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関渡:台北にある自然のオアシス (TAIPEI Quarterly 2023 秋季号 Vol.33)

アンカーポイント

発表日:2023-09-13

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TAIPEI #33 (2023 秋季号)

関渡:台北にある自然のオアシス


  Hsin Ya Teng、張友彥 
編集 下山敬之
写真 Zifilm Studio、張友彥、関渡自然公園、台北市野鳥学会

fs_1▲台北にある関渡平原は、豊かな生態系を持つ大規模な湿地です。

台湾の首都である台北▲台北にある関渡平原は、豊かな生態系を持つ大規模な湿地です。
は高層ビルが林立し、交通は混雑していますが、そんな都市の中に一息つける場所があります。それが自然に近く、現地の文化を感じられる関渡です。

関渡は北投区に位置し、かつては甘豆門と呼ばれていました。観音山と大屯山を背にし、淡水河に面した立地となっています。また、淡水河と基隆河が交わる場所でもあり、湿地生態系が豊富であることから、様々な渡り鳥が羽を休める重要な休息地でもあります。

関渡平原にある台北唯一の大型農地は、台北市にある農地の90%を占めていて、水田の規模は数百ヘクタールにも及びます。ここでは田植えや稲刈り、脱穀、籾摺りなど伝統的な稲作文化が体験できます。関渡でツヤのある稲穂が風に揺れている風景を見ていると、ふと都会にいる事を忘れてしまうでしょう。

その魅力的な自然と環境から、休日の際には多くの家族連れがサイクリングロードを自転車で走る姿が見られます。淡水方面へ向かって走ったり、川岸の景色を楽しんだり、関渡にあるスポットを訪れるなど楽しみ方は様々です。

fs_2▲関渡は淡水河に接した美しい河川環境を持つ場所です。

自転車で巡る生態系の旅

関渡自然公園


関渡自然公園の湿地は、生態系を守る上で非常に重要な場所です。魚類やエビ、カニなど多様な生物の保護をしているほか、渡り鳥が南下する際や越冬する際の休息地となっています。特によく見かけるのはセイタカシギやコガモです。

台北市政府は関渡の湿地を保護する目的で、1996年に関渡自然公園を設置しました。主に生息地の保全と保護研究、そして生態系に関する教育の推進を行っています。事前に予約をする事でガイドツアーに参加し、関渡湿地の歴史や湿地に生息する動植物について学ぶ事ができます。野鳥に興味がある方は、台北市野鳥学会が主催する様々なテーマの講座を受講しましょう。また、毎週末には自然センターの2階で専門家による解説を受けられるほか、実際に野鳥観察の道具を使って、鳥たちが羽ばたく姿を見ることができます。

fs_3▲関渡地区にある淡水河のサイクリングロードは平坦で走りやすいため、親子で出かけるのに最適です。

関渡水岸公園

関渡水岸公園は関渡宮と関渡漁港に隣接していて、その面積は6.3ヘクタールに及びます。散歩道や川沿いのサイクリングロードがあるほか、近年改装された「関渡埠頭」は「台北市藍色水路」という航路の船着き場の1つです。ここから乗船して、他の埠頭へも行けるので、昼夜を問わず台北の美しい河川の風景が楽しめます。

fs_4▲川関渡埠頭からは船に乗って淡水河を往来できます。

この他にも関渡水岸公園では、インスタレーションアートが楽しめるほか、リクライニングチェアが設置されているので、サイクリング後の休息にもピッタリです。日中は湿地帯の多様な生態系を観察し、夜間は遠方に望む八里区の観音山を眺めるなど、1日を通して異なる風景が楽しめます。

fs_5▲関渡の河岸はサイクリング、スポーツ、レジャーに最適な場所です。(写真・張友彥)

関渡宮 歴史と建築美を探訪

関渡宮は長い歴史を持っており、建立からすでに300年以上が経過しています。これは北部にある媽祖廟の中で最古のものです。建物の外を眺めると、関渡漁港にいくつもの漁船が停泊してる様子が見られます。数百年前、漁業を生業とした台北の先祖たちが、海の守り神である媽祖に海上での安全と大漁を祈願した姿が思い浮かぶ事でしょう。

fs_6▲300年以上前に建てられた関渡宮は、地元の信仰の中心地です。

関渡宮の建築美は奥深く、細部まで楽しめます。建物は何度も修繕されていますが、龍柱や花鳥柱、石獅子といった歴史ある石彫が数多く残されています。他にも石彫の壁画から媽祖の物語を学んだり、素材や彫刻技法などから歴史的背景を探ることができます。

fs_7▲関渡宮の正殿には天上聖母と呼ばれる媽祖が祀られています。

この建物には数多くのこだわりが隠されています。例えば、柱と梁には木彫りで民間伝承を描き、窓枠には花鳥をモチーフにするなど、吉兆や祝賀を象徴したデザインとなっています。また、屋根にも奥深い工夫が凝らされています。屋根飾りにはカラフルな龍や鳳凰、鳥や花があしらわれていますが、これらは剪花工芸で作られたものです。剪花工芸とは、細かく切られた陶磁器の欠片を張り合わせて作る技法です。参拝をする際には、ぜひこれらの建築装飾にも注目し、台湾の寺院の建築美を楽しんでみてください。

国立台北芸術大学 アーティストの学び舎

MRT関渡駅から自転車で7分ほど走ると、国立台北芸術大学のキャンパスに到着し、そこから坂を登ると各学部の美しい建物が見えてきます。

fs_8▲国立台北芸術大学は、美しい関渡平原を望む丘の中腹にあります。

台北芸術大学の前身は、1982年に設立された国立芸術学院です。現在は音楽、美術、演劇、ダンス、文化資源、映画とニューメディア、人文学などの7つの学部があります。卒業生たちは台湾の芸術界で幅広く活躍しているので、芸術分野を志す人たちにとって最適な環境と言えるでしょう。

キャンパス内は、芸術に関するリソースが豊富です。展覧スペースや書店などもあり、アーティストたちに数多くの素材や創作の場を提供しています。この他にも関渡美術館が敷地内にあり、国内外のアーティストたちのその時々の作品が鑑賞できます。また、時折開催されるハンドメイド作品のワークショップでは、アーティストの考え方や実際に作品を作る体験を通して、アートは日常の中にあり、遠い存在ではない事が学べます。

関渡 秋の大型イベント

毎年、関渡では環境保護をテーマとしたイベントが数多く開催されています。特に秋に開催される関渡国際自然芸術祭と台北国際バードウォッチングフェアが有名で、自然や芸術、野鳥が好きな人たちが集まります。爽やかな気候の秋は屋外のイベントに最適な季節です。

関渡国際自然芸術祭

関渡国際自然芸術祭は、関渡自然公園で開催されます。毎年開催されている本イベントは、2006年にスタートし、今年で18年目になります。芸術祭では毎年9月から年末にかけて国内外のアーティストを招き、自然の素材を利用し、芸術的なコンセプトと美しさを備えた作品を作り上げます。同時に作品を通じて、環境への関心を高めています。

fs_9▲2022年関渡国際自然芸術祭の李若玫の作品『A Leaf Shelter』(写真・関渡自然公園)

芸術祭は一般の人たちの参加を重視しています。多くの人たちのイベント参加こそが、地元とアーティストへの最大限の支援になるからです。オープニングセレモニー、アーティストによるワークショップ、芸術作品のガイドツアー、団体によるアートパフォーマンス、エコロジーツアー、ファーマーズマーケットなど関渡湿地で開催される芸術イベントを通じて、「人と自然の関係」の美しさを伝えています。

台北国際バードウォッチング博覧会

毎年の冬には、渡り鳥が寒さを避けるために北方から南方へと移動します。関渡湿地は、渡り鳥たちが休息や越冬をするのに最適な場所です。人にとって秋と冬は、渡り鳥の生態を学ぶのに適した季節です。特に野鳥の愛好家たちは台北国際バードウォッチング博覧会が開催される1年に1度の機会を見逃しません。

fs_10▲台北国際バードウォッチング博覧会は毎年秋と冬に開催されます。(写真・台北市野鳥学会)

海外からも野鳥が好きな人が集まる本イベントの今年のテーマは、「宝島固有種」です。多くの鳥類が絶滅の危機に瀕する中、台湾固有の鳥類を広める事で、生活をともにするこれらの貴重な「友人」を守るという意識を喚起します。

また、会場ではゲームや映像の展示、講座やワークショップなどに参加することで、鳥類やバードウォッチング、生態系保護に関する知識を深める事ができます。

fs_11▲関渡自然公園には一般向けに設置された野鳥観察用の双眼鏡があります。

関渡は都市の中にある自然の宝庫で、豊かな生態系と文化資源を秘めています。都心から車で20分ほどと距離も近く、都会の喧騒を離れて一息つく、あるいは現地の風土を深く理解する際に最適のスポットです。特に秋の関渡は住民にとっては最高の環境ですし、観光客が台北の多様性を理解するのにも適しています。ぜひ関渡へ足を運んで、自然と文化に触れてみて下さい。

🎨関渡国際自然芸術祭
🦆台北国際バードウォッチング博覧会

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