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活気に満ちた台湾の屋内市場:歴史、文化、美味しさのあふれる旅 (TAIPEI Quarterly 2023 冬季号 Vol.34)

アンカーポイント

発表日:2023-12-11

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TAIPEI #34 (2023 冬季号)

活気に満ちた台湾の屋内市場:
歴史、文化、美味しさのあふれる旅


  Jonathan Kaplan
編集 下山敬之
写真 Jonathan Kaplan、士東市場、Dudva、忠泰建築文化芸術基金会

1_fs▲野菜市場では、果物が多種多様で新鮮です。(写真・Dudva)

市場は地元文化の発展を表すシンボルであり、その街独自の本質を映し出す鏡とも言えます。また、地域の生活に不可欠であり、コミュニティの精神や伝統が全て詰まった場所でもあります。

台湾の市場では、様々な野菜、生きた鶏、魚介類など新鮮な食品のほか、飲食店やファッションブティックなどがずらりと並んでいます。一般的に伝統市場のうち「朝市」は早朝に、そして「夜市」は午後遅くから会社が終わるくらいの時間帯まで営業し、現地の人たちは朝市で鶏や魚介類を買い、豚、果物、野菜は夜市で買います。

都市をしばらく観察していると、それぞれがもつ独自のリズムが見えてきます。台北の中で特におすすめのスポットは伝統的な屋内市場です。

人口が密集する都心部の屋内市場は、通常朝7時から夜7時まで営業をしています。市場の中には食料品を販売するブース、農家の直売店、飲食店、地元のクリエイターによるハンドメイドの工芸、ファッションやアクセサリーのお店が並び、珍しい品や精巧な商品を眺める人たち、日常の買い物を楽しむ人たちで溢れる、街のエネルギーが凝縮した場所です。

台湾ならではの文化に思いきり飛び込んでみたいという方は、ぜひ屋内市場でその一歩を踏み出しみましょう。

南門市場:伝統市場を近代的にアップデート

MRT中正紀念堂駅のすぐそばに輝く、近代都市から抜け出てきたような新しい建物。これこそが100年以上続く伝統文化の発祥地、南門市場です。 

ここは日本時代の1907年に設立されて以来、およそ120年の間、地元の人たちに食品や惣菜、料理、お茶、食材、様々な特産品などを提供してきました。
 
南門市場のもともとの建物は、お客さんとお店を営む人たち双方の安全性と利便性を考慮し、2016年から改修工事が始まりました。

工事期間中の2019年、各店舗は近隣に設置された仮の施設へ移動。その後、コロナ禍の影響を受けつつも、2023年10月、南門市場は元の場所で営業を再開しました。

2_fs▲南門市場は元の場所に真新しい建物で再オープンしました。(写真・Jonathan Kaplan)

1階は食品スペース専用の売り場で、100軒を超えるお店が並んでいます。中には乾物を販売するお店もあり、各種ドライフルーツ、ナッツ類、穀物、大量の干しシイタケ、乾燥ホタテや豚バラの塩漬けなどを提供しています。ドライフルーツの中でも特におすすめなのがグアバです。角を曲がった先にはできたての惣菜を販売するエリアがあり、非常に早いペースで売れていきます。長いピンク色の看板が特徴の億長御坊では、エビとマメの炒め物、三杯鶏、ガチョウ手羽煮込み、筍の煮物などが並んでいます。その他にも、上海式の点心が有名な合興糕糰、甘辛いポークジャーキーで知られる金龍肉乾、ちまきが美味しい南園などもおすすめのお店です。

3_fs▲南門市場の1階には、新鮮な食品や惣菜、雑貨を扱うお店が並んでいます。(写真・Jonathan Kaplan)

40年以上に渡り売り場を構えている女性に、以前の南門市場との違いを尋ねると、「以前の市場はとても伝統的というか、古めかしかったですね。空調もなく、狭い印象でした」と話してくれました。新しい市場は大きく改修が行われ、空調設備はもちろん、広々として歩きやすくなりました。

2階にはジャケットやジーンズ、上等な木造りの櫛から翡翠まで、ありとあらゆるものが並んでいます。天福というお店では、緻密で美しいデザインの陶器のティーカップが陳列されています。店主の王氏によれば、これらの美しい商品の多くは日本の九谷焼だそうです。このように南門市場の2階を歩くと、魅力的な宝物に出会えるでしょう。
 
2階のフードコートエリアには合歓刀削麺というお店があります。メニューには8つのオプションがあり、それぞれ英訳もついています。どれを選んでも後悔することはありませんが、看板メニューのトマト牛肉麺は、とろけるような牛肉と豊かな味わいが特徴の一品です。台北の人々にも人気が高く、何度もリピートしたくなる味わいです。

4_fs▲市場の中はドライフルーツ、ナッツ、キノコの香りが広がっています。(写真・Jonathan Kaplan)

日常的な食品や小物、装飾品、さらには地元だけでなく輸入品など様々な名品が手に入る南門市場で、台湾の伝統的な市場の魅力を体感してみてください。

士東市場:北部の隠れたグルメ天国

陽明山のふもとに切り拓かれた台北の天母地区は、中心街の喧騒から離れた住宅街です。その近郊にあり、訪れた人の好奇心と食欲を満たす隠れ家のような場所が士東市場です。
 
ここは屋内市場としては比較的新しい1992年に開場しました。清潔で明るくレイアウトが整っていることから、すぐに地元住民が集まる場所となりました。南門市場と同じく、1階は主に生鮮食品や高級食品があり、2階は中央にあるファッション、アンティーク、ハンドメイドのカバン類、宝石類が並ぶショッピングエリアと、外側にあるレストランなどが並ぶグルメエリアに分かれます。この市場の最大の魅力はグルメエリアで、小さなカフェや韓国料理店、かき氷屋、伝統的な台湾料理店には一日中途切れることなく人々が訪れます。 

6_fs▲士東市場にある阿吉市の立ち食い刺身レストランでは、ユニークな食事体験を提供しています。(写真・Jonathan Kaplan)

生鮮食品や高級食品のお店が100軒ほど立ち並ぶ1階には、立食い寿司の阿吉師があり、新鮮な寿司や刺身を楽しむことができます。士東市場の多くのお店は1992年の市場開場を機に近隣から移ってきました。中でも有機野菜を販売する小林蔬菜は1971年開店と歴史があります。

5_fs▲近所に住む人たちは士東市場で新鮮な食材を求めます。(写真・士東市場)

市場内を散策して、何か気になったものがあれば、気軽に店員に話しかけてみましょう。特にお店番号57番の客家莊大玉園では、元IBMのエンジニアであり、退職後は台湾・南投縣にある実家の農園の作物などを販売しているVictor氏が快く挨拶をしてくれます。

店内では新鮮な鶏卵、干し龍眼、瓶詰めにした茶油や蜂蜜などを扱っています。英語が話せるVictor氏は、「私は農園で蜂蜜の収穫を手伝っています」と語ります。実家では龍眼(リュウガン)の木々にある蜂の巣を管理し、ユニークな龍眼蜂蜜を作っているそうです。お店には2023年度の品評会で賞を獲得した蜂蜜が飾られています。

新富市場:歴史に新たな息吹を

台北最古の地区であり、台北古来の精神に深い繋がりを持つ万華区の中心に位置するのは新富市場です。華やかな建築と絶え間なく響く美しい読経の声が特徴の龍山寺のすぐそばにあります。龍山寺を参拝して落ち着いた時間を過ごしたあとは、賑やかなこの市場に足を運んでみましょう。

康定路にある市場の入り口には、新富市場と東三水街市場という2つの名前が記されています。まず入ってすぐの屋根のついたアーケードが東三水街市場です。地元の名産が数多く販売されており、豆腐や野菜、燻製、塩漬け、新鮮な肉類、多種多様な衣類やアクセサリーが、細長い通りに所狭しと並んでいます。 

東三水街市場を中ほどまで進むと、その右側に新富町文化市場への入り口があります。ここはかつて新富市場と呼ばれていた場所で、東三水街市場とは全く異なる市場なので、その姿に驚くかもしれません。 

7_fs▲上から見ると、新富市場と東三水街市場は垂直に並んでいることがわかります。(写真・忠泰建築文化芸術基金会)

新富市場は日本時代の1935年に設立された市場で、馬蹄形にアール・デコ仕様が取り入れられた建物内は、当時この地域に居住していた日本人で賑わっていました。2000年代に入り、当時の市場文化を展示する文化博物館として再び活気を取り戻し、現在はそのU字型の造りから「U-mkt」と名づけられ、地域の再活性化を図る中心地となっています。元の新富市場時代から続くお店は、現在は東三水街市場へ移っています。「3つの市場」が交わるこのエリアは旧市街のルーツを感じられる貴重なスポットです。

8_fs▲観光客は、U-mktの新富市場の歴史に関する展示を鑑賞しています。(写真・忠泰建築文化芸術基金会)

人々の日常を体感

台湾文化への理解を深めたい旅行者の方々にとって、台湾の屋内市場は見逃せない場所です。台湾人にとってはともに時代を生きた象徴であり、日常生活を支える重要な場所です。すべての台湾人が親や祖父母と一緒にこれらの市場を訪れ、食料品や日用品を買った経験があります。店員が商品を売り、お客がそれを買う、そうして生まれる賑わいは、街の生活感を織りなす鮮やかな景色の一つと言えるでしょう。
 
南門市場
🚩中正区羅斯福路一段8号
🕑火~日
07:00~19:00

士東市場
🚩士林区士東路100号
🕑火~日
07:00~18:30(1階) 
07:30~21:00(2階)

新富市場
🚩万華区三水街70号
🕑火~日
08:00~15:00 
10:00~18:00(U-mkt)

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