発表日:2017-03-27
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読書好きの桃源郷
レトロ建築で味わう本
文 _ 木華 写真 _ 施純泰
歳月の経過とともに、建物も本も古くなっていきますが、本を読む人の魂は永遠です。物語の詰まった古い建物で興味深い本を読めば、まるで建物と本が絶妙に調和したハーモニーの中に身を置いているかのように、本の内と外の世界を同時に深く味わうことができます。
▲(写真/施純泰)
好様文房 都市に潜む秘境 1920s 書店
「好様文房」は喧騒の都市に潜む秘境です。門と塀、老樹に遮られ外からは敷地内を覗くことはできないため、詳しい人だけが、大勢の人と車が行き交うMRT忠孝新生駅近くに日本式の宿舎を改築してつくった読書スペースがあることを知っています。
▲ 予約制のプライベートな図書館で空間の静けさと美しさに包まれながら、読書を楽しむことができます。(写真/施純泰)
開放的な緑の空間に位置する好様文房は予約制の公益図書館で、15歳以上であれば誰でも予約できます。建物そのものの歴史は日本統治時代の1920~1940年代にまで遡ります。公務員宿舎として使用されていた優美で質素な日本式木造建築の外観で、内部の細かいところに和洋折衷のスタイルを採用しています。台湾、フランス、日本などから集めた古いアイテムが見事に調和して、空間全体に豊かな多様性を添えつつも自然な感じを残しています。
好様文房の店長、楊淑瑜さんによると、店内の蔵書は現在4,000冊余り、デザイン、アート、建築、料理などが中心だそうです。「台日デザイン相対論」と題した展覧スペースも設けていて、2カ月に1回ごとに異なるたテーマで台湾と日本のクリエーター1名ずつの作品を展示する異文化交流を行っています。
ヒノキの濃い香りを放つ好様文房は温かく、明るく、静かな空間で、ここで読書や展示作品の鑑賞、スイーツを味わったり、あるいはただ静かに座りながら光と陰の変化する景色を眺めていても素晴らしいひとときを過ごすことができます。
古き良き時代へタイムスリップ 行冊
迪化街で最もにぎやかな街角に、こじんまりとした「1920s 書店」が静かにたたずんでいます。書店の前身は台湾初の西洋薬局「屈臣氏大薬房」で、大稲埕一帯を代表する建築物のひとつ。1998年の火事でほぼ焼け落ちましたが、所有者の子孫が建て直したため、以前の威容を取り戻しました。書店にある黒ずんで目立たない2つの古い薬品棚は書籍の陳列に使われていますが、この建物の歴史と伝承を静かに物語っています。

▲ 1920s 書店は、お客さんが本を通じて時空の垣根を越え、1920年代の繁栄を味わってほしいと願っています。(写真/施純泰)
「タイムワープの起点」とうたう1920s 書店が本の選定でアピールするのは「世界中の1920年代」です。多元的な文化の共存と幅広い思想のぶつかり合いが1920年代の最も貴重な精神でした。1920s 書店は選び抜いた本によって、読者が時空の垣根を越え、1920年代の輝かしい時代を体験し、この精神を約100年後の今に甦らせる一助になりたいと考えています。
1920s書店の顧客層は幅広いです。自分のルーツを探しにきた日本人観光客は地図集や写真集に心を奪われ、中国、香港から来た観光客は異なる史観で叙述された歴史に興味津々な一方、台湾人は地元台湾の文学、歴史に関心を寄せます。最も貴重な歴史の生き証人と言える、近くに住む高齢者が当時のことを語りにやって来ることもあります。取材当日には台湾に嫁いできた日本人女性が論文用の参考文献を探しに来る場面にも出会いました。さまざまなお客さんたちはまさに大稲埕の今と昔を映す縮図となっています。
100種類の読書方法

▲ 3階の行冊書房でひっそりと読書にふけることができます。(写真/施純泰)
1920s 書店を開け放たれた大きな扉とすれば、同書店からわずか200メートルほど離れ、延平北路に潜む「行冊」は、人々がそっと身を潜め、読書にいそしむ秘密基地と言えるでしょう。
多くの人が行冊はレストランと思い込んでいますが、実は3階の行冊書房こそが建物全体における精神の要塞です。「行冊」は中国語のことわざ「読万巻書、行万里路(万巻の書を読み、万里の路を行く)」に由来します。店の以前の所在地は、「台湾新文化運動の父」と呼ばれる蒋渭水氏が開設した大安医院の一部で、また日本統治時代の台湾において自由な言論を表明する唯一の手段だった新聞『台湾民報』の発行所本部があったところで、この建物は台湾の重要な政治、文化的発展の歴史を見つめてきました。
行冊書房は入店料を徴収する形式で、料金は全日(8時間)300元と半日(4時間)200元の2種類です。蔵書は台湾の独立系書籍、ビジュアルアートとグラフィックデザイン関連の雑誌、および文学、芸術関連書籍の3ジャンルが中心です。中でも台湾の独立系書籍が最も多いことから、独立と自由の価値観を伝承し、これにこだわる店の姿勢がうかがえます。
行冊の空間設計は蔵書同様に素晴らしいもので、1階と2階の内部には蒋渭水への敬意を表した数々の設計のアイデアが散りばめられ、心を打たれます。3階には息を呑むようなやや薄暗い、密やかな空間が広がっています。ここでは立ちながら、座りながら、仰向けになりながら、うつ伏せになりながら読書ができる巧みな設計が施されていて、「100種類の読書方法」を試してほしいとの思いが込められています。ここで心と体を落ち着けながら一冊の本を大切に読めば、他では味わえない読書体験が得られるでしょう。
この春おすすめの一冊

どうすれば書店と本がお互いに引き立つ景観を生むことができるでしょうか?『世界で最も美しい書店』は世界で最も美しい書店20軒を紹介していて、書店に対する既成概念を取り除いてくれます。好様文房には同書の中国語、日本語版があります。1冊の良書にまとまった書店を繰り返し楽しみたい人におすすめです。
好様文房
臨沂街27巷1号
(02)2341-9662
『紫色大稲埕』は芸術家の謝里法氏が日本統治時代の近代美術史を描いた小説です。台湾の重要な芸術家だった郭雪湖氏、陳澄波氏と大稲埕で当時有名だった商人、上流階級の人物との複雑に絡み合った関係を、史実に基づいた半フィクションの形で生き生きと描写しています。大稲埕全盛期の様子を知りたい人におすすめです。
1920s 書店
迪化街1 段34号
(02)2556-2520
台湾の作家、廖玉蕙氏の『後来』は温かく深いタッチで廖氏と母親との思い出を描いています。幼いころに母親に何度も「その後は?」と聞いていた女の子が母となり、自身の母親を亡くしてから、多くのことが「その後」になってようやく分かり、「その後」まで生きられないことも多いことに気付きます。「今」を生きる全ての人におすすめです。
行冊
延平北路2 段33 号
(02)2558-0915
レトロ建築で味わう本
文 _ 木華 写真 _ 施純泰
歳月の経過とともに、建物も本も古くなっていきますが、本を読む人の魂は永遠です。物語の詰まった古い建物で興味深い本を読めば、まるで建物と本が絶妙に調和したハーモニーの中に身を置いているかのように、本の内と外の世界を同時に深く味わうことができます。
好様文房 都市に潜む秘境 1920s 書店
「好様文房」は喧騒の都市に潜む秘境です。門と塀、老樹に遮られ外からは敷地内を覗くことはできないため、詳しい人だけが、大勢の人と車が行き交うMRT忠孝新生駅近くに日本式の宿舎を改築してつくった読書スペースがあることを知っています。
開放的な緑の空間に位置する好様文房は予約制の公益図書館で、15歳以上であれば誰でも予約できます。建物そのものの歴史は日本統治時代の1920~1940年代にまで遡ります。公務員宿舎として使用されていた優美で質素な日本式木造建築の外観で、内部の細かいところに和洋折衷のスタイルを採用しています。台湾、フランス、日本などから集めた古いアイテムが見事に調和して、空間全体に豊かな多様性を添えつつも自然な感じを残しています。
好様文房の店長、楊淑瑜さんによると、店内の蔵書は現在4,000冊余り、デザイン、アート、建築、料理などが中心だそうです。「台日デザイン相対論」と題した展覧スペースも設けていて、2カ月に1回ごとに異なるたテーマで台湾と日本のクリエーター1名ずつの作品を展示する異文化交流を行っています。
ヒノキの濃い香りを放つ好様文房は温かく、明るく、静かな空間で、ここで読書や展示作品の鑑賞、スイーツを味わったり、あるいはただ静かに座りながら光と陰の変化する景色を眺めていても素晴らしいひとときを過ごすことができます。
古き良き時代へタイムスリップ 行冊
迪化街で最もにぎやかな街角に、こじんまりとした「1920s 書店」が静かにたたずんでいます。書店の前身は台湾初の西洋薬局「屈臣氏大薬房」で、大稲埕一帯を代表する建築物のひとつ。1998年の火事でほぼ焼け落ちましたが、所有者の子孫が建て直したため、以前の威容を取り戻しました。書店にある黒ずんで目立たない2つの古い薬品棚は書籍の陳列に使われていますが、この建物の歴史と伝承を静かに物語っています。
▲ 1920s 書店は、お客さんが本を通じて時空の垣根を越え、1920年代の繁栄を味わってほしいと願っています。(写真/施純泰)
「タイムワープの起点」とうたう1920s 書店が本の選定でアピールするのは「世界中の1920年代」です。多元的な文化の共存と幅広い思想のぶつかり合いが1920年代の最も貴重な精神でした。1920s 書店は選び抜いた本によって、読者が時空の垣根を越え、1920年代の輝かしい時代を体験し、この精神を約100年後の今に甦らせる一助になりたいと考えています。
1920s書店の顧客層は幅広いです。自分のルーツを探しにきた日本人観光客は地図集や写真集に心を奪われ、中国、香港から来た観光客は異なる史観で叙述された歴史に興味津々な一方、台湾人は地元台湾の文学、歴史に関心を寄せます。最も貴重な歴史の生き証人と言える、近くに住む高齢者が当時のことを語りにやって来ることもあります。取材当日には台湾に嫁いできた日本人女性が論文用の参考文献を探しに来る場面にも出会いました。さまざまなお客さんたちはまさに大稲埕の今と昔を映す縮図となっています。
100種類の読書方法
▲ 3階の行冊書房でひっそりと読書にふけることができます。(写真/施純泰)
1920s 書店を開け放たれた大きな扉とすれば、同書店からわずか200メートルほど離れ、延平北路に潜む「行冊」は、人々がそっと身を潜め、読書にいそしむ秘密基地と言えるでしょう。
多くの人が行冊はレストランと思い込んでいますが、実は3階の行冊書房こそが建物全体における精神の要塞です。「行冊」は中国語のことわざ「読万巻書、行万里路(万巻の書を読み、万里の路を行く)」に由来します。店の以前の所在地は、「台湾新文化運動の父」と呼ばれる蒋渭水氏が開設した大安医院の一部で、また日本統治時代の台湾において自由な言論を表明する唯一の手段だった新聞『台湾民報』の発行所本部があったところで、この建物は台湾の重要な政治、文化的発展の歴史を見つめてきました。
行冊書房は入店料を徴収する形式で、料金は全日(8時間)300元と半日(4時間)200元の2種類です。蔵書は台湾の独立系書籍、ビジュアルアートとグラフィックデザイン関連の雑誌、および文学、芸術関連書籍の3ジャンルが中心です。中でも台湾の独立系書籍が最も多いことから、独立と自由の価値観を伝承し、これにこだわる店の姿勢がうかがえます。
行冊の空間設計は蔵書同様に素晴らしいもので、1階と2階の内部には蒋渭水への敬意を表した数々の設計のアイデアが散りばめられ、心を打たれます。3階には息を呑むようなやや薄暗い、密やかな空間が広がっています。ここでは立ちながら、座りながら、仰向けになりながら、うつ伏せになりながら読書ができる巧みな設計が施されていて、「100種類の読書方法」を試してほしいとの思いが込められています。ここで心と体を落ち着けながら一冊の本を大切に読めば、他では味わえない読書体験が得られるでしょう。
この春おすすめの一冊
どうすれば書店と本がお互いに引き立つ景観を生むことができるでしょうか?『世界で最も美しい書店』は世界で最も美しい書店20軒を紹介していて、書店に対する既成概念を取り除いてくれます。好様文房には同書の中国語、日本語版があります。1冊の良書にまとまった書店を繰り返し楽しみたい人におすすめです。
臨沂街27巷1号
(02)2341-9662
迪化街1 段34号
(02)2556-2520
延平北路2 段33 号
(02)2558-0915
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