖地巡礼に来ました。来た甲斐がありましたよ」と話します。
偵探書屋は単なる書店でなく、譚端さんがラジオをやったり、ドキュメンタリーの撮影準備をするための拠点でもあり、歴史の研究に没頭している仲間たちの姿もよく見られます。店は会員制で、会員は店内の書籍4,000冊を借りることができます。大半は欧米の小説ですが、一番人気は日本の東野圭吾の作品だそうです。ほかにも精選した小売コーナーでは携帯に便利なポケットサイズの本がとても人気とのことです。
この春おすすめの一冊
Evaさんと鹿鹿さんの一番のお薦めは『走過世界的盡頭』です。これは医師兼作家の沈佑銓氏が自費出版したもので、36時間の空の旅を経て着いた南米(ペルー、アルゼンチン、チリ)での体験と心境の変化を描いています。鹿途中旅遊書店は同店初のゲスト講師として沈氏を招いたセミナーを開いたことがあります。
嘉興街28 号
(02)2720-7532
承徳路2段187巷3号
(02)2557-3309
南京西路262 巷11 号
(02)2559-7776
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