発表日:2017-03-22
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歴史に翻弄された台湾っ子
湾生、故郷へ帰る
文 _ 蔡嘉瑋
写真 _ 陳正国、蔡嘉瑋
現在、台北市中山区の建成国中(中学校)がある場所には日本統治時代、「建成尋常小学校」(建成小)が存在していました。同校には台北中心部と大稲埕地区一帯の日本人児童と少数の台湾人児童が通っていました。当時、校内にはプールが2 つ、土俵が1 つあり、恵まれた環境から優秀なスポーツ選手を数多く輩出しました。そんな建成小は、時の流れとともに「湾生」たちにとって懐かしさと思い出が詰まった場所となっているのです。
「湾生」とは、日本統治時代(1895 ~ 1945)に台湾で生まれた日本人を指します。かつて建成小で学んだ湾生たちは、第2 次世界大戦後に日本へ引き揚げましたが「台湾で生まれた」ことは彼らの人生の中で最も大切な記憶であり続けています。そして現在、台湾の政治情勢が開放的になったことを受けて建成小の卒業生たちは同窓会を設立。3 年に1 度、ともに母校を訪れ、建成中学校の在校生と交流を深めています。

▲ 年に1 度の集まりで思い出を語る建成小学校同窓会会長の新井基也さん。(写真/蔡嘉瑋)
学び舎で
当時に思いを馳せる
2001 年、「昔なじみの同級生たち」が初めて台湾へ帰った際は、親族を含め200 人近くが集まり、活況を呈しました。しかし、今年は多くの卒業生が体力や健康の問題から来台が叶わず、90歳を目の前にした8 人が参加するのみとなりました。ただ、参加者が「これは私が座っていた席だよ!」と歓声を上げた赤レンガ造りのかつての学び舎は、今も多くの学生が学んでおり、同じ空間の中で新旧の時代が交錯しているかのようでした。校舎のレンガに手を触れる卒業生たちの姿は、世代を超えて受け継がれる学び舎が今と昔の思い出をつなぐありさまを映し出していました。

▲ 日本統治時代に建成小で学んだ湾生の皆さん。再び台北へ戻り、思い出を温めました。(写真/陳正国)
今年88 歳になる新井基也さんも建成小の卒業生で、同校の同窓会会長を務めています。当時を振り返る新井さんは、相撲の学校代表だったことを誇らしげに語ってくれました。スポーツ好きな彼は、かつて存在した運動場とプールの位置を今も覚えているそうです。隣に座る大野博也さんも「子どもの頃は学校の運動場がとても好きでした。特に運動会でやった騎馬戦と棒倒し競争のことは今でもよく覚えていますよ!」と話してくれました。
今回の同窓会では、学校側が卒業生のために日本統治時代の建成小周辺の古い地図を用意しました。この地図は第15 期卒の徳丸薩郎さんによって作成されたものです。地図の中に学校やかつて暮らした家を見つけたおじいちゃん、おばあちゃんたちは、当時の通学路や同級生たちとよく遊んだ場所を興奮した様子で指差していました。今年で85 歳の中田芳子さんは子どもの頃、現在の中山北路に住んでいたそうです。彼女は地図にあった「徳丸理髪店」を指差し、「ここが私の家よ!」と声を上げました。長い間、台湾を訪れていなかった中田さんは、中山北路に立ち並ぶ高層ビルの中に当時住んでいた家の向かいにあった林田桶店が昔と変わらず建っているのを見て、「この店の店主とはとても仲の良い友だちだった」と話してくれました。親友は既にこの世を去りましたが、その記憶は永遠に忘れ去られることはありません。

▲ 松江市場で当時大好きだった台湾の果物を選ぶ湾生の皆さん。(写真/陳正国)
同窓会に参加した8 人の卒業生のほか、会場には余分に席が一つ用意されました。それは昨年亡くなったばかりの岡部茂さんのためのものでした。生前、たびたび訪台していた岡部さんは、台湾のあれこれについて亡くなる直前まで気にかけていたそうです。そんな岡部さんが語る台湾の話を子どもの頃から聞いていた孫娘、鈴木千枝さんが今回の同窓会に参加しました。「祖父は生涯、自分の故郷は台湾であり、台湾に生まれたことは本当に素晴らしいことだと話していました」と言う彼女の言葉を聞くと、主のいない席上に、大きな誇りと尽きることのない思い出が満ちているように感じられました。どれほど時間が流れても、建成小には岡部さんのための席が永遠に残ることでしょう。湾生の皆さんが談笑する中、過ぎ去った当時の記憶が生き生きとよみがえり、彼らが語る思い出とその眼差しを通じてかつての台北の姿をしのぶことができました。彼らの笑顔ひとつひとつの背後で過去の歴史の傷跡がゆっくりと癒え、この都市に新たな意味を持つ歴史が生み出されていくのです。
湾生、故郷へ帰る
文 _ 蔡嘉瑋
写真 _ 陳正国、蔡嘉瑋
現在、台北市中山区の建成国中(中学校)がある場所には日本統治時代、「建成尋常小学校」(建成小)が存在していました。同校には台北中心部と大稲埕地区一帯の日本人児童と少数の台湾人児童が通っていました。当時、校内にはプールが2 つ、土俵が1 つあり、恵まれた環境から優秀なスポーツ選手を数多く輩出しました。そんな建成小は、時の流れとともに「湾生」たちにとって懐かしさと思い出が詰まった場所となっているのです。
「湾生」とは、日本統治時代(1895 ~ 1945)に台湾で生まれた日本人を指します。かつて建成小で学んだ湾生たちは、第2 次世界大戦後に日本へ引き揚げましたが「台湾で生まれた」ことは彼らの人生の中で最も大切な記憶であり続けています。そして現在、台湾の政治情勢が開放的になったことを受けて建成小の卒業生たちは同窓会を設立。3 年に1 度、ともに母校を訪れ、建成中学校の在校生と交流を深めています。
▲ 年に1 度の集まりで思い出を語る建成小学校同窓会会長の新井基也さん。(写真/蔡嘉瑋)
学び舎で
当時に思いを馳せる
2001 年、「昔なじみの同級生たち」が初めて台湾へ帰った際は、親族を含め200 人近くが集まり、活況を呈しました。しかし、今年は多くの卒業生が体力や健康の問題から来台が叶わず、90歳を目の前にした8 人が参加するのみとなりました。ただ、参加者が「これは私が座っていた席だよ!」と歓声を上げた赤レンガ造りのかつての学び舎は、今も多くの学生が学んでおり、同じ空間の中で新旧の時代が交錯しているかのようでした。校舎のレンガに手を触れる卒業生たちの姿は、世代を超えて受け継がれる学び舎が今と昔の思い出をつなぐありさまを映し出していました。
▲ 日本統治時代に建成小で学んだ湾生の皆さん。再び台北へ戻り、思い出を温めました。(写真/陳正国)
今年88 歳になる新井基也さんも建成小の卒業生で、同校の同窓会会長を務めています。当時を振り返る新井さんは、相撲の学校代表だったことを誇らしげに語ってくれました。スポーツ好きな彼は、かつて存在した運動場とプールの位置を今も覚えているそうです。隣に座る大野博也さんも「子どもの頃は学校の運動場がとても好きでした。特に運動会でやった騎馬戦と棒倒し競争のことは今でもよく覚えていますよ!」と話してくれました。
今回の同窓会では、学校側が卒業生のために日本統治時代の建成小周辺の古い地図を用意しました。この地図は第15 期卒の徳丸薩郎さんによって作成されたものです。地図の中に学校やかつて暮らした家を見つけたおじいちゃん、おばあちゃんたちは、当時の通学路や同級生たちとよく遊んだ場所を興奮した様子で指差していました。今年で85 歳の中田芳子さんは子どもの頃、現在の中山北路に住んでいたそうです。彼女は地図にあった「徳丸理髪店」を指差し、「ここが私の家よ!」と声を上げました。長い間、台湾を訪れていなかった中田さんは、中山北路に立ち並ぶ高層ビルの中に当時住んでいた家の向かいにあった林田桶店が昔と変わらず建っているのを見て、「この店の店主とはとても仲の良い友だちだった」と話してくれました。親友は既にこの世を去りましたが、その記憶は永遠に忘れ去られることはありません。
▲ 松江市場で当時大好きだった台湾の果物を選ぶ湾生の皆さん。(写真/陳正国)
同窓会に参加した8 人の卒業生のほか、会場には余分に席が一つ用意されました。それは昨年亡くなったばかりの岡部茂さんのためのものでした。生前、たびたび訪台していた岡部さんは、台湾のあれこれについて亡くなる直前まで気にかけていたそうです。そんな岡部さんが語る台湾の話を子どもの頃から聞いていた孫娘、鈴木千枝さんが今回の同窓会に参加しました。「祖父は生涯、自分の故郷は台湾であり、台湾に生まれたことは本当に素晴らしいことだと話していました」と言う彼女の言葉を聞くと、主のいない席上に、大きな誇りと尽きることのない思い出が満ちているように感じられました。どれほど時間が流れても、建成小には岡部さんのための席が永遠に残ることでしょう。湾生の皆さんが談笑する中、過ぎ去った当時の記憶が生き生きとよみがえり、彼らが語る思い出とその眼差しを通じてかつての台北の姿をしのぶことができました。彼らの笑顔ひとつひとつの背後で過去の歴史の傷跡がゆっくりと癒え、この都市に新たな意味を持つ歴史が生み出されていくのです。
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