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台北の映画史を辿る (TAIPEI Quarterly 2023 夏季号 Vol.32)

アンカーポイント

発表日:2023-06-22

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TAIPEI #32 (2023 夏季号)


台北の映画史を辿る

文:Jenna Lynn Cody 
編集:下山敬之  
写真:Taiwan Scene、佳佳唱片行、台北双喜映画、台北賓館、圓山大飯店


1998年以来、台北映画祭はアジアの重要な映画祭の1つであり、世界中から映画業界の重鎮やコアな映画ファンたちが集まります。この映画祭には新人映画監督のデビュー作、または2作目の長編映画を応募する国際コンペティション部門があります。その主な焦点は国内に向けられていて、対象となるのは台湾の映画製作者です。そこで台湾の映画製作の才能を披露しているほか、賞金NT$1,000,000のグランプリなどを通じて台湾の映画業界にイノベーションを生むことを目的としています。

台北映画祭は、台湾映画の発展と観客の増加、人々と映画芸術の関わりを深める上で重要な役割を果たしています。映画上映や名誉ある賞の授与だけでなく、映画関連のさまざまな活動も展開しているのです。その地元の映画産業への高い貢献度から、台北市政府から資金提供を受ける台湾初の映画祭となりました。2007年には、台北文化基金会内に恒久的なオフィスを構え、その存在を確固たるものにしています。

1687144105503▲店内は映画のポスターやポストカードでいっぱいなので、お気に入りの商品を探してみましょう。(写真‧Taiwan Scene)

毎年初夏の数週間、台北は「映画熱」が高まる期間です。上映会や関連イベントに参加するだけでなく、あらゆる映画のポスターが手に入るレコードショップ、台湾映画に登場する豪華な建物など、台北の映画関連のスポットを巡ってみてはいかがでしょうか。

台北映画祭の公式サイトをチェック!

映画関連のお宝
色瞇瞇海報龍
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▲映画『タイタニック』のポスターはかつて大きなブームを引き起こしましたが、現在、店内で最も高価なものは『ジョーカー』のポスターです。(写真‧Taiwan Scene)

色瞇瞇海報龍は台北市大安区の安和路の静かな路地にあります。質素な外観とは裏腹に、店内には数多くのお宝が眠っています。このお店は1996年に設立され、元々は台湾大学付近の台大公館商圈で20年以上営業していました。7年前に移転してきた現在の店舗は、台湾最大のポスターショップであり、品揃えも充実しています。

映画が好きな人たちにとって、映画に関連する印刷物は非常に価値があります。特にポスターはコレクターも多い事から、これらを扱う色瞇瞇海報龍は非常に重要なお店と言えるでしょう。店内には数多くの映画やテレビのポスターがあり、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』や『スター・ウォーズ:アンドール』、マーベル・シネマティック・ユニバースなど比較的新しいものから、『未知との遭遇』や『恋愛適齢期』など往年の作品のポスターもあります。入り口付近にはクラシックなディズニー作品のスチール写真や映画とは関係のない印刷物などもあります。

色瞇瞇海報龍ではポスター以外にも、カンディンスキーやシャガールなどの有名な画家の作品、植物画などのアート作品のほか、地図や90年代の人気歌手、ヴィンテージなポストカードなども販売しています。また、額装やデジタル印刷といったサービスもあるので、コアなファンはポスターをユニークな額縁で飾り付けましょう。販売している商品の多くは輸入品で、欲しいポスターがない場合は取り寄せが可能です。

色瞇瞇海報龍
住所            大安区安和路1段78巷16号
営業時間     12:30~19:00(月曜~金曜)
                    12:30~18:00(土曜)
                 (日曜定休)



佳佳唱片行
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▲佳佳唱片行は台北にある不動の老舗レコードショップで、どんなジャンルの音楽も見つかります。(写真‧佳佳唱片行)

映画が好きな方であれば、サウンドトラックの重要性を理解していることでしょう。多くの有名な映画を思い浮かべるとき、まず頭に浮かぶのはその象徴的なテーマです。また、作品によってはサウンドトラックを巧みに使うことで、そのシーンのムードを盛り上げるなど重要な役割を果たします。

台北で映画のサウンドトラックやCDを探すのであれば、オススメは中華路にある小さな差コードショップ「佳佳唱片店」です。1976年に設立されたこのお店は、台北で最も長く営業しているレコードショップであり、台北駅の近くの漢口街には2号店もあります。中華店は西門町の歩行者天国にある質素なビルの2階と3階にあります。入り口へと続く階段には音楽のポスターが貼られているほか、店内や入り口のそばには黒猫がいるので、これらを目印にしましょう。

佳佳唱片店はデジタル音楽の時代において、CDのように形ある音楽を求める映画ファンたちの聖地となっています。なぜなら、佳佳唱片店では映画関連の作品に焦点を当てていて、サウンドトラックやCD、レコード、DVD、ブルーレイなど魅力的な商品が揃っているからです。ハリウッドの大作が好きな方だけでなく、ヨーロッパのアート映画、日本や韓国の魅惑的な作品、TVドラマやアニメなど様々な好みに適した作品が見つかります。特に注目して欲しいのは、アン・リー監督のディレクターズカット版のDVDや小津安二郎監督の象徴的な作品『東京物語』などです。もし欲しい作品が見つからなければ、親切な店員さんが取り寄せてくれるので相談してみて下さい。

佳佳唱片店はクラシック映画やそのサウンドトラックが好きな方にもオススメです。香港のアクションスリラー映画『無間道』のサウンドトラックや、『ロミオとジュリエット』、『じゃじゃ馬ならし』など作品の種類が豊富です。中華店の商品陳列は、お客さんが自分のペースで商品を探せるよう配慮した配置となっています。ぜひ時間をかけて、お気に入りの作品を見つけましょう。

佳佳中華店
住所           万華区中華路一段110号2F-3F
営業時間    10:30~22:30

佳佳漢口店
住所           中正区漢口街一段3号B1
営業時間    10:00~22:00



台北の2大ロケ地
台北賓館
🎬
『詐團圓』
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▲映画のロケ地の一つである台北賓館のロビー。(写真‧台北双喜映画)

台北の中心地を歩いたことがある人であれば、台北賓館の特徴的なマンサード屋根を見たことがあるはずです。総統府からほど近いこの邸宅は、 123年前に建てられたもので、台北における秘密の庭園や隠れた宮殿と言われています。その理由は、週末に一般公開されることが少なく、なかなか訪れることができないためです。2023年の週末の一般公開のスケジュールは、わずか15回が予定されているのみとなっています。

このような厳しい条件にもかかわらず、葉天倫監督は自身の作品で台北賓館をロケ地としました。今年公開された彼の作品『詐團圓』では、台北賓館の豪華なキッチンやロビー、階段で撮影されたシーンが収められています。本作の序盤は、長きに渡り行方不明だった孫と名乗る青年が、家族に会うために台湾に連れてこられるという、裕福な大家族の生活を描いた作品であるかのように描かれます。しかし、物語が進むにつれ青年の正体が明らかになっていき、当初の印象とはまったくかけ離れた人物であることが明らかになります。

MSW00897 (Copy)▲ロケ地として活用された台北賓館の2階は、夜になるとより壮大な雰囲気を放ちます。(写真‧台北双喜映画)

台湾の映画が好きな方で、台北賓館を訪れるチャンスを得た幸運な方は、ぜひ『詐團圓』のロケ地となった場所をチェックしてみてください。その他にも敷地内には多くの歴史的なスポットがあります。この建物は日本人建築家の福田道吾と野村一郎によって設計され、 1901年に完成。その後、 1911年に再建されて現在の建物となり、 1952年にはここで日華平和条約の調印式が行われました。それ以前には、後の昭和天皇となる裕仁皇太子が台湾を訪れた際に台北賓館に滞在をしています。

7aa08676-5a10-4860-ab85-9cf669da4439 (Copy)▲台北賓館は豪華で精巧な内装であることから、作中における裕福な一家の邸宅として選ばれました。(写真‧台北賓館)


台北賓館
住所           中正区凱達格蘭大道1号
営業時間    台北賓館の公開日の詳細な日程については、公式HPに記載されている公開日ををご参照ください。
見どころ    ロビー、階段


圓山大飯店
🎬『ヤンヤン 夏の想い出』

圓山大飯店は、台北のスカイラインを彩るランドマークであり、MRT剣潭駅近くの丘の上に位置しています。1952年から1973年にかけて建設されたこの建物は、当時の台北にはハイエンドのホテルが不足していたことから、台湾を訪問する外交官を受け入れるために建てられました。前述した台北賓館はどちらかといえば、政府の建物として運営されていたという違いがあります。圓山大飯店は、これまで世界各国から2000人以上の政府高官、外交官、セレブたちをもてなしてきました。著名なゲストには、元アメリカ大統領ドワイト・D・アイゼンハワー、タイのプミポン・アドゥンヤデート国王、韓国の朴正熙大統領、日本の佐藤栄作首相、シンガポールのリー・クアンユー首相などが名を連ねます。

赤い柱が特徴の外観は、台北の至る所から見ることができ、特に基隆河沿いからはよく見えます。その魅力的な立地から、日本統治時代にはここに台湾神宮がありました。

大廳-圓山大飯店提供 (Copy)▲圓山大飯店のロビーは映画『ヤンヤン 夏の想い出』のロケ地として使用されました。(写真‧圓山大飯店)

台湾初の五つ星ホテルである圓山大飯店は、中国式宮殿建築を取り入れた14階建ての建築物です。主に赤い柱、金色の屋根瓦、梁が特徴で、その豪華絢爛な雰囲気は東洋の建築美を象徴しています。ホールには、名画「清明上河図」などの古典的な絵画が飾られているほか、精巧なレリーフを用いた空間表現も魅力の一つです。こうした背景から圓山大飯店は、アン・リー監督の『恋人たちの食卓』を含む数多くの映画のロケ地として選ばれています。特に『ヤンヤン 夏の想い出』という作品のポスターの背景には、赤を基調とした印象的なホールが使用されました。

この『ヤンヤン 夏の想い出』という映画は、楊Xケの代表作で、 2000年の公開時には国際的な評価を受けました。しかし、残念ながら楊Xケは2007年に大腸がんで早世し、この作品が遺作となりました。『ヤンヤン 夏の想い出』は同年のカンヌ映画祭で最優秀監督賞を受賞し、楊Xケは台湾で初めてこの栄誉を受けた映画監督となったのです。彼にとって初となるアメリカでの配給契約を獲得した本作品は、21世紀の傑作の一つと考えられています。

『ヤンヤン 夏の想い出』は、圓山大飯店で行われる盛大な結婚式から物語がスタートします。彩られた梁と赤く鮮やかな柱など、美しく飾られた伝統的な中国建築が、台湾の伝統的な披露宴に向けて準備を進める登場人物たちを引き立てています。物語が進むと、式の最中に新郎とその義理の兄弟の元恋人が現れたり、家族の一人が脳卒中で倒れるといったドラマチックな展開があります。圓山大飯店で撮影されたシーンは、台湾映画を象徴する瞬間と言えるでしょう。

圓山大飯店
住所           中山区中山北路四段1号
見どころ    赤い柱、ホール、芸術的な内装


 

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