発表日:2019-05-16
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賣麵炎仔 切仔麵の専門店
ミシュランビブグルマンを獲得した切仔麵
文/Rick Charette 写真/鄧毅駿 編集/下山敬之
店主の葉海川(イェハイチュアン)さんの人生最大のサプライズが今年の春に起こりました。
葉さんは台北で一番古い街であり、伝統的な風情の残る大稻埕で伝統的な料理である切仔麵(チェザイミェン)のお店を経営しています。切仔麵はさっぱりとした味のスープに柔らかい細麺と具材がたくさん入った料理です。こうした料理は軽食を意味する小吃(シャオチー)と呼ばれますが、数ある小吃の中でも台湾で一番人気の料理です。
そうしたお店の店主葉さんに起きたサプライズは2019年のミシュランガイド台北に自身のお店「賣麵炎仔(金泉小吃店)」が掲載されたことです。その後、お店は今まで以上に繁盛するようになり、忙しい日々が続くようになりました。忙しさの合間を縫って実際にミシュランの雑誌を手にとり、そこに記載されていたお店の歴史やメニュー、サービス精神といった内容を読んで初めてミシュランをもらうことの栄誉を理解したそうです。▲賣麵炎仔は80年の歴史があり、現在は三代目の葉海川さんが店主を務めています。
賣麵炎仔の物語 「家族の残した伝統」
賣麵炎仔は安西街(アンシージエ)という通り沿いにあり、この道は観光スポットの大稻埕の中心にある迪化街(ディーホァジエ)という通りと平行しています。この辺りは1850年頃に貿易の拠点として栄え、台北で一番賑やかな場所となりました。
「私は大稻埕で生まれ育ちました」葉さんは話します。「お店は約80年前、祖父が涼州街(リャンジョウジエ)という迪化街と交差する通りでオープンしました」。通りの向かい側には有名な布袋劇が行われる場所があり、商業だけでなく娯楽も楽しめるの場として賑わいました。しかし、70年代に入ると道路の拡張工事が行われ、元のお店は面積を縮小しなければならなかったために、現在の場所に移転することを決めました。それが葉さんの実家です。元々2階建てだった建物を4階建てに増築し、最初は1階のみだったお店も後に2階部分も改装されました。
葉さんは続けて「安西街の向かい側には元々雑貨店と三合院という伝統的な建築様式の建物がありましたが、後に取り壊されてしまい、小学校と歩道ができました」と話します。その後、台湾の景気は悪化していきますが、それでも常連さんはお店に集まり続けました。
そして、現在では多くの人が憩いの場や、それぞれの自宅のようにお店を使っています。「このお店は居酒屋みたいな感じです」葉さんは言います。「それぞれの家に集まるのではなく、多くの人が友達を連れてぶらりと立ち寄ってくれます。地元の人は食事の際にお酒を飲むことは多くありませんが、日本人のお客さんはよくビールを買って食事と一緒に楽しんでいますね」。
今年で51歳になる葉海川さんは三代目店主であり、家長でもあります。お店を継ぐ前は会計関連の仕事をしていましたが、祖父の残したお店を守るためにお店を継ぐことを決意しました。経営理念と長年のレシピを受け継ぎ、常連さんやご近所の方とも良好な関係を維持し続けています。「祖父から料理を学び、その言いつけどおり料理を作り続けてきました」葉さんは話します。「小吃はもともと中国の福建(フージエン)から伝わったものですが、それが台湾人に合う味へと改良され、今では台湾料理になりました。祖父の味を残し続け、それを台湾人、外国人問わず多くの人に提供することが私たちの仕事です」。
「現在の店主は私ですが、このお店は祖父のお店です」葉さんは「賣麵炎仔」の看板を指差します。「お店の名前は『麺を売る炎仔﹄という意味です。炎仔は祖父の幼少期のあだ名で、幼い頃からキッチンで遊ぶことや料理が好きだったことから『火遊び好きな少年﹄という意味で付けられました」。▲小皿のおかずは既製品などを使わず、全て店主自ら準備をして提供しています。
賣麵炎仔のメニュー
葉さんは「食材の鮮度はとても重要です」と話します。「お客さんは他のお店とのちょっとした味の違いにも気づきます」。そのため、葉さんは長い付き合いがあり、近所でもある永楽(ヨンラー)市場から麺を仕入れています。
昔から切仔麵は朝や昼に食されていたため、お店の営業時間は朝8時から午後3時までとなっています。しかし、食材の鮮度を保つために葉さんは朝3時から食材を受け取り、下ごしらえを始めます。「お客さんは7時半にはお店に来るので、すぐにお客さんを迎えられるよう前倒しで準備をしなければいけません」。▲料理の新鮮さを重視しているので、食材はすべてその日に調理されます。
「祖父のレシピはとても古いですが、麺も具も一切変えていません」葉さんは言います。切仔麵の「切仔」とは湯切りで水気を飛ばす動作を表していて、台湾では麺は主食として単品で食べる事は少なく、ご飯と一緒に食べることが多いです。おかずに近いこともあり、お客さんの好みに合わせて具が選べるよう10種類も用意されています。
切仔麵は肉燥という肉のそぼろ、もやし、らっきょうに似たエシャロットや醤油などが入っていますが、最大のポイントは麺で、豚の脂を加えることで濃厚な味わいと滑らかな食感を作り出しています。「豚の脂は少なめがいいですが、全く入れないと麺の食感が変わってしまいます」と葉さんは話します。また、スープも重要で賣麵炎仔では豚肉、鶏肉、ハツ、豚のレバー、コウイカを使った豚骨スープをベースにしています。スープを入れない乾麺の場合は、麺にかけるソースが味の決め手になります。普通の切仔乾麵はソースをかけませんが、賣麵炎仔では甘みと若干の酸味があるソースをかけます。
他にもレバーやイカ、といったミシュランで紹介された料理もあれば、米粉(ビーフン)や台湾風おこわもあります。米粉やおこわには豚肉のそぼろをかけて食べるのが一般的ですが、葉さんは祖父の教えを守り豚肉の骨を取ること、脂分はできるだけ落とすことを徹底しています。これらは時間がかかるので他のお店はしていません。
葉さんが幼い頃はあちこちに切仔麵のお店があったそうですが、現在は手間もかかることからお店の数は減っています。▲このお店のメニューは昔ながらの懐かしい味がするので、地元の人たちに深く愛されています。
ミシュラン効果— 掲載後の変化
ミシュランに掲載されたことでご家族はとても喜んだそうです。「おそらく祖父も驚いていると思います。そのくらい繁盛しています」葉さんは言います。「ミシュランに掲載されてからは、常連以外にも外国人観光客がたくさん来るようになりました」葉さんはミシュラン効果でこれほどの長蛇の列ができたことに驚いたそうです。▲店主の葉さんはミシュランに掲載された後もこれまでと変わらず、真面目に全ての料理の味を保ち続けていくと話します。
葉さんは祖父の残した伝統を守り続け、今でもお店にメニューなどは置いていません。メニューを代わりにお店の前に並ぶお客さんたちに順番に声をかけ、その日のメニューを知らせた上で注文を取る方法に慣れているからです。こうした注文方法は中華圏の人には一般的ですが、西洋や英語圏の人からすると簡単ではありません。しかし、ミシュランに掲載されてからは外国のお客さんも基本的なメニューを知っていたり、人数が多ければお客さんの中に英語が話せる人がいるので、そういった人たちに助けてもらうことで外国人観光客も注文ができるようになっていますと葉さんは話します。
「台北に観光で来られた際は、ぜひこの伝統的な料理を食べにお店に足を運んで下さい。祖父の代から続く伝統的な料理を味わうことができます」。
賣麵炎仔(マイミエンイェンザイ)
台北市大同区安西街106号
08:00—15:00
ミシュランビブグルマンに掲載された賣麵炎仔
このお店は開業して80年になる年配の台北人は誰もが知っているお店です。年季の入った建物は決して美しいとは言えませんが、その魅力は衰えることはなく多くの人を惹きつけています。提供されるメニューは油そばと言われる油麺、米粉、肝臓についた肉をスライスした黒白切などがあります。他にも鶏と豚肉、内蔵で出汁を取り、さっぱりとした味に仕上げたスープ、焼いたお肉や鶏肉を茹でた白斬雞、イカなどおかずも外せない一品です。また、がパリパリになるまで焼いた豚肉は午前10時以降に提供されます。
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