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美しく神聖な空間 ― 台北教会ツアー (TAIPEI Quarterly 2023 秋季号 Vol.33)

アンカーポイント

発表日:2023-09-11

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TAIPEI #33 (2023 秋季号)

美しく神聖な空間 ― 台北教会ツアー


  Jenna Lynn Cody 
編集 下山敬之
写真 台北市観光伝播局、済南教会 、大稲埕教会、許育華、張友彥

fs_1▲大稲埕教会の正面の外観は美しい装飾芸術を楽しむことができます。(写真・台北市観光伝播局)

台北の宗教建築と聞いてまず思い浮かぶのはお寺の数々です。台北という街のアイデンティティを語る上で、歴史的に貴重なお寺の数々は欠かせません。しかし、お寺だけでなく都市の中にある美しい教会も同様に多くの建築家や建築愛好家たちを惹きつけています。こうした建築物は、台北の宗教および文化の多様性と変化に富んだ歴史の証なのです。

たとえば、19世紀にジョージ・レスリー・マッケイ博士が創立し、後に移築された台湾基督長老教会大稲埕教会は、様々な物語に彩られた歴史ある建築物です。また、さらに古く18世紀から存在する台湾基督長老教会済南教会や、著名な人物を記念して名付けられた李春生紀念基督長老教会、そして赤レンガではなく白と黒のデザインが印象的な台湾基督長老教会中山教会は、多くの人が訪れる台北のランドマークにもなっています。

ここではこれらの教会の歴史や特徴を紹介していくので、実際に足を運んで台北の歴史を感じてみてはいかがでしょうか。

大稲埕長老教会

台湾を訪れた外国人は数多くいますが、台湾基督長老教会大稲埕教会を創立したジョージ・レスリー・マッケイ博士ほど歴史に影響を与えた人物はいません。マッケイ博士は1872年に宣教師として台湾を訪れ、訪問歯科サービスを提供し、後に教会や病院を創設しました。大稲埕教会は1875年当初、現在の延平北路三段に当たる場所に建てられましたが、1884年の清仏戦争により損壊し、現在の迪化街に一時的に移築されます。その後20世紀に入り、「台湾茶業の父」と呼ばれる李春生氏が現在の甘州街沿いの土地を寄付し、現在の姿となりました。

fs_2▲大稲埕教会の鐘は異なる音色を奏でます。(写真・大稲埕教会)

甘州街にある現在の教会は1915年に完成しましたが、元々の竣工日から考えると台北にある最古の教会です。また、日本時代に台北都市部に建設された基督長老教会の中では、現存する4か所のうちの1つでもあります。残りの3か所は、済南教会、中山教会、そして淡水教会です。

甘州街は静かで緑にあふれた通りなので、ここに赤レンガ造りの教会があることは予想しにくいでしょう。1915年に建立されたままの姿で残っている礼拝堂の背には、新たに建てられたモダンな教会が見下ろすようにそびえ立っています。しかし、歴史的建築物が好きな人たちを魅了しているのはもちろん手前の古い建物です。教会の正面の外観は、日本時代の建築トレンドの影響を強く受けた伝統的な邸宅の佇まい。全体的なスタイルは、日本式のゴシック建築の装飾を取り入れつつ、シンプルさと精密な職人技がバランスよく保たれています。特に中央の牛の目窓の周りにある粘土細工の装飾は、柔らかな曲線を多く用いるアール・ヌーボー様式へのオマージュが見て取れます。その他にも、ゴシック風の尖塔アーチ状の繰形や高窓、コリント式の柱を模したデザインなど、教会建築を示す要素が随所にあふれています。

fs_3▲大稲埕教会は日本時代に建てられた最古の教会です。(写真・大稲埕教会)

もう一つの大きな特徴としては、一般的な教会のように中央に入り口があるのではなく、建物正面の両脇に2つの入り口があることです。これは当時、教会が性別で席を分けており、入り口も男女別々にしていたことに由来しています。加えて、この教会の鐘は、25個の大小異なるもので構成されていて、毎日正午になると7種類の異なる音色が鳴り響きます。 

済南長老教会

立法院の隣にひっそりと建つ18世紀風の教会です。官庁街にあることから付近には教育部や監察院などの建物が並んでいます。こうした意外な場所にも歴史的な建築物があるのは台北ならでは。この教会には、日本時代に存在した台湾煉瓦株式会社の地元産の赤レンガを使用されており、台湾北部で採石された白い石とのコントラストが美しい建物です。 

fs_4▲済南教会は日本時代に作られた赤レンガと台湾で採石された白い石を使って建てられました。(写真・済南教会)

基礎のデザインは18世紀のネオゴシック様式で、イギリスの郊外にあっても違和感がありません。正面の外壁には、印象的なチューダー様式の大きな高窓がはめ込まれています。この窓には1985年以来、透明なガラスが使用されていましたが、現在は創立当時に使用されたステンドグラスに戻り、かつての美しい輝きを見せています。他にも控え壁とゴシック様式の尖塔アーチ窓、千鳥積みのレンガに枠取られた角窓を多用した外観、石造りにすることで高い耐久性と遮光性、通気性を実現した鐘楼の石造りの鎧戸などが特徴です。また、現在台湾では生産されていませんが、台湾で唯一となる魚鱗銅瓦を使用しています。

教会の建つ交差点の名を冠した台湾基督長老教会済南教会は、これまで台風や地震、武力衝突といった危機を乗り越えてきました。そして、台北の歴史のみならず、台湾全体の重要な歴史を目撃してきた場所でもあります。当時、ジェームス・レイドロー・マクスウェル氏、ジョージ・レスリー・マッケイ博士といった西欧からの宣教師が教会を公的な組織にした一方、日本の長老派教会も教会の設立に尽力しました。済南教会が創立される以前の信徒たちは、西門町の西門紅楼にほど近い、現在の漢口街で小さな集会を開く程度だったのです。

fs_5▲厳粛な様子の済南教会内部。(写真・済南教会)

済南教会は1916年に井手薫氏の設計で誕生しました。井手氏は他にも西門の中山堂(旧台北公会堂)、帝冠様式で設計した司法院、そして近代アール・デコ様式で設計した行政院といった作品を残しています。井手氏は、総督府、専売局(現台湾菸酒公司本社)など、台北でも歴史的に重要な建物の設計に関わった建築家.森山松之助氏に師事していました。 

李春生記念基督長老教会

記念碑ではなく記念教会が建てられるほど大きな功績を残した李春生という人物がいます。李春生記念基督長老教会は、大稲埕近郊の一番西、細く静かな貴徳街に佇む、控え目な赤レンガ造りの建物です。ここは李春生氏の孫や子孫によって寄贈されました。特徴的なのは、この教会を正面から見ると玄関が口、2階にある2つの窓が目となり、「顔」のように見えることです。

fs_6▲李春生記念教会は赤レンガ建築と西洋風の装飾が特徴です。(写真・許育華)

李春生氏は「台湾茶業の父」と呼ばれるほど、台湾の歴史に大きな足跡を残した人物です。李氏は、中国福建省.廈門市の貧しい船頭の家に生まれました。中国茶の会社で働いていたところ、経営者としての能力を英国商人ジョン.ドッド氏に見いだされ、後に茶葉を台湾で一番価値のある輸出品に育て上げることに成功しました。

李氏は敬虔なキリスト教徒でもあり、台北に複数の長老派教会を建設するために資金と土地を寄付しました。李春生記念教会は1935年に建設され、当初は台湾初の郵便局である大稲埕郵便電信局として使用されていました。その建物は現在も使用されています。スタイリッシュな2階建ての礼拝堂は、二重アーチの玄関、繰形の装飾や牛の目窓など、日本時代のネオバロック様式やその他の西欧の影響を思わせます。また、入り口の上部に掲げられた教会名を記す中華式の看板も目を引きます。 

中山長老教会

台北にある教会のイメージといえば、静かな通りに面した赤レンガの礼拝堂ですが、その予想を裏切るのが台湾基督長老教会中山教会です。この教会は交通量の多い林森北路と長安東路の交差点に面しています。加えて、外観にはネオゴシック様式を採用し、光の加減によって黒と白のコントラストが美しく見えることから、ウェディングフォトを撮影する際の人気スポットになっています。

fs_7▲中山教会の白と黒の外観は、台北の他の教会とは大きく異なります。(写真張友彥)

日本人司祭の大橋麟太郎氏により1937年に建てられた中山教会は、元々は長老派教会ではなく聖公会に属する教会でした。しかし、日本による台湾統治が終わった後、当時は現地に聖公会教区が無かったことから、長老派が引き継ぐことになりました。 

fs_8▲中山教会はイギリス式の教会を模して作られました。(写真・張友彥)

イギリスの教会を模した外観とされながらも、前述の濟南教会とは大きく印象が異なり、黒い自然石と白い壁の対比が美しく、控え壁には千鳥積みを用いた装飾が施されています。教会内部は、ハンマービーム屋根から吊るされた乳白色のガラス製ペンダントライトが室内を照らし、時代を超えた優雅さを醸し出しています。

教会の建物は上から見ると十字の形をしていて、一方には鐘楼があり、両端にはイエス・キリストが描かれたステンドグラスで飾り付けた牛の目窓があります。ステンドグラスには、ゲッセマネの園で祈る姿と羊飼いの姿という、いずれもキリスト教徒にとって象徴的なデザインが描かれています。他にも古い木製の扉の上には山型のステンドグラスと、ゴシック様式の尖塔アーチ窓がこの小さな教会の壮麗さを引き立てています。

台北の長老派教会では、中国語および台湾語以外に、英語、日本語、客家語での礼拝も行われています。また、教会内での写真撮影には事前の許可が必要です。通常の礼拝時間以外の見学も可能ですが、前もって電話で確認しておくことをお勧めします。

 
2023耶誕愛無限

台北の教会を語る上で、「耶誕愛無限」というイベントの重要性は無視できません。台北市にとって特別な時期であるクリスマスには毎年、台北市政府や色々なグループと協力し、一連のクリスマスイベントを開催しています。  
fs_9今年で3年目を迎えるこのイベントでは、クリスマスツリーのイルミネーションやキャロリング、商店街のプロモーションや抽選会など、さまざまな催しが行われます。開催期間は2023年12月初旬から2024年3月初旬まで、場所は公館商圏、永康商圏、大安森林公園出口11番、新生南路一段から三段付近で開催予定です。インスタ映えする眩いイルミネーションや、魅力たっぷりの商店街プロモーションなどが予定されています。一年の締めくくりに、心温まる台北のクリスマスの雰囲気を体験してみましょう。
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