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異国情緒あふれる街、天母 (TAIPEI Quarterly 2023 夏季号 Vol.32)

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発表日:2023-06-22

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TAIPEI #32 (2023 夏季号)


異国情緒あふれる街、天母


文:Jean Hsieh、Tina Teng 
編集:下山敬之 
写真:Wei Wen Chen、台北市商業処、李清志


IMG_9649 (Copy)▲天玉街にあるスターバックスです。あそこは昔、住宅でした。(写真‧李清志)

天母は台北市北部の士林区に位置する地区で、台北で最も早くに形成された外国人居住区として知られています。現在では、アメリカ人と日本人のインターナショナルスクールや多様な外国文化、ユニークなショップ、レストランなどがある独特な雰囲気のコミュニティとなっています。今回は、實踐大学建築学科の准教授であり、作家でもある李清志(リー・チンズー)氏と彼の出身である天母の街を散歩しながら、そのライフスタイルや面白い空間についてお話を伺いました。

23-05-11TPE MAG 103 (Copy)▲天母で生まれた李清志氏は、小さい頃から異国の雰囲気があふれるこの街で暮らしてきました。

記憶の中にあるアメリカの小さな町
李氏は、最近『大叔Ojisan on the Road』という書籍を出版しました。この本は李氏とその友人が地図を片手にジムニーを運転し、美しい台湾の海岸沿いを探索するという、アメリカの国道66号線(Route 66)を辿るような旅の記録です。

李氏によれば、この海岸沿いを巡る旅は、自身が長年続けている「アメリカ式のライフスタイル」と似ているのだそうです。彼は自身のことを天母の「長老」であると冗談めかして言います。彼は小さい頃から天母に住んでいて、父親はアメリカンスクールで教師をしていました。彼の記憶に残る幼少期の天母には、アメリカと日本のインターナショナルスクールがあり、近所には多くの外国人が住んでいたことから、アメリカの小さな町のように映ったそうです。

彼の家は煙突のある洋風の一戸建てで、隣家と共用の庭がありました。祝日もアメリカに合わせていたので、クリスマスには松の木をクリスマスツリーにするなど、伝統的なアメリカ文化が息づいていました。

今日に至っても、天母にはアメリカの祝日の伝統が残っています。例えば、毎年ハロウィンになると、各家庭では珍しい外国のキャンディーを用意し、子供たちの来訪に備えます。

天母を歩く
李氏の記憶では、天母はあまり雨が降りません。それについて、こんな話があります。1950年代、米軍が台湾に駐留し、住居をどこに建設するか検討した際、気象局 (交通部中央氣象局)が研究した天母の地理環境に基づいて判断をしました。天母は日当たりの良い斜面に位置し、風向きや湿度などの要素からも最も快適な環境が揃っていたのです。

23-05-11TPE MAG 154 (Copy)▲天母には今でも異国情緒あふれる洋式の建物が残っています。

かつて軍人たちが暮らした米軍眷村は、中山北路七段の斜面に沿った通りにあります。お店が集中しているのもこのエリアで、中でも50年以上の歴史を持つ「喬治皮鞋」。他にも外来宗教の象徴である天母天主堂(カトリック教会)もこのエリアにあります。メインストリートから伸びる路地には洋風の一戸建てが並び、天母を自然とアメリカの町のようなコミュニティへと発展させています。中山北路七段の坂道を上っていくと、よりその異国情緒が感じられるでしょう。

23-05-11TPE MAG 137 (1) (Copy)▲天母公園から緑の木々が生い茂る遊び場へと続く歩道は、李氏オススメの散歩コースです。

もし、一人きりで天母の静かな雰囲気を堪能したい場合は、天母公園から渓流の流れる歩道に沿って下っていくのが李氏のおすすめです。その先にある東和公園と天和光苑は、多くの緑が残る自然の遊び場で、都会の喧騒から離れた心地よい時間を過ごせます。

橘園堂
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▲伝説的なオーナーJoeが開いた橘園堂は天母初のビアホールで、アメリカ人に高い人気を誇っていました。

中山北路七段にある「橘園堂」は天母で最初のビアパブとして知られています。天母の伝説的な人物であるJoeが自ら建築や装飾を行い、魅力的な建物に仕上げました。このJoeという人物は、多くの外国人が住むかつての天母でアメリカ車の修理工房を開設。その後、修理工房の向かいに天母初となるビアパブ橘園堂をオープンし、多くのアメリカ人から愛されました。そして、 1980年代には中山北路七段から忠誠路に至るまで、多くのビアレストランが林立し、台北にビアパブブームを巻き起こしました。李氏によれば、子供の頃は道路に向かって手を伸ばすと、車が止まり、好きな所へ乗せていってくれるという、アメリカのドラマのワンシーンのような光景が広がっていたそうです。現在、橘園堂は一般公開されていませんが、奇妙で趣もある外観だけでも一見の価値があります。

天玉街のスターバックス
現在の天玉街にあるスターバックスの前身は、20年以上も経営されてきたハーゲンダッツです。この建物は、かつての天母の住居を改装したもので、当時の住居は大半が平屋か2階建ての一戸建てで、広い庭がついていました。今日でも多くの家が、昔ながらのアメリカ式住宅の外観を保っていて、スターバックスも同様に完璧な状態で保存されています。中山北路七段のロータリーから天玉街へ進むと、街路樹と洋風の建物が交錯するサンフランシスコのような町並みが広がります。

天母天主堂
1960年に建てられた中山北路七段の天母天主堂(カトリック教会)は、以前は多くの外国人の信者たちが集まる場所でした。教会では毎日朝8時に鐘を鳴らし、人々に教会への参加を呼びかけていたので、多くのアメリカ人が集まりました。この通りではアメリカから輸入された食料品、衣料品、生活必需品などを販売していたお店も多く、かつてのアメリカの小さな町を象徴する場所となっています。

走馬啡  WENISM CAFE
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▲広場と公園を繋ぐカジュアルなコーヒーショップ「走馬啡」。


コーヒーが大好きな李氏ですが、彼のコーヒー哲学は最高級のコーヒーを追求するのではなく、その時間を楽しむ事を目的としています。

そんな李氏がオススメするカフェは「走馬啡」です。奇妙な建物の1階に位置するこのお店は、李氏の友人である建築士の邱文傑(チョウ・ウェンジエ)氏によって設計されました。邱氏はこの建物を「違章建築的LV(違法建築のLV)」と呼んでいて、台湾のアーケードと仮設住宅など奇妙な特徴を組み合わせた空間となっています。このカフェがオープンしてからは、隣接する空き地や公園などで座ってコーヒーを楽しむことができるようになり、活気に満ちた雰囲気が近隣の路地にも広がっています。

🍺2023 天母啤酒節
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▲天母啤酒節 (
写真・台北市商業処)

天母では1980年代にビアパブブームが起こった事から、天母啤酒節(天母ビアフェスティバル)というイベントを開催しています。今年は6月21日から7月23日まで天母運動公園で開催される予定です。天母商圈や地元のエスニック料理店、デパートやビールブランドなどが結集し、テーマ別のマーケットやステージ、写真撮影用のオブジェ、限定ビールなどを通じて、天母のビールブームを再び盛り上げています。これは商店街を活気づけるだけでなく、ビアホールが連なり、屋外で多くの人たちが楽しんでいた古き良き時代の天母を思い出させてくれます。

 

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